あの男が、佳乃を危険に晒すはずはない。では、なぜ?小夜が答えの出ない疑問を巡らせていた、そのときだった。「小夜ちゃん!」ソファで雅臣と楽しそうに話していた佳乃が、物音に気づいて振り返った。小夜の姿を見ると、嬉しそうに駆け寄り、その手を取る。「もう、小夜ちゃん。婚約するなら、どうして教えてくれなかったの?大切な婚約披露なのに、水臭いじゃない。ほら、見て!お祝いの品を、こんなにたくさん用意してきたのよ。婚約おめでとう!」佳乃はそう言って、部屋の中を指さした。大小さまざまなリボン付きの箱が、部屋の半分を埋めるほど積み上げられている。すべて佳乃が持ってきた婚約祝いだった。「本当は、まだあるのよ。でも、あなたが好きそうな翡翠の飾りや骨董品は、雅臣が持ってこさせてくれなかったの。あとで新居へ運ばせるから、部屋に飾ってね!」佳乃は満面の笑みで小夜を見つめた。「小夜ちゃん?」「……うん。ちゃんと聞いてるよ」小夜は何とか答えた。佳乃の様子を見る限り、まだ記憶が混乱した状態にあるらしい。自分を友人だと思っている。小夜は静かに息を吸った。雅臣の向かいに座る青山へ一度目をやってから、笑みを浮かべる。「ありがとう、佳乃。でも、おかしいな。私、ちゃんと知らせたはずよ。もしかして……雅臣さんが教えなかったの?」小夜は雅臣へ視線を向けた。「え?」雅臣は虚を突かれたように固まった。小夜から、そんな話を聞いた覚えはない。それどころか、長谷川家の人間は参加させられないと言われていたはずだ。だが、考える間もなく、不機嫌になった佳乃が飛びかかるようにして耳を引っ張ってきた。雅臣は、まず妻をなだめるしかない。二人が騒いでいる間に、青山が小夜へ歩み寄り、耳元で囁いた。「心配しないで。先に手配してある。施設の周囲は常に見張らせているから、外部の人間が入り込むことはないよ」外から誰も入れないのなら、佳乃がここにいても危険はない。小夜は頷いたが、それでも完全には安心できなかった。コルシオは深く身を隠している。今どこに潜んでいるのか、いつ姿を現すのか、誰にも分からない。佳乃がここにいると知ったら、何をするかも予想できなかった。長谷川め!今すぐ首を絞めてやりたいほど腹が立つ。一体、何を企んでいるの!小夜は深呼吸
Read more