Semua Bab なぜか人気俳優に飼われています〜消えるはずだった私がまさか溺愛されているなんて〜: Bab 61 - Bab 70

　侑さんと結ばれてからすぐ、映画の撮影のために二週間地方の宿に泊まり込んだ。　そのせいで、侑さんに会えなくて辛かった。　何で俺は俳優なんかしてるんだ。　今すぐ辞めて、侑さんの待つ家に帰りたい。　侑さんのために掃除や洗濯をしたい。　侑さんのご飯を作りたい。そして一緒に食べたい。　時間が経つにつれ、侑さん不足に陥ってきた。　早く帰りたい。そして侑さんを抱き締めたい。　侑さんを抱きたい。　もうずっと。永遠に。　そんな訳で俺は、毎日のように侑さんに電話とメールの攻撃をした。　侑さんの自殺願望が消えたと分かった瞬間から、侑さんにスマホを返した。　…ちなみに、侑さんの害になる奴らの番号や連絡先は消した。　優さんはそれでいいと言って笑った。　その笑顔は、やっぱりとても綺麗だった。　『侑さん、今何してる？』　『侑さん、ご飯食べた？』　『侑さん、もう寝た？』　自分でも何て迷惑な男なんだろうって呆れる。　だけど。それでも。　会えない時でもずっと、侑さんと繋がっていたい。　『お疲れ様でしたー』　『昴生、いや〜今回の演技も良かったよ！　この調子でこれからも頼むな！』　『綿貫さん、これから皆で打ち上げするんですけど、どうですか？』　無事に地方での撮影を終える。　終わったと同時に素早く荷物をまとめた俺は、監督や俳優仲間からの誘いを笑顔で断る。　「すみません。大事な用があるからお先に失礼しますね。」　　「そ、そっかー…大事な用なら仕方ないな…ははは。」　綿貫昴生の演技力はこんな所でも健在だ。　　佐久間さんに車で自宅に送って貰う間、侑さんに電話をかける。　だけど……何回鳴らしても侑さんは電話に出ない。　「侑か？&hell

　死⃞ぬ⃞ほ⃞ど⃞誰⃞か⃞を⃞愛⃞す⃞る⃞の⃞が⃞怖⃞い⃞ 　死ぬほど誰かを愛するのが怖い。　俺にとって侑さんは、それほど大きな存在だったんだ。　＊　「あ……頭痛い……」　飲みすぎた俺はどこかのホテルにいた。　酷い頭痛。狭くて硬いベッドから体を起こした。 　家に帰りたくないと言った俺を、俳優仲間達が仕方なく、このホテルに運んできてくれたようだ。 　机の上に財布とメモが丁寧に置いてある。 　ヘッドボードにある時計は、明け方を示していた。　冷蔵庫に入っていたペットボトルの水を、ごくりと飲み込む。 　お酒臭いし、まだ胃もたれしてる。 　昨日から酒ばかり飲んで、ずっと何も食べてなかった。 　上着に入っていたスマホを、ようやく見る気になった。　侑さんからの不在着信は……5件。　侑さんにしては多い方だ。連絡もせずに家に帰らないなんて、初めてだったから。　《昴生、どうしたの？》　《何かあったの？》　《電話に出て。何も連絡がないと心配する》　覚悟して、侑さんからのメールを開いた。　……嫌な記憶が蘇ってきた。　あの後どうなったのか、この文面からは何も分からない。　もしかして家に帰った瞬間に…… 　侑さんに別れを告げられる？　そんなの、嫌だ。　力が抜け、ベッドの端に座る。　「嫌だ。侑さん。どうして……？」　何であの男を突き放さなかったの？　何で家の中に入れたの？　またあの男と付き合うの……？　俺を、捨てるの？　怖い。本当に。　やっと手に入れた侑さんから、別れを告げられるのが本当に怖いんだ。　侑さんを愛してる。死ぬほど愛してる。　侑さんが小野寺聖を死ぬほど愛していたように、俺も侑さんを死ぬほど愛してる。　長い片想いを、卑怯なやり方で手に入れた罰なの

　俺⃞か⃞ら⃞は⃞捨⃞て⃞ら⃞れ⃞な⃞い⃞か⃞ら⃞、⃞捨⃞て⃞る⃞な⃞ら⃞侑⃞さ⃞ん⃞か⃞ら⃞捨⃞て⃞て⃞よ⃞。⃞ 　あの日も、俺を引き止める侑さんから逃げた。　国民的人気俳優と言われていても、好きな人を前にすると無様だった。　それと自宅マンションの付近で、俺や侑さんにひつこく張り付いているマスコミ関係者がいるのは分かっていた。　背が高くて、いつも不自然に視線を逸らす。　そいつは狡猾な目をして、いつも俺や侑さんの近辺を探っていた。　だったら今が、ちょうどいいタイミングなのでは？　結局侑さんも自分の自宅マンションに戻り、俺は俺で侑さんに一切の連絡も、会いに行く事もしなかったから。　週刊誌やネットニュースで（綿貫昴生と常盤侑ついに破局か？）というのまで出ていた。　これなら少なくとも、世の中の汚い連中から侑さんを守ることはできるから。　でもそのやけに胡散臭い男はマンションの外に出た俺に接近してきて、ついに耳打ちまでしてきた。　「綿貫さん。———あなたが常盤さんのストーカーをしていた、という噂があるんですよ。　面白いとは思いませんか？」　俺を脅すつもりか？　あいにく今は、お前みたいな奴を健気に相手してる余裕がないんだ。　「————それは脅しですか？　もしそうだとしても……そんな証拠がどこにあるって言うんですか？」　吐き捨てるように言ってやると、薄っすらと顎髭を生やした男は一笑した。　「証拠がないとでも、思ってるんですか？」　不気味に肩を震わしながら去って行く男に、俺は一抹の不安を覚えた。　自分の事はどうだっていい。　だけど侑さんを巻き込むことだけはしたくない。　侑さんを巻き込むことだけは。 

