Lahat ng Kabanata ng なぜか人気俳優に飼われています〜消えるはずだった私がまさか溺愛されているなんて〜: Kabanata 21 - Kabanata 30

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人気俳優に飼われる女優/不思議な関係性

 その後、別人のように変装して私は昴生と自分のマンションに荷物を取りに行った。 久しぶりの我が家はほとんど物がなくて、今までこんな所に本当に人間が住んでいたんだろうかと目を疑ってしまう。 本当に驚くほど何もない。 思えば無意識に死にたいと考え始めてからずっと、物欲が湧かなかった。  冷蔵庫には水しか入ってなかった。  あるとすればお酒や乾麺、缶詰とかだけ。  万が一の災害時の備えだけ。    クローゼットには数ヶ月ほど前に買った何着かの服が無造作に掛けられている。 メイク道具も靴もバッグも……一体いつ購入したものか分からない。 物がないリビングには、人が生活していたような痕跡がなかった。  カウチの上に置いてあるドラマの台本だけが人が生きていた事の証明みたいだった。  それでも仕事になるとメイクはしたし、ファッションもそれなりに整えてはいたと思う。 かろうじて私の意識を繋ぎ止めていたのは、やはり仕事だったのだろう。 後ろから着いてきて、昴生はテレビ台の上のフォトフレームに触れる。 「寂しい家。  ……侑さんがここに1人で居たと思うと。」 「思うと……何?」 聞き返すが、それ以上昴生は何も言わなかった。  かと思えばそのまま、自然とダイニングキッチンにある冷蔵庫に手をかける。 「本当に何もない。……侑さん、今まで一体何食べてたの?  だからそんなに痩せてるんですよ。」    なぜか悔しそうに、何もない冷蔵庫の中を眺めていた。    「……あはは。本当に何を食べてたんだろうね。」 「馬鹿だなあ。そこ、笑うとこじゃないでしょ。」 冗談じみた顔して苦笑いすると、また少し叱られた。 この状況を見て心配……してくれてるんだ。 これまで昴生の意味不明だった言葉の意味が、少しずつ分かるようになってきた。    彼の棘のある、言葉に行動。  全部悪口みたいに聞こえるけど、実際はそうじゃないみたい。  一つ一つの言葉の中にばら撒かれた、深い情のようなものを感じる。 仕事が終わってからわざわざ、こんな夜遅くに私のマンションに着いてきてくれるなんて。 彼の意図は明確で、きっとそれに従ってるだけなのに。  本当に不思議な人だ。   「必要な物だけ持って帰りましょう?  俺達
last updateHuling Na-update : 2025-06-28
Magbasa pa

人気俳優に飼われる女優/不思議な関係性

 それからの日々を一体どう表現すればいいのだろう。  昴生は相変わらず人気俳優で、多忙な合間を縫って私の世話を焼いていた。  食事は米本さんが来ない時は昴生が準備し、なぜか私の服の洗濯に部屋の掃除まで全てやっている。  下着だけは自分で干すと言うと嫌だと取り上げられたりして、もう散々だ。 「あ、これが侑さんの下着なんですね。  あはは。想像以上にエロいなぁ。なので俺が干しますね。」 「わ、綿貫くん……!!」 乾燥機能という便利なものを使わず、そんな良く分からない昴生との攻防が連日続いた。  結局私は何もできず、いよいよ駄目人間になっていってる。 相変わらず仕事はないし、家でただひたすらにゴロゴロしているからだ。 普通ならそんな女は嫌でしょう。普通の男なら。 なのに彼は……ただ家でゴロゴロとダラける私を見ては嬉しそうに笑う。 「いいですね。  もっと、もっとダラダラして生きてくださいよ。  もっと駄目人間になって下さい。  そして沢山食べてもっと太って下さいね。  太った侑さんを抱けるの…楽しみにしてるんで。」    「もう……綿貫くんの考えてる事はやっぱり良く分からない。」 「分からなくてもいいですよ。  俺の野望は少しずつ叶ってきてるんで。」 野望とは……?    また勝ち誇ったように彼は笑う。  少しは分かってきたつもりだが、やっぱりこの綿貫昴生という人物は今だに謎だ。 物凄く意地悪にも思えるし、実は何かの罠なのかと疑う事もある。  太らせて、駄目人間になった落ち目女優の私を、どこかに売るとか?  だとしても、具体的にはその企みすら思いつかないけれど。    ただ最近は無意識に笑えるようになってきた自分がいる。 気がつくと私は、彼の隣りで笑えていた。 そう。あれほど死を願っていた人間が。笑う事ができていた。 人気俳優に飼育されてるという、不可解な生活の中で。 それでも彼は最大の目的である、私を[抱く]という行為を一切行わなかった。
last updateHuling Na-update : 2025-06-28
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人気俳優に飼われる女優/初めてのキス

