All Chapters of 幼なじみに裏切られた私、離婚したら大物に猛アタックされた!: Chapter 291 - Chapter 300

308 Chapters

第291話

ゆきはOKのポーズをした。慎吾は隙を見てを茶々を入れた。「でも宗形家が帝都に来るって話は本当だよ」隼人が慎吾に視線を送ると、ゆきは瞬きしながら聞いた。「では婚約したということになりますか?」「ゆき、ことはを説得してくれないか?今すぐ俺と一緒に婚姻届を出そうって。明日でもいいよ」これを聞いたゆきは驚いて口を押さえ、しばらく放心状態になった。これはプロポーズだろう。プロポーズされる本人がいなくても。一方、篠原家では、翔真は話した後にまだもの足りないと思ったのか、ことはの前に進み出て彼女の両腕を掴んで激しく言った。「君が夢中になってるのは分かるが、神谷家は絶対に君を嫁がせたりしない。それに宗形家はさらに手強い。君のことを理解しているからこそ、そんな面倒ごとに巻き込まれて欲しくないんだ」「ことは、早く神谷社長と別れろ、さもないと君が損をする」篠原ことはは深呼吸し、いらだたしげに翔真の手を振りほどいた。「第一に、今夜家で話すべきはあなたと寧々のことで、余計な話はしないで。第二に、私が誰と付き合おうと、よそ者のあなたが口を挟む権利はない。最後に、これ以上余計なことを言うなら、遠慮なんてしないからね」「それでも神谷社長と付き合うつもりか?」翔真はこの一点だけを執拗に問い詰めた。再び翔真が手を出そうとした時、険しい表情をした涼介がすでにことはの前に立ちはだかり警告した「翔真、ことはに近づくな」「どけ!」と翔真が怒鳴った。「翔真、また何をしようとしてるんだ!」樹は我慢できず、翔真を叱責した。翔真は無表情で言った。「俺は明日婚姻届を出すけど、条件は今の俺とことはの話に干渉しないことだ!」「お前!」樹は顔面蒼白になるほど怒っている。「翔真、父親になったのに、どうしてまだこんな子供っぽい言動ができるの!」東雲夫人が胸を冷たく締めつけられる思いで言った。翔真は聞き入れず、視線をことはだけに向け、半歩前に進むと、涼介が翔真の肩を掴んだ。「これ以上近づくな、最後の警告だ」「余計なお世話だ!」翔真は涼介の手を払いのけ、少しも怯まず言い放った。「翔真、一体何がしたいのよ」寧々は心中穏やかではなく、むしろ翔真がまだこんなにことはのことを気にしているのが不愉快でたまらなかった。寧々は歩み寄り、翔真の腕を抱きながら不満そうに言った
Read more

第292話

その瞬間、涼介は翔真の襟元をつかみ、獣のような鋭い目で睨みつけた。「ことはに直接ちょっかいを出すだけじゃ飽き足らず、今度は寧々と彼女のお腹の子どもまで脅すつもりか?この野郎、我が篠原家がいいように扱えるとでも思ったか!」翔真の口角からは血がにじみでて、どうにでもなれというような態度で言った。「覚悟があるなら今日ここで俺を殴り殺してみろ!」「俺ができないとでも思ってるのか?」涼介は再び腕を振り上げ、翔真を殴ろうとした瞬間、寧々が素早く涼介の腕を掴み止めた。「涼介、やめて。翔真は悪くないわ。悪いのは……悪いのはことはよ!」寧々はそう言いながら、目をきょろきょろさせ、無理矢理矛先をことはに向けた。その言葉を聞いたことは、嘲るような目を向けた。「私が悪い?」寧々が頷く。「そう、あんたよ。あんたがふしだらな生活を送るから、涼介も翔真もあんたを心配する羽目になるの!あんたのせいで翔真と涼介が殴り合いになったのよ。翔真が無駄にくらった一発は、今度はあんたから取り返すべきよ!」話が完全に事実をねじ曲げているだけでなく、寧々は本気でことはのもとへ歩み寄り、平手打ちしようとした。だが、ことはは寧々より速く反応し、寧々が振り上げた右手首を掴み、逆に彼女の頬に平手打ちを食らわした。「妊婦だからとか、両家の両親が見ているからと言って、私が手を出せないとでも思った?」連続で四発のビンタを食らった寧々は耳がキーンとなり、しばらく呆然としていた。最初に激昂したのは佐奈江だ。「ことは、あなたは正気なの!私たちの目の前で寧々を殴るなんて!」ことはは佐奈江を一瞥し、冷笑した。「ええ、やろうと思えばもう一回ぶん殴れるわよ!」そう言うと、ことははさらに寧々の頬に追加の一撃を食らわせた。寧々は泣き叫んだ。「パパ、ママ、ううう、頬が痛いよ」それぞれの表情が複雑に変化していく。東雲家の夫婦は何か言おうとしたが、どちらの肩を持っても理にかなわないと感じた。とくに翔真が殴られたとなれば、彼らはますます自分たちに理がないと感じざるを得なかった。翔真と涼介の怒りの感情も一旦収まったが、典明はただただ険しい顔をしていた。最も激昂しているのは佐奈江で、彼女は怒りに任せてことはに歩み寄り、寧々の仇を討とうとする。「寧々が今妊婦だって知らないの?よくもそんなことを……」
Read more

