ネクタイをグイッと掴んで引き寄せた。頭に血が上った勢いのまま、彼女は言い放った。「女王をみだりにからかう不届きな騎士が、どこの世界にいるのよ!」口に出した瞬間、彼女は我に返った。心の中で悲鳴を上げる。――終わった。私まで毒されてるじゃない!耳元で、青山の抑えきれない低い笑い声が聞こえた。彼女が手を離した瞬間、彼がすかさず小夜の手を捉える。大きくて熱いもう片方の手が彼女の細い腰に回され、その熱に彼女は小さく身を震わせた。耳元で、かすれた、誘惑するような声が響く。「では、我が女王は僕に罰をお与えになるのですか?どのように?何を使って?それとも……」青山は彼女の耳元に唇を寄せ、低く囁いた。小夜の顔から火が出そうだった。「この、大馬鹿!あなたって人は……」彼女は目を大きく見開き、笑いを堪えきれない目の前の男を睨みつけた。全身が茹で上がったように熱くなり、恥ずかしさのあまり男の胸をポカポカと叩く。「どうしてそんなふうになっちゃったのよ!」――この人、だんだん口にブレーキがかからなくなってきてる!よくもまあ、そんな恥ずかしいセリフが言えるわね!今までどうして気づかなかったのだろう。彼がこんなにも……色気を放つ男だったなんて。何が高潔な人よ!ここはまだ外なのに!彼女は顔を真っ赤にして怒りながら車に戻り、青山も楽しげな笑みを浮かべながらそれに続いた。彼らは気づいていなかった。街角の監視カメラが、ずっと彼らの方向へ向いたまま、赤いランプを点滅させていたことに。……その後、竹園地区のマンションへ戻る道中、顔を真っ赤にした小夜は青山を完全に無視し、一方的な冷戦を開始した。竹園地区に到着し、青山は車のドアを開けてやり、笑いながら尋ねた。「本当に口を利いてくれないのかい?」小夜は彼を睨みつけた。車を降り、花束を抱え、彼女は無言のまま自宅へと歩き出す。婚約したとはいえ、息子の樹がまだ少し彼を警戒していることもあり、今のところ二人は単なるお隣さん同士だ。同居はまだ先の話である。だが、ドアを押し開けようとした瞬間。小夜は何かを思いついたように瞳をくるりと回し、突然振り返って、後ろから見送りに来ていた青山に向かって手を高く掲げた。中指のルビーの指輪が、月明かりの下で異常なほど鮮やかに輝いて
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