 とにかく昴生は、仕事以外の時間はほとんど私と過ごしているようだった。 「本当に便利な時代ですよね。  欲しいと思えばネットで何でも揃うし、買い物にも行かなくていい。  食べたいと思うものもデリバリーで揃うし、見たいものも動画で見れちゃいますし。  お陰で仕事以外はこうやって侑さんと時間を共有できるわけですから。最高です。」  「…そんな貴重な時間を何も私と過ごさなくても。  ただでさえ綿貫くんは多忙でしょ?」 「そんな貴重な時間だから侑さんと過ごしたいんです。」 「全く……  どうして綿貫くんはこう私に優しくするの?  私…あなたに何かした?」 「どうして?うーん。  それは侑さんが自分の胸に手を当てて、良く考えれば分かる事ですよ。」 一生懸命考えてみてください、と昴生は言う。  どうやら正解は教えてくれないらしい。  良く分からないから聞いてるし、戸惑っているというのに。  ただ私がその答えを探し続ける、それすらも昴生は楽しんでいるようだった。  ピロリ菌などの薬を服用して1週間もすると、潰瘍だった胃の調子も良くなってきた。  4週間後にはまた再診して、除菌できたか確認すれば治療は終わる。  治療が済んだら私は……?  彼はいつまで私を、ここに引き留めるつもりなんだろう。 * 昴生はその日もドラマの撮影にバラエティ番組のゲスト出演に、とにかく大忙し。  遅くに帰宅し、少し眠そうな目を擦る。  それでも私を見れば嬉しそうな顔をする。  「侑さん………次のステップに移りましょうか。」 いよいよ何か見返りを求められるのかと思わず身構えてみたけれど。 「次のステップ……?」 「はい。侑さん。  侑さんの………その綺麗な髪を洗わせて下さい。」 「……………え?」 正直、彼には驚かされる事しかされてない。
last updateHuling Na-update : 2025-06-29
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人気俳優に飼われる女優/初めてのキス