第293話

その名前を聞いて最も動揺したのは、ほかでもない寧々だった。目に見えて唇の色が青白くなり、明らかに取り乱し始めた。寧々は佐奈江のもとへ駆け寄ろうとしたが、ことはに手首を掴まれてしまった。ことはは薄笑いを浮かべながら、「逃げる必要ある?寧々、あなたのヒモが来たんだから、嬉しいはずじゃない?」と言った。寧々はことはを睨みつけ、突然悟ったように「あんたが呼んだの?!」と聞いた。ことはは嘲るように、「私にそんな大それた力はないわ」と答えた。「あんたよ!あんたなのよ!」寧々は両手をめちゃくちゃに振り回しながらことはの顔を掴もうとしたが、ことはは腕をさっと外に振り、逆に寧々の体を引き寄せて、自分に触れる隙さえ与えなかった。「庄司碩真?典明さん、そいつを中に入れてください。俺も興味がありますので」樹は青ざめた顔で言った。典明は顔を歪ませ、苦し紛れに「樹さん、これは全て誤解です」と説明した。「誤解かどうかは、俺が碩真を見てから判断します」樹の態度は強硬だ。「典明さんが夜分に客を招き入れるのが憚られるなら、俺が自ら外に出て確認しても構いませんよ」「行かないで、ダメ、絶対にダメ!」寧々が何度も拒否したことで、東雲家夫婦は碩真に何か問題があることと、ことはの話が真実だと確信した。「典明さん、二人の子供が結婚するのは、我々親からすれば一番喜ばしいことです。しかし、我が東雲家はそこら辺の金持ちとはレベルが違います。こんなごまかしは許されませんよ!この碩真ってやつををすぐに中に入れてください!」樹の声は怒りに震えている。「樹さん、本当に何もないんです。あの人が誰かなんて、私たちも知りません」佐奈江の拙い言い訳はむしろ逆効果だった。翔真は既に涼介を押しのけており、怒るどころか、碩真の登場がちょうど良いタイミングだと感じていた。翔真は襟を正しながら、「父さん、玄関まで自分で確認に行った方が良いよ。追い返される前にね」と言った。「やめて、お願い翔真、ダメ!」寧々は翔真の両腕を掴み、必死に懇願した。「今さらビビってんのか?」翔真は寧々の手を振り払い、冷たい表情で「さっきことはを誹謗中傷する時は随分威勢が良かったじゃないか」と言った。「私、ことはに謝るから。今すぐ謝るから、これでいい?」寧々は泣きながら言い終えると、翔真の返事を待たずに自らことはの前に走
Read more

