ここにあるものはすべて塵ひとつなく、まるで時が一度も流れたことなどないかのようだった。海羽はそれらを見つめながら、全身が凍りつくのを感じた。まるで氷穴に突き落とされたようだった。これのどこが、家だというのか。母の過去を標本にして閉じ込めた、精巧な檻ではないか。「あなたのお母さんは......小さいころから絵を描くのが好きで、ポエムを書くのも好きだった。家に縛られたくないって、いつも言っていて......」雅世は机の上の色あせたポエム集を撫でながら、尽きることのない悔恨をにじませた声で言った。「私たちのせいで......あの子は追い詰められたの......」海羽は何も言わなかった。ただ静かに立ち尽くし、この部屋を、この華麗な牢獄を見つめていた。母の半生を縛りつけた場所を。そのとき、はっきりと理解した。なぜ母は、外でどれほど苦労しようとも、二度とここへ戻ろうとはしなかったのかを。......夕食の席は、息が詰まりそうなほど重苦しかった。長いダイニングテーブルには、芸術品のように精緻な料理が並んでいる。だが、誰ひとり箸を進める気にはなれない。やがて、信宏が箸を置き、沈黙を破った。海羽を見据え、その声は相変わらず反論を許さぬ響きを帯びている。「戻ってきた以上、家に戻るのが筋だ」一拍置き、すでに決まりきったことを告げるかのように続けた。「来月初めに宴を開くよう手配した。その場で、港白中に向けて発表する。お前は、この皆葉家の長女だと」さらに視線を一輝へ向ける。「それから瀬賀家との婚約も、この機に改めて進めればよい」その一言一言が、彼女の未来を設計し、人生を配置していく。そこに、彼女の意思を問う気配は微塵もなかった。海羽の手にあった箸が、重い音を立てて卓上に置かれる。顔を上げたその瞳は、いつもの鋭さの奥に、感情を削ぎ落としたような冷たい光を宿していた。信宏をまっすぐに見つめ、はっきりと、断固として言い放つ。「私は、白鳥海羽」そして、強調するように、宣言するように。「自分の人生は自分で決めるので、誰かに決めてもらうのは結構です」信宏の顔色が、瞬時に曇った。眼中にも置いていなかった孫娘が、これほど多くの人の前で公然と逆らうとは思ってもいなかったのだ。
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