 浴槽には湯気が立ち込め、蛇口からはわずかに水が滴り落ちた。  彼のマンションのお風呂は至って普通だったが、今はそうでもない。  今夜は彼特製のアロマバス仕様らしいから。 使っているのはゼラニウムのエッセンシャルオイルだという。  自律神経やホルモン分泌のバランスを整え、精神的なストレスから現れる不調や女性特有の症状を和らげてくれる効果があるんですよ、彼はそう得意気に言う。  確かに安らげる匂いに、つい気が抜けそうにもなるけれど。 今の私は浴槽にバスタオルを巻いて浸かっている。  そこに普段着のままで入ってきて、膝を曲げた昴生が、なぜか私の髪を洗っている。 「……本当に綺麗。侑さんの髪。  ずっと触ってみたかったんですよね。」 シャツとズボンを捲り上げ、昴生はシャンプーを付けて、私の髪の中間あたりから毛先までをユルユルと揉み込むように洗っている。  …少し楽しそうだ。 これは一体どういった状況だろう。 「……私は人気俳優の綿貫くんに、一体何をさせているんだろう……?」 「あはは。深く考えないで下さい。  ただ人気俳優の俺が、侑さんの髪を洗ってるだけですよ。」 「(やっぱり自分で言っちゃうんだ)……これは……何というか。」 「何とも言わないで下さい。これは単に俺がやりたかった事の一つに過ぎないんで。」 そう言われたら何も言えない。 「アロマバス……よくやるの?」 「まさか。」 「でも…詳しいよね?」 「はい。侑さんのために勉強しました。」 「私のため……?」 「アロマバスは嫌いですか?」 「ううん…嫌いじゃないよ。最近は滅多にやらなかったけど、以前はむしろ好きだった。」 「でしょうね。以前記事に書いてありましたから。」 記事……一体なんの。 「侑さん、痒いとこはないですか?」 「いよいよ、美容師みたいだね。綿貫くん。それか……親を介護している孝行息子のような?」 「俺は俳優で、そして間違っても侑さんの息子じゃない事だけは確かですよ。」 正論だ。掴みどころのない彼は、時々真面目にもなる。 私は長い間、ずっとロングヘアを維持してきた。  その最大の理由が別れた聖が好きだったからだ。
last updateHuling Na-update : 2025-06-29
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人気俳優に飼われる女優/初めてのキス

 こうして彼の前で浴槽に浸かり(バスタオル巻いてるけど)丁寧に髪を洗って貰っているという不思議。  それに抵抗する気もなくなった私も大概だけれど、これでは私が飼われてるというより、昴生に奉仕させてると表現した方が早い。 どちらが飼い犬なのか分からなくなる。 「あ……気持ちがいい……」 「あー……駄目じゃないですか、侑さん。  そんな声出したら。  あまりに無防備すぎて、俺が我慢できなくなるじゃないですか。」 心地の良いゼラニウムの香り。  隣では彼が私の髪を洗ってくれている。  この上ない極上のリラックスタイムについウトウト眠気を催してしまう。 「…………え?」 「今のは侑さんが悪いので………」 さっきまで持っていた髪を昴生は、するりと手から解く。  浴槽の縁に乗り上げるように身を突き出し、私の顎を真上に引いた。  そうして静かに整った顔面が近づく。 「侑さん、そろそろ一つだけ。  俺に対価を下さい。」 「……対価……?」 「そ。ご褒美。」 「それって……?」 「はい。今すぐ侑さんにキスしたいんです。  なのではい、か、いいえ、で答えて下さい。」 「それを断る権利が…私にはあるの?」 「ないですね。ご褒美なので。」 何て事だ。じゃあ断れない。選択肢がないのに何で聞いたんだろう。 それにご褒美って何?  彼のセリフの一つ一つはあまりに不可解だ。 キスを……最後にしたのはいつだろう。 伏せ目がちな美しい男の顔が、近距離でキスを強請っている。 キスは好きな人と…なんて思っていたのに。  いや、でも…私は昴生の事は嫌いじゃない。 「……じゃあ、はい、で………っん、」 返事が終わる頃には既に、綺麗な顔で視界が塞がれ、唇もまた塞がれていた。  久しぶりに触れる誰かの唇の感覚。  温かくて柔らかい。  そして……優しい。 ……嫌《いや》じゃない。 「は……っ、」 「ん………っ。」 横に身体をずらされて、顔は上を向かされているので思いの外苦しい。  それでも夢中になれるほど……キスの心地よさに心酔してしまう。  彼の口からも、甘い溜息が溢れていた。 そうしてようやくキスから解放されて、夢心地のような気分で昴生を見ると。  彼も余裕のなさそうな目で、こちらに首を傾け
last updateHuling Na-update : 2025-06-29
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落ち目女優の憂鬱/名前だけの家族