第294話

篠原家の屋敷に碩真が現れた。碩真はまだ松葉杖をついており、立ったままうなずいた。「僕が碩真です」そして、碩真は陰険な顔をした涼介を見つめた。「数日前、私は涼介さんに捕まり監禁されそうになりました。この数日間、僕は逃げ回り、人間らしい生活もできませんでした。あのような日々はもうごめんです。なので、樹さんが今夜篠原家にいると知り、この機会を使ってしっかりとけじめを付けようと来ました」そして、碩真は視線を寧々に移し、尋ねた。「寧々さん、僕は君からお金をもらって君に従ってきた。しかも僕はいつでも君の呼び出しに応じ、君がもうこの関係をやめたいと言えば、素直に去るつもりでいる。それなのに君は涼介さんに僕を追い詰めさせた。あまりにもひどくないか?」「デタラメを言わないで!私のことを悪く言わないで、あんたなんか知らないわ!」寧々は真っ赤な目で碩真を睨みつけ、ヒステリックに否定した。次の瞬間、碩真はスマホを取り出し、自分と寧々がベッドで一緒に寝ている写真をみんなに見せた。「これでも知らないと言うのか?」「ああああ、殺してやる!」寧々は写真を見た瞬間、完全に感情が崩れてしまった。碩真は確かに手足が不自由ではあるが、少なくとも誰かが危害を加えようとしても避けることはできる。寧々はツイていなかった。お腹を椅子にまともにぶつけてしまい、苦しそうにその場にへたりこんだ。「寧々!」佐奈江は慌てて駆け寄り、寧々の苦悶の表情を見るや、すぐさま振り返って言った。「典明、まだみんなを追い出さないの?寧々がこんなにいじめられているのが見えないの?」「追い出したらどうやってこの件を解決するんですか?」樹は厳しい口調で聞いた。「典明さん、そうですよね?」典明は何度も深呼吸し、感情を抑えるのに必死だった。「まずこの写真の真偽を確認すべきだ」碩真はすぐに言った。「僕は監視カメラの映像も証拠として持っています」この言葉を聞いた典明は、もう少しで血を吐きそうになった。涼介が前に出てきた。「スマホをよこせ」碩真は渡さなかった。「涼介さん、また僕のスマホを破壊するつもりなのか?たとえ君がこれを消せたとしても無駄だよ。写真も動画もすでにあるサイトにアップロードしてある。もし僕が何事もなく篠原家を出られなかったら、自動で公開されるようにしてあるから」この言葉を聞いて
Read more

第295話

寧々は佐奈江の腕をしっかりと掴み、頼み込んだ。「ママ、早く樹おじさんたちのところへお願いに行って!私のお腹の子は本当に翔真の子なの、本当に翔真の子なの!」寧々がこのように泣いているのを見て、佐奈江は心が痛んだ。彼女は立ち上がって言った。「親戚の皆さん……」「何が親戚のみなさんですか!私たち東雲家と篠原家は親戚ではありません!」普段は温厚な東雲夫人も、この瞬間に激怒した。「もともと、私たち東雲家は篠原家と親戚になりたいと思っていました。ことはを嫁に迎えることができて嬉しかったからです」「篠原家がこの結婚生活を台無しにしたのに、今はさらに……」東雲夫人はもう続きを言う気にはなれなかった。東雲夫人は背を向けて樹に言った。「樹、寧々は東雲家に嫁いではいけないわ」「もちろん、嫁がせないよ。東雲家は廃品回収所じゃないから」樹はきっぱりと言った。寧々がゴミに例えられているのを聞いて、典明は恥ずかしくなった。「樹さん、それはちょっと酷すぎませんか?」「酷い?篠原家の方が酷くありませんか?」樹は聞き返した。「典明さん、今さら事実関係にこだわる必要はないでしょう。それとも、典明さんが以前、寧々にヒモがいる件で密かに俺と話し合おうとしたことを、もうお忘れですか?」翔真がそう口にした瞬間、東雲家の夫婦の顔色は瞬く間に変わった。「なんだって、ずっと前から知ってたの?」東雲夫人は鋭く尋ねた。「うん」「なぜもっと早く言わなかったの?」東雲夫人が激怒した。「すべては父さんと母さんのためだ」そう言うと、翔真はことはを憤慨した表情で見つめた。まるで、最初に起こったことは自分のせいではないとでも言うかのように。ことはは白目を剥いた。翔真、おかしいんじゃないの。その時、涼介が静かにことはのそばに歩み寄り、低い声で尋ねた。「篠原家に来ることに快く同意したのは、この修羅場を用意するためだったのか?」ことはは水をひと口飲み、黙り込んだ。涼介は怒らず、ただため息をついた。「つまり、ことはは本当に神谷社長のことが好きなわけじゃなくて、ここまでしてきたのも結局は翔真と元通りになりたいから、ってことなんだよな?」「……」ことはは言葉を失った。車内にまた重い空気が漂い始めた。ゆきたちはすでに首筋に寒気を感じており、浩司は黙ってエアコンの温度を上げた。
Read more