　数日後、マスコミ各社を招いた会見は都内の某ホテルで行われた。 　八重樫や事務所の重役と一緒に、大勢の関係者の前に座らされる。 　やたらカメラのフラッシュが眩しかった。　《綿貫昴生さん、同じ事務所の先輩、常盤侑さんをずっとストーカーしていた！？》　《国民的俳優の隠された素顔！》　《映画のスタッフは普段の綿貫昴生さんについてこう語る》　あれから連日連夜、ニュースやネットで次々と俺に関する、都合よく作られた嘘や勝手な憶測、根も歯もない噂が出回るようになった。 　公式SNSでは誹謗中傷がひどくて、事務所が一時的にアカウントを停止している。　あまり接点のないスタッフや、仲の良くない俳優達からの密告が絶えない。　勝手なことを言って、ありもしない事実を面白おかしくマスコミに流す。 　そんな奴らはいくらでもいた。 　皆何かの憂さを晴らすように、この騒動に便乗して嘘をばら撒く。　本当に世の中は汚い人間ばっかりだ。　ああ……でも俺も同類だったかな。　侑さんを守るためなら、いつだって何だってしてきたんだから。　あれ以来、侑さんとの一切の連絡を絶っている。事務所にもそれは伝えてある。 　侑さんには一切何も教えるなと。　きっとこんな事がニュースになって嫌な思いをしているだろうし、せっかく元彼とよりを戻したのに迷惑がっているかも知れない。　きっと貴方は、優しいから同情で俺と寝てくれたんでしょ？　侑さんは綺麗な人だから。　侑さんだけはいつまでも綺麗だから。　……でも。本当にそうだろうか？　侑さんだって本当は、俺を裏切って捨てるような…………　駄目だ。違う。そうじゃない。　本当はそうじゃないって、心の何処かで信じてるんだろ？　だからこうして最後は、侑さんを守るって決めたじゃないか。　やがて無限にも思えるマスコミ関係者達との、質疑応答が始まる。　『綿貫さん！ 　俳優の常盤さんへのストーカー疑惑についてなんですけど、あれは全て事実なんですか？』　いきなり核心をつく記者がいて、思わず笑ってしまいそうになった。　だけどいい。これで時間を無駄にする事なく全て終わらせられる。　「そうですね———あれは………」　その時、たくさんのカメラ機材がある会見場の後ろが騒めいた。　その騒ぎの中から人混みを掻き分け、現れたのは————　「————侑……さ

　よく考えたらその番号は、過去に嫌というほど頭の中で記憶していた番号だった。　心臓が、壊れたような音を出す。　もうすっかり忘れたと思っていた。声。　もうすっかり記憶から消したはずの————　「………聖………？」　そう言えば私に害を与えるような人間は連絡先から消したって昴生は言っていた。だから番号が消えていたのに。　聖、あなたも私の連絡先を……　私を記憶から消したはずでしょ？　「侑……話があるんだ。 　まだあのマンションに住んでる？ 　もしできるなら、そこに来て欲しいんだ。 　待ってる……」　「え、ちょ……聖？」　一方的に切られた電話。その画面をしばらく眺める。　私の元々住んでるマンションに来て欲しい？　一体なぜ。ううん……今さら、なぜ？　今の私は間違いなく昴生が好きだ。 　だから彼を裏切るような真似だけはしたくない。 　だけどあの内容だと、聖はあの場所でずっと待っている気がする。　私は昴生に持たされたキーとお財布、スマホを手にしてマンションを出た。　とにかく聖に会おう。　会って……それから、もう私は何も話すことはないんだとはっきり言うんだ。　もう私は聖がいなくても大丈夫だからと。　だから彼女と、どうかお幸せにと。　なのに。　久しぶりに見た聖は、いつもの聖とはかけ離れていた。 　何だか痩せていて顔色もあまり良くなかった。　幸せに……なったんじゃなかったの？　私みたいに、あなたにすぐ会えないような女ではなく、すぐ近くにいてくれて、家庭的な人を選んだのではなかったの？　「侑。俺、今から凄く馬鹿なこと言うな…」　玄関前だから、同じマンションの住人が何事かと見ていく。 　最近やっとマスコミが落ち着いてきたばかりなのに。 　なのに聖はそんなこと全く考えてもない様子で、前髪をくしゃっと握って言った。　どうしていいか分からない。　かと言って、こんな状態の聖を冷たく突き放すことも……だけど。 　伝えるべき事はちゃんと伝えると決めた。　「聖……あの。 　私達、別れたんだよね？」　「……ああ。そうだ。」　「だから、もう私達が話すことはないはずでしょ？」　「侑どうして—————— 　どうしてそんな風に俺を突き放すの？ 　もう俺のこと、嫌いになった？」　「……そんな話しじゃないわ…… 　だって聖。 　私