私⃞に⃞家⃞族⃞は⃞い⃞な⃞い⃞。⃞愛⃞し⃞て⃞く⃞れ⃞る⃞家⃞族⃞は⃞。⃞ 物心つく頃、既に私の両親の間に愛は存在していなかった。 シンガーソングライターの白石しらいし壮司そうじと舞台女優の堤つつみ光里ひかりは、互いに売れない時期に出会い、恋に落ちた。 それから間もなくして母である光里は私を出産したが、いつまでも互いの夢を捨てきれずにいた二人の幸せな日々は、長く続かなかった。 母は結婚と出産によって自分の夢が絶たれた事を父のせいにするようになった。 「あなたのせいよ……!  あなたのせいで私の夢が途切れてしまった!」 そしてそれは父も同じで。 「それを言うなら俺だってそうだ……!  君と侑の為に朝も夜もなく働いて…  シンガーソングライターとして、活動する時間が無さすぎる!」 狭いワンルームで両親は頻繁に喧嘩し合い、その度にコップや皿が割れた。  思い描いていた人生とは違うと、いつしか互いに不満を抱き、罵り合うようになっていったのだ。    幼かった私は、ただいつも片隅で震えている事しかできなくて。    「何よ……!私のせいだって言うの!?」 「ああ、そうだよ!君が妊娠なんかしなければ……」 「ひどい……!全部私のせいにする気?  こんな事なら…あなたなんかに出逢わなければよかった!」 「そうだな……!君と出逢わなければきっと…俺はもっと上手くやれてた!」 若い二人のすれ違いは、修復不可能なほど深くなっていった。  その後父は逃げるように女を作り、ほとんど家に帰って来なくなる。 育児で身動きの取れない母は、その辛さを全部娘の私のせいにした。 「あんたが生まれなければ……  あんたさえいなければ……」 若い母にとって私という存在は、彼女の夢を奪った邪魔者だった。 母が父を憎めば憎むほど、私は憎まれていった。父もまた…… 「うるさい、泣くな侑!うるさいんだよ!」 「もうやだ……こんな生活。  こんな男と結婚なんてするんじゃなかった。  こんな男の子供を…産むんじゃなかった。  舞台に立ちたい……もう一度舞台に。」  そうだ。そんな事なら私はきっと。  この世に生まれてこない方が良かったんだろう。
last updateHuling Na-update : 2025-07-01
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落ち目女優の憂鬱/名前だけの家族

 そのうち母も父に反抗するかのように男を作り、家を留守にする事が増えた。  その事を父が責め…果てしない言い争いが続き。  やがて二人は離婚を決意。  まだ幼い私をどうするかという話し合いになった。    「……今付き合ってる女に、子供ができた。  俺の子だ。  だからもう……侑は要らない。」    「私だって……恋人と半年後には再婚する約束をしてるのよ!  侑は連れて行けないわ!あなたが何とかしてよ!一応父親でしょ!」 「それを言うなら君だって……!」 それぞれが新しい恋人を見つけ、違う人生を歩もうとしている。  すでに愛などなかった二人には私が不要で、互いに押し付けあった。 そうして結果的に両方に見捨てられた私は、幼くして親戚の家を転々とする事になった。  初めは母方の親戚の家に引き取られ、海の見える田舎町で一か月だけ過ごした。    そこで私は友達との辛い別れを経験する。    またすぐ別の親戚の家に引き取られ……  引越し先の中学で聖と出会った。  中三の夏前。女優のオーデションを受けて、見事合格する。 幸い演技をするのだけは得意だった。  母の血を継いだのだろう。  とにかく早く……別の何者かになりたかった。 親戚の家にも、やはり私の居場所はなかったからだ。    結局両親は時々送金してくれたけれど。 『侑。私に会いに来ないでね。  今の家庭を壊されたくないから。』 『うん……』 送金の確認で、母ともすでに電話するだけの関係だった。 『侑、お前……女優になってお金持ちなんだろ?  だからこれを最後の送金にする。  …元気でやれよ。じゃあな。』 『うん……お父さん。今までありがとう。』 女優として売れ始めた事を知った父は、それ以上援助はしないと言って電話を切った。 誰にも———————————  『う……っぁ、あっ…………』  電話を切られた後、公衆電話のボックスの中で私は泣き崩れていた。 どちらにも愛されてないと実感した夜。  どうして二人を責めなかったのか。  それでも親かと怒らなかったのか。  捨てないでと言わなかったのか。  愛して欲しいと泣き叫ばなかったのか。 もう何も言えなかった、幼い頃とは違うの
last updateHuling Na-update : 2025-07-01
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落ち目女優の憂鬱/元恋人