第296話

ゆきはまばたきしながら言った。「先ほど寧々は篠原さんの殺人を暴露するところだったってことですよね?」慎吾は思わず手を叩いた。「なんてドラマチックなんだ」浩司も手を叩きそうになりながら、「どうやら寧々さんの病気はまだ完全には治っていないようですね」会話が終わると、彼らはまた続きを聞くことにした。床に叩きつけられた寧々は頭がガンガン鳴り、少し落ち着くと、自分が何を言ってしまったのかようやく理解した。寧々は恐怖に震え、典明の目を見ることすらできず、ただ怯えた声で「パパ、私わざとじゃないの」と言った。佐奈江が近づき、苛立った様子で言った。「何してるのよ?寧々が妊娠中だって分かってるでしょ?」典明は怒りで深く息を吐きながら命じた。「今すぐ寧々を上の階に連れて行け。ここでまた暴れさせるな!」「嫌よ!どこにも行かないわ!」そう言うと、寧々は自力で立ち上がり、翔真の腕にしがみついて泣き叫んだ。「翔真、私のことを信じて!お腹の子は本当に翔真の子よ!」碩真は薄笑いを浮かべた。「寧々さん、この前まで僕たち同じベッドで寝てたじゃないか。それに最近は僕と一緒にいる時間の方が長いのに、どうしてお腹の子が翔真さんの子だって断言できるんだ?」寧々は逆上して叫んだ。「黙れ!黙れ!翔真、碩真の言うこと信じないで。碩真は私たちが一緒になるのが妬ましくて、デタラメを言ってるだけよ」「むしろ、碩真さんの話の方が信憑性があると思うが、一方で君は……フン」翔真はそう言いながら寧々の手を振り払った。「触るな。汚らわしい」寧々は押しのけられ、よろめきながら涙を流した。こんなはずじゃない。どうしてこうなったの。今夜は本来、明日翔真と婚姻届を出す話をするはずだったのに。なんでだろう?翔真はそう言い放つと、ことはの方へ歩み寄る。しかし、ことはは素早く避けた。それを見た寧々は再び矛先をことはに向け、顔を歪めて怒鳴った。「あんたね!ことは、このクソ女め!あんたが今夜を台無しにしたのよ!」寧々はさっとテーブルの上に置かれた花瓶をつかむと、ことはに向かって投げつけた。「ことは!」「ことは!」翔真と涼介はほとんど同時にことはの前に身を投げ出した。パン!花瓶は翔真の背中に当たり、砕け散った。「翔真!」寧々は驚いて崩れ落ちそうになり
Read more

第297話

涼介は目を閉じ、佐奈江の問いには答えず、腕で締め付けている寧々を陰鬱な目で睨みつけ、歯を食いしばって言った。「寧々、この結果は君の自業自得だ」その言葉はまるで寧々の頭上から冷たい水を浴びせられたようで、寧々は全身がひんやりと冷たく感じた。遅ればせながら後悔の念が湧き、寧々は媚びるように謝った。「涼介、私が悪かったわ。ううう、こんなこと言うつもりじゃなかったの。怒らないで、ね?」とてつもない速さで手のひらを返す寧々を見て、ことはは感心せざるを得なかった。佐奈江はすでに涼介の告白に衝撃を受けていた。「涼介、気は確かなの?どうしてことはなんかを好きになったの!世界中には他にいくらでも女なんているでしょ!」涼介はうんざりしたように佐奈江の叩く両手を掴んだ。「母さん、なぜ母さんまで取り乱すんだ。今話すべきは寧々のことで、僕のことじゃない」「涼介、ことはのようなクソ女のことが好きなのね!」佐奈江の頭には今このことしかない。「母さん!ことはをそんな風に呼ぶな!」涼介は目で威嚇した。「ことはを庇って私に口答えするつもり?」佐奈江はさらに打撃を受けた。この茶番劇を見ながら、典明は自分の血圧がみるみる上昇していくのを感じた。樹は篠原家全員が狂っているとしか思えず、これ以上見ていられなかった。「翔真、行くぞ」翔真は名残惜しかったが、今は樹の言うことを聞くべき時だとよくわかっていた。そうすれば後で寧々との問題を解決し、改めてことはを取り戻せれるからだ。「帰っちゃダメ、ダメよ!」寧々は両手を広げ、東雲家の三人の進路を遮った。「樹おじさん、東雲夫人、翔真、帰らないで。まだことが解決してないのに、こんな風に帰られたら、この誤解はどうなるのよ」樹は冷ややかに鼻で笑った。「誤解だなんてまだ言えるのか?まさか、こんな小娘のくせに、よくもまあそんなに図々しくできるもんだな!」「違うの、違うの」「どけ!」樹は寧々を押しのけ、東雲夫人を支えながら言った。「翔真、行くぞ!」翔真はことはを深く見つめた後、最終的には素直に自分の両親に従った。寧々が後ろから追いかけ、声を張り上げながら叫んでいた。しかし、寧々はドアの外で東雲家のボディーガードに阻まれた。リビングには、今や涼介たち数人だけが残されている。佐奈江はまだ涼介の腕を必死に掴み、「あ
Read more

