こればかりは小田井さんを責めれない。これは小田井さんの運が悪かったとしか言いようがない。どうしてよりによって神谷社長の隣に座っている時に自分に電話をかけてくるんだろう。それに、神谷社長はどうして自分の携帯を奪うことにますます手慣れてきているのだろう?ことはが隼人から自分の携帯を奪い返そうとすると、隼人は包帯を巻いた左手をことはの前に出した。その傷口を見ると、ことはは当然ながらそれ以上隼人に近づく勇気を失った。この狡猾で卑劣な男め、こんなせこい手を使うなんて!?隼人は口元を緩ませ、非常に満足げにしていた。しかし、電話口で直子が話している内容を聞くと、隼人の口元は硬直し、顔には冷たい表情が浮かんだ。「篠原さん、今はあなただけが私を助けることができます。これからお願いすることは失礼に当たると承知しておりますが、私の家族に対して、神谷社長がこれ以上手を出さないようにしていただいた暁には。必ずあなたに恩返しをします。お金でも家でも何でも差し上げますので」「確かに失礼に当たるな」隼人が突然口を開いたので、直子は悲鳴を上げた。次の瞬間、一方的に電話が切られた。「……」隼人とことはは呆然としていた。隼人でさえこうなるとは思っていなかった。隼人は携帯を持ったまま、まるで自分は無実だと主張するようにことはと視線を合わせた。先ほどの直子の悲鳴は、ことはにも聞こえていた。ことはは呆れながら隼人から携帯を取り戻し、皮肉を込めて言った。「神谷社長、誰にも社長に逆らえませんね。それから、次からは私の携帯を奪わないでいただけますか?」「俺は何か変なことを言ったか?」「特に言っておりませんが、神谷社長が言うと、なぜか普通のことも変な風に聞こえてしまうんです」運転していた浩司はついに我慢できず、笑いを漏らしてしまった。隼人はまぶたをぴくつかせながら言った。「番号をブロックしろ」ことはは、「ブロックしても別の番号からかかってくると思います。それに、神谷社長にそんなに脅かされたら、小田井さんももう私に電話してこないと思いますよ」と返事した。隼人は冷ややかに言った。「フン、まるで俺が悪者みたいだな」浩司が二人の会話に割り込んだ。「神谷社長、それは多分、子どもを寝かしつけるときに、『早く寝ないと、爪をかじる妖怪が来るよ』って脅すみ
Baca selengkapnya