 大⃞丈⃞夫⃞だ⃞よ⃞。⃞俺⃞が⃞い⃞る⃞。⃞ 聖とは中3の時、クラスが一緒だった。 親戚の家をたらい回しにされ、時期外れの転校ばかりしていた私は、あまり周囲には馴染めなかった。  一か月だけ過ごしたあの田舎町から引っ越し、次に世話になった親戚の家で中学の2、3年を過ごした。   小野寺《おのでら》聖は、当時サッカー部に入っていた。  髪は少し長めで、見た目は軽そうだったが、実際は爽やかな性格で、本当は優しい人だった。  友達は多くて、いつも目立つグループの中にいて、女子にもそれなりにモテていたと思う。  「……堤さん。まだ帰らないの?」  下校時刻を過ぎてもまだ教室に残っていた私は、日が落ちていくグラウンドをボンヤリと眺めていた。  この時の私は、まだ母の姓を名乗っていた。 「小野寺くん。……うん。帰らなきゃね。」 「…何か辛いことでもあった?」 「……?どうして?」 「何だか……辛そうな顔してる。」 良く知りもしないのに、聖は私の顔を見ただけでそれを察したように言う。   「うん……そうかも。私……辛いのかもしれない。」 なぜか素直に本音を溢した。  聖のこと、私の方もよく知らなかったのに。 それは私がまだ女優デビューする前だった。  世話になっていた家には二人の姉妹がいて、遠縁の私の事を煙たがっていた。  だから帰りたくなかった。  けれどそれを聖に言い当てられるとは、夢にも思ってなくて。 「俺で良ければ……話聞くよ?」 困ってる人を見過ごせない。聖は当たり前のようにサラッとそう言ってくれた。  その日から、聖との交流が始まった。 その後は堰が切れたように、聖とたくさん話をした。 自分がまさかこんな風に、人に心を開くなんて思いもしなかった。  でも本当はずっと、誰かに話を聞いて欲しかったのかも知れない。 人気者の彼と一緒にいることを知られるのには抵抗があり、人があまりこない階段でとか放課後待ち合わせした河川敷で、とか。   「俺思うんだけど……侑は人前でもそうやって話したらいいのに。」 「駄目だよ。聖。  私…他の人の前だと緊張してしまう。」 「じゃあ、俺だと大丈夫なの?」 「うん……私も不思議なんだけど。」 「はは。……そっか。  そうか………」
last updateHuling Na-update : 2025-07-02
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落ち目女優の憂鬱/元恋人