第298話

ことはは後ろの方に下がり続け、ついにダイニングテーブルの位置まで下がった。典明はまだ叫んでいた。「涼介、寧々を捕まえろ!捕まえるんだ!」ちょうどその時、お手伝いさんが再び慌てた様子で報告に来た:。「旦那様、旦那様、また誰かが来ました!」典明は頭にきていた。こんな時にまた誰がきたんだ!「会わん!全員追い返せ!」「でもその人は……」お手伝いさんの言葉がまだ終わらないうちに、俊光のやくざっぽい太い声が響いた。「畜生!お前は俺の姪であることはに包丁を振りかざしてどうするつもりだ!」典明は一瞬たじろいだ。俊光さん?!俊光はすでに大股で駆け寄り、ことはの前に立ちはだかり、素早く手を伸ばして寧々の手首を掴むと、包丁を奪い取り、逆に自分で握りしめた。「死にたいのか!俺の姪に包丁を向けるなんて、俺がお前を殺してやるぞ!」俊光が包丁を振り回すと、今度は寧々が恐怖に震え、叫び声を上げながら後退りした。「ママ、ママ、助けて!」「チッ、役立たずが」俊光はそう吐き捨てると、振り返ってことはに尋ねた。「姪っ子よ、大丈夫か?」ことはは首を振り、心臓はまだドキドキしていた。一方の涼介は安堵の息をつき、ここにくるはずのない駿を見て、「どうして来たんだ?」と尋ねた。駿は面白そうな様子で、涼介の質問に肩をすくめて答えた。「道で偶然俊光さんに会ってな、彼がことはちゃんを探してたから連れてきたんだ。一体どうなってんだよ、今夜は両家の食事会じゃなかったのか、殺し合いみたいになってるじゃないか」典明は咳払いをして言った。「ことは、君はまず俊光さんを連れて帰りなさい」今の典明は、頭がパンクしそうなくらい混乱している。「帰るもんか、聞きたいことがあるんだ」俊光はことはに向かい、包丁を持った手で典明を指さした。「ことは、お前は前に自分の肉親の居場所について俺に聞いてたな。俺が教えてやる、お前の肉親は今も遺体が見つかってないが、こいつと関係があるんだ」ことはは俊光の演技が不自然ではないかと心配していたが、俊光は見事に役に入り込んでいた。ことはすぐに芝居に合わせ、驚いた様子で典明を見つめた。「父さん?」典明はまさか俊光が突然こんなことをするとは思ってもいなく、たちまち顔を歪めた。「何をデタラメ言ってるんだ、俊光さん!」俊光は「フン」と鼻
Read more

