約5メートル先に、梢が立っている。表情はぼーっとしてから驚きに変わり、最後にはまるで絶対に認めたくないといった崩壊寸前のショックを見せていた。ことはのまぶたはピクピクと震え、誰かがことはのミルクティーを持っている手首を掴んだ。ことはが振り向くと、隼人はすでにことはの額と触れそうな距離にいた。また……神谷社長が飲んでいる!!ことはが歯を食いしばって言った。「わざとですよね?」隼人は無邪気な顔で答えた。「本当においしいんだよ」ことは苦笑いしながら、ミルクティーを隼人の胸元に押し付けた。「はい、どうぞ召し上がってください!」隼人は当然のようにことはから受け取り、なおさら当然のように飲み始めた。その時、梢が大股で隼人たちの前に歩み寄り、悔しさと現実を受け入れられない様子で聞いた。「隼人さん、本当に篠原さんと付き合っているんですか?」隼人のわざとらしい行動はさておき、ことはは不思議に思った。梢さんは貞元のことが大好きじゃなかったっけ?たった数日で気持ちが変わったってこと?梢はことはを指差して、「篠原さんのどこがいいんですか。篠原さんの身分は隼人さんにはふさわしくないと思います」と言った。梢の言葉が終わらないうちに、隼人は手を上げ、ミルクティーのカップの底で梢の手の甲を押さえつけ、腕を下ろさせた。そして、冷たい目つきで梢に警告した。「次に指差したら、その手を使いものにならなくても知らないよ」梢は脅されたような気持ちになって胸がぎゅっとなり、唇を噛んで言った。「篠原さんをわざと呼び出して、さっきの茶番を私に見せようとしたんですよね。別にいいですよ、大人なので何人か恋人がいても普通ですし」ことはは目を丸くした。梢が口を開こうとした時、隼人はミルクティーを反対の手に持ち替え、右手でことはの手を握り、そのままその場から離れた。それを見た梢はなおも諦めきれず、大胆に言った。「隼人さん、大丈夫ですよ。私は本当に気にしていないので。待てますから」角を曲がってエレベーターがある場所に着くまで、ことはは梢がじっとその場で立ち尽くしているのを見ていた。完全に視界から消えると、ことはは視線を戻し、握られた左手を上げて、「神谷社長、見えなくなったので、手を離していただけますか?」と聞いた。隼人は手を離し、鼻で笑いながら言った。「今になって急に
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