「陛下とはお話がはずみましたか?」歩き始めると、すぐにハインリヒが尋ねてきた。「え? ええ……そうね」とてもはずんだとは言えないが、別に正直に答える必要も無いだろう。「そうですか。それなら良いですが……陛下を失望させるようなことだけはなさらないようにして下さい」まるで釘を差すような言い方だ。私がアルベルトを失望させる? まさかそれは無いだろう。アルベルトの方から私を失望させることがあったとしても、私からなどありえない。「陛下は……クラウディア様には何も仰っていないと思いますが、ずっと待ち望んでおられました」ハインリヒがポツリと言った。「え? 何を待ち望んでいたの?」「お分かりにならないのですか?」何故か苛立った様子でハインリヒがこちらを振り向く。「え? ええ。ごめんなさい、何のことか分からないわ」「ならいいです。ただ、貴女の地位は絶対的なものだとは思わないことです」「そうね。自分の置かれている立場くらい分かっているわ」「……別にそのような意味で申し上げたわけではありませんが……」ハインリヒはそこまで言うと足を止めた。「お部屋に到着いたしました」「ありがとう」いつの間にか、自分の部屋の前に着いていた。「それでは失礼いたします」「ええ、送ってくれてありがとう」「……任務ですから」 ハインリヒはそれだけ告げると、一礼して去っていった。 パタン…… 部屋の扉を閉めると、私はすぐにライティングデスクから祖母の日記帳を取り出した。あのヨミという魔術師は魔法陣を描いて【ポータル】を作り出した。簡単に行きたい場所に移動することが出来る魔術。錬金術にもそのような術があれば良いのだけど……。パラパラと祖母の日記帳をめくって、探し始めた――****「ふ〜……。中々見つからないわね……」時計を見ると午前10時を過ぎたところだった。そろそろ部屋にリーシャかエバが来る時間だ。「何だか疲れたわ……少し休憩しましょう」 引き出しに日記帳をしまい、鍵を掛けたところで扉がノックされた。――コンコン『クラウディア様、いらっしゃいますか? マヌエラです』「マヌエラ? どうぞ」彼女が来るとは珍しいことだった。「失礼いたします、クラウディア様」扉が開かれ、マヌエラが姿を現した。マヌエラはお茶のセットをトレーに乗せていた。「あり
Last Updated : 2026-02-05 Read more