第299話

典明は息が詰まりそうになる。典明は歯を食いしばって言った。「お前は見間違えたんだ!」俊光は「ペッ」と唾を吐き、「20年以上前に見たことが、見間違いだと?」涼介が俊光の前に立ち、凶暴な表情で睨みつけた。「俊光さんがどんな目的でここでことはと我々篠原家の関係を引き裂こうとしてるかは知らんが。一つだけ言っておく。ことはは永遠に我々の家族だ。俊光さんの企みは絶対に成功しない」次の瞬間、ことはが俊光の前に立ちはだかった。「じゃあなぜ俊光おじさんをそんな風に脅すの?」ことはの顔を見ると、涼介は一瞬で柔和な表情に変わった。「ことは、俊光さんはわざとだ」「わざとかどうかは私が決めるわ」冷たい返事をした後、ことはは眉を吊り上げて典明を見た。「父さん、説明してくれない?」「説明することなどない、私は俊光さんのことなど知らん!」典明は即座に言い放った。「じゃあ当時俺と揉めた警官を探し出せ。あの警官なら典明さんの顔を覚えてるはずだ」俊光はことはの肩を軽く叩き、「神谷社長に調査させろ。あの人なら必ず調べ上げられるから」駿は騒ぎが大きくなるのも厭わず、驚いて言った。「じゃあ、俊光さんは嘘をついてなかったってことですか?」典明はカンカンに怒っていた。「そんな事実がないのに、なぜ調べる必要がある!」「見ろ、動揺してるじゃないか」俊光は隙を見て言った。「ことは、お前は敵を自分の父として慕ってるんだぞ!」「デタラメを言うな!」涼介も怒りを露わにした。「ことは、俊光さんは元からただのごろつきで、怠け者だ。今こうして我々を引き裂こうとしてるのは、きっとことはの金目当てだ!」一方で、寧々はまだ精神的にギリギリの状態だったが、話題がすでに自分のことではなくなっていると気づくと、さらに取り乱した様子で叫んだ。「今、一番気にかけるべきは私のことじゃないの?なんでことはの話にすり替わるの!今は私のことでしょ!」その時、碩真が口を開いた。「さっき寧々さんは口滑らせて、典明さんが人を殺したと言ってなかったっけ?もしかして、殺されたのは篠原さんの両親では?」この言葉に、寧々の体は思わず震えた。典明はこめかみが脈打つほど怒りを感じていた。「誰か来い、この連中全員をを追い出せ!追い出すんだ!」「父さん、説明してくれるはずでしょ?」ことははその場に立ち尽くし、
Read more

第300話

「庄司恭吾は僕の父親です」碩真が一語一句はっきりとそう言い放った時、典明の顔色が真っ先に青ざめた。佐奈江もその名前を知っており、驚いて言った。「恭吾さんがあなたの父親だって?」「はい」「絶対にあり得ないわ!恭吾さんは結婚していなくて、亡くなった時も独身だった。息子がいるはずがない!」佐奈江が断言した。それを聞いて、ことはは目を細める。かつて典明が殺人を犯した時、佐奈江も関与していたと推測するのは難しくない。碩真は作り笑いを浮かべながら言った。「父親が結婚していないからって、息子がいないと断言できますか?」佐奈江は言葉に詰まった。寧々の顔が青ざめ。「あんたが恭吾さんの息子だって?そんなわけがないじゃない……」碩真は寧々を見て言った。「この感じだと、寧々さんも僕の父親の名前を知っているようだな。さっき寧々が『典明さんが人を殺した』と言ったのは、篠原さんの肉親ではなく、僕の父親のことだったんじゃないか」「みんな頭がおかしくなってる!涼介、何ぼーっとしているんだ!早く全員を摘み出せ!」典明は抑えきれないほどの震えを帯びた声で言い、立っているのもやっとだった。「父さん、こういう話が出るのには、やっぱり何かしらの根拠があるはずよ。今追い出すのはまずいんじゃない?」ことはは冷たい目で見据えながら言った。「まだ私の質問に答えていないわね」「ことは、お前が実の子じゃないからって、俺が殴れないと思うな!」典明は顔を歪めて怒鳴った。「俺の前でことはを殴ってみろ!」俊光は顎を上げて言った。「追い出せ!追い出すんだ!」典明は怒鳴り終えると、ソファに崩れ落ちた。涼介は事の重大さを理解し、「誰か来い!」と叫んだ。ことははすぐに言った。「それなら私も宣言するわ。今夜このことがはっきりしない限り、私はどこにも行かないわ!さもなくば警察を呼ぶ!」「呼べるんだったら呼んでみろ!」典明が言った。涼介はうつむきながらことはの前に来て、「ことは、感情的にならないで。僕たちこそ君にとっての家族なんだから、僕たちを信じるべきだよ」「ふざけるな、俺たちこそが家族だ」俊光はことはを自分の後ろに引き寄せた。俊光の汚れた手がことはを掴んでいるのを見て、涼介のまぶたが激しく痙攣し、表情は徐々に鬼のように歪んでいった。涼介は怒りを押さえきれず、ボ
Read more
PREV
1
...
262728293031
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status