真っ白な病室。小夜が帰った途端、先ほどまで明るくはしゃいでいた佳乃は急に元気をなくした。お菓子を食べるのもやめ、癇癪を起こしたように、残りをベッドのそばに付き添っていた雅臣の手へ押し付ける。そして、ふかふかの布団に潜り込み、頭まですっぽりと隠してしまった。雅臣は、彼女の突発的な小さな癇癪に、とっくに慣れきっていた。それどころか、このわがままを好ましくさえ思っている。これは少女時代の彼女が持っていた、純粋で無邪気なわがままであり、長谷川と遠藤の両家の大人たちから溺愛され、甘やかされて育った証でもあった。しかし、その無邪気で愛らしいわがままは、海外へ留学し、コルシオという男に出会った瞬間に無惨にも打ち砕かれてしまった。それ以来、彼女は神経質になり、いつも何かに怯えるようになってしまったのだ。だからこそ、雅臣は佳乃が過去の記憶を失ったことを、決して悪いことではないと思っていた。構わない。どうせ自分と佳乃が共有する記憶は、幼少期からずっと続いているのだ。たとえ記憶がどれほど退行しようと、幼い頃まで戻ってしまおうと、自分の存在だけは常に彼女の記憶の中にある。二人はずっと一緒にいたのだから。過去も、そして未来も。永遠に離れることはない。「佳乃、どうしてご機嫌斜めなんだ?」雅臣はお菓子を置き、顔を近づけて布団の端をそっと引っ張った。半分ほど下げたところで手を止める。完全に引き剥がせないわけではない。佳乃の力などたかが知れているからだ。だが、本当に無理やり剥ぎ取ってしまえば、その後のご機嫌取りが厄介になる。彼は手を止め、優しくなだめるように言った。「お菓子が美味しくなかったのかな?それとも……小夜ちゃんにもう少し一緒にいてほしかった?私が一緒じゃ不満かな?」「私、嘘をついたの」布団の中から、くぐもった声が聞こえた。雅臣が呆気に取られていると、佳乃が突然布団からひょっこりと顔を出した。鼻の頭を赤くし、目を伏せてすっかりしょげ返りながら呟く。「香水のこと、小夜ちゃんに嘘をついちゃった」彼女はひどく落ち込んでいた。小夜に嘘をついてしまったからだ。彼女は確かに、あの匂いを嗅ぎ取っていた。小夜が以前プレゼントしてくれたあの香水と信じられないほどよく似た、同じ品種の薔薇から作られた香りだ。つまり、小夜に香水を渡した
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