 話しを聞いた聖はなぜか酷く怒っていた。  「だって…そうでも言わなきゃ、お母さんと電話もできなくなる。  なんだっていい……例え嫌われてても繋がってられるなら……」 その当時、両親から見捨てられたという事実が酷く私を臆病にしていた。  幼い時に捨てられた傷は、簡単には癒えてくれない。  だから、もうこれ以上捨てられたくないと無意識に足掻いていたんだろう。 「……聖。私、怖いんだよ。  また二人に見捨てられるんじゃないかと思って、いつもビクビクしてる。  もし連絡が取れなくなったら今度こそ……私は本当に一人になってしまうから。」 その話をした直後。夕暮れの公園で。  ベンチに座る私を見下ろし、なぜか聖は泣きそうな目をしていた。    「侑……お前は一人じゃないよ。」 「……え?」 「大丈夫だよ。俺がいる。」 「聖、それって……?」 聞こうとしたけど、その場に聖の友達が通りかかって結局聞けずじまいだった。  それからオーデションで見事合格した私は、本格的に女優業に専念するため上京を決めた。  住む場所は事務所に用意してもらった。生活費も、後から給料引きになるらしい。  当時から八重樫が運営するマイナーな芸能事務所ではあったけれど……  そこまで心配する必要もないはずだと。  なのに見送りに来た聖はなぜか凄く不安そうだった。  「向こうに行ってもちゃんと…連絡して。」  まだ残暑が厳しい9月。 「うん……ちゃんと連絡する。  今までありがとう……聖。」 「元気で…女優になってお前がテレビで活躍するの、楽しみにしてる。」 「ありがとう。最後まで私の事を見捨てないで居てくれて。」    私が辛い時、寂しい時、話を聞いてくれてずっと側にいてくれた。  どれだけ感謝しても、し足りない。   「侑あの………」 「……?」 時間になり、駅のホームでドア越しに見つめ合う形になった。  その後に聖の言葉はもうなかった。互いに手を振る。 一緒に過ごしたのは僅かだったけれど、とても大切な友人だった。  勝手にそう思っていた。 だが朝ドラでデビューした私は、上京後は大忙しで…  次第に自分からも聖からも連絡が減っていき……  互いの消息を知る事もなく、日々は流れて
last updateHuling Na-update : 2025-07-02
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落ち目女優の憂鬱/元恋人

 仕事の関係で上京していた聖に偶然再会し、告白された。 嘘みたいだったし、夢のようだった。 その頃はすでに自分の不器用さに参っていた時期で、そんな時にそばに居てくれる聖の存在がすごく大きかった。 名前だけの家族しかいない私には、彼だけだった。  仕事が減って、何もかも上手くいかない中で、聖だけが私の心の拠り所で、唯一の希望だった。  だけど結局いつしか二人はすれ違っていった。  互いの世界が違い過ぎたのもあるだろう。 女優と一般人の彼。 売れても売れてなくても、私はきっとずっと聖に寂しい思いをさせていた。 知らないうちに嫌な思いもさせたのかも知れない。 だから……でも。 私を唯一理解してくれた聖に、捨てられたと分かった時。 辛かったし、死にたかった。  好きな人に捨てられれば生きれないほど、私は本当に弱かった。  本当に大好きだった。 幸せになって欲しいと願う反面、忘れないで欲しいと願っていた奇妙な矛盾。  「侑さん。」 —————長い夢を見ていたみたい。   あの後眠っていたの?  ベッドで目を覚ました私の側には、主人の目覚めを待つ飼い犬みたいに昴生が待機していた。  しかもなぜか嬉しそうに目を輝かせ、起きた私を黙って見つめている。 今私の側に、聖はもういない。むしろもう誰も。  親も……友達も。 それなのに。  どうしてこの人は、当たり前のように私の側にいてくれるんだろう。   ゆっくり上半身を起こして私は昴生に尋る。  「綿貫くん。…昨夜どうして部屋に来なかったの?」 昴生がぴくっと肩を揺らした。  ベッドの縁に手を着き、何かを企むような顔をする。  少し長めの黒髪が揺れた。 「あれ……もしかして侑さん。   寂しかった?」 この人気俳優はどうやら、本気で私を飼育するつもりでいるらしい。 初めは個体で……それが少しずつ熱されて、液体に変化していくように。 物理学で融解が始まっていくように。 私は……少しずつ、彼に変えられていく自分を実感している。 あんなに死にたいと思っていたのに。今はそれどころではないというか。  意識が全く違う方向を向いている。  「うん…………。」  静かに頷くと、昴生は満足気に顔を熱らせる。 「嬉しいな……じゃあ、今
last updateHuling Na-update : 2025-07-02
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