断罪された悪妻、回帰したので今度は生き残りを画策する(Web版) のすべてのチャプター: チャプター 241 - チャプター 243

243 チャプター

第2章 114 アルベルトの意外な話

「どうだ? クラウディア。夜の庭園は綺麗だろう?」手入れの行き届いた美しい庭園を並んで歩きながら、アルベルトが話しかけてくる。「はい、そうですね」綺麗に刈り込まれた芝生に色彩鮮やかな花々が地面に置かれたランタンの明かりで浮かび上がっている。庭園の至るところには彫刻のオブジェが飾られており、一際大きなオブジェがあることに気付いた。「どうした? 何か気になるものでもあったか?」「い、いえ。あの彫刻は何かと思いまして」あのような大きな彫刻……回帰前にあっただろうか?「では見に行こうか?」アルベルトは私が返事をする前に、手を繋ぐとオブジェに向かった。 そのオブジェは女性の姿を掘ったものだった。まるでギリシャ神話に出てくるような衣装を身に着けた美しい女性は優しい笑みをたたえている。「これは宰相が命じて作らせた『聖なる巫女』の彫像だ。300年前にこの国に現れた聖女・セシリアらしい。ほら、右手に果実を乗せているだろう?」「そうですね」「全く……何が聖女だ。神殿の力を維持したい為にこのような彫像を勝手に置くとは……」忌々しげに彫像を睨みつけるアルベルト。もしかして彼は……?思わずアルベルトを見上げると、私の視線に気付いたのかこちらを見た。「どうかしたか?」「いえ、ひょっとするとアルベルト様は『聖なる巫女』のことを……良くは思っていらっしゃらないのですか……?」アルベルトの態度がどうにも腑に落ちなくて、ためらいがちに尋ねてみた。「300年前にこの地に現れた聖女セシリアのことは特に思うところは無い。何しろ実際に会ったわけでは無いからな。それに文献に記述があるだけで本当に存在していたのかどうかも怪しい」「そう……なのですか?」まさか聖地のある『エデル』国の国王でありながら、聖女を否定する言葉が口から出てくるとは思わなかった。回帰前はあんなにカチュアに傾倒していたのに……。「ましてや、あのカチュアとか言う女が聖女だとは増々信じられない。どうせ宰相が勝手にでっち上げたに決まっている。いつか必ず尻尾を掴んでやる」何故か憎々しげに語るアルベルト。本当に彼はどうしてしまったのだろう? もしかして私が回帰したことと彼の変化は何か関係があるのだろうか?「クラウディア」不意に名前を呼ばれた。「はい」「あの女との勝負だが……本当に勝算はあるのか?
last update最終更新日 : 2026-03-01
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第2章 115 月明かりに現れた人

「今夜は散歩に付き合ってくれてありがとう」私を部屋まで送り届けてくれたアルベルトが扉の前に立つ私を見て笑みを浮かべた。「い、いえ。こちらこそ……お誘いいただき、嬉しかったです」妙にアルベルトの視線が気恥ずかしく、視線を少しだけそらせながらお礼を述べた。すると、フッとアルベルトが笑う気配を感じた。「アルベルト様……?」顔を上げると、彼は私をじっと見つめている。「宰相との勝負……誰を供にするか決めたか?」「え?いえ、まだですが……」ユダが駄目なら、誰にすればいいのだろう。こんな時、彼がいてくれたら……。「スヴェン……」思わず、無意識に彼の名前を呟いていた。「何だ? 今、何か言ったか?」「い、いえ。何でもありません。考えておきます」「ああ、そうだな。明日中には決めておかないとな」アルベルトは笑みを浮かべ……身を屈めると、私の額にキスをしてきた。「また明日会おう。おやすみ、クラウディア」「は、はい……おやすみなさい」そしてアルベルトは私に背を向けると去っていった。****「ふぅ……」扉を閉めるとため息をついた。室内は既に明かりが灯されており、ベッドの用意も寝る前に飲んでいるお茶の用意もされていた。「誰かが準備してくれたのね……」ポツリと呟くと窓に向かい、カーテンを開けて夜空を見上げた。「本当に……アルベルトはどうしてしまったのかしら?」回帰したことで、変化があったのは自分だけだと思っていた。『エデル』に向かう途中まではリーシャは別人に身体を乗っ取られていたし、兵士達の態度も冷たいものだった。 けれど私の行いが徐々に周囲に影響を及ぼし……領地の人々、そしてユダ達の信頼を得ることが出来た。私の変化がアルベルトの心にも変化をもたらしたのだろうか? 何しろ、回帰前はこの国に到着した頃には既に私は『悪女』という呼び名が定着していたのだから。 その為誰にも相手にしてもらえず、宰相も今ほどに積極的に絡んでくることも無かった。『もし、万一……仮にお前が負けてしまったとしたら……いや、そんな事は考えたくも無いが、そのときは……お前をこの国から逃してやるからな?』アルベルトの言葉が耳に蘇ってくる。「本気で言ってるのかしら?宰相とカチュアの勝負に負けたら私を逃がすなんて……。そんなことをすれば、いくら国王のアルベルトだって、
last update最終更新日 : 2026-03-03
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第2章 116  スヴェンの告白

「スヴェン……? スヴェンなの!?」慌ててベッドから声をかけると、スヴェンは人差し指を口に当てた。「姫さん、そんな大きな声出すなよ。誰か来たらどうするんだ? この国の次期王妃になる姫さんの部屋に男がいるのがバレたらマズイだろう? 大体近くには護衛騎士もいるじゃないか」「あ……そうだったわね」声を抑えるとサイドテーブルに掛けておいたガウンを羽織り、室内履きを履いた。ベッドから降りるとスヴェンが近づいてくる。「姫さん、何だか『エデル』に着いてからやつれちまったんじゃないか? 旅をしていた頃の方がイキイキして見えたぞ?」スヴェンが心配そうな顔で私を見つめてきた。「そうね。確かにあの旅も色々なことがあって大変だったけれど、悪くない旅だったわ。ここへ来てからは色々気苦労が多いけど……。ちょっと待って。そんなことよりも私は貴方に聞きたいことが山程あるのよ」「ああ、分かってるって」頷くスヴェンの顔はどこか寂しげだ。「一体どういうことなの? ここに着いてすぐに貴方は姿が消えてしまったのよ? いいえ、ただ消えただけではないわ。私以外の皆の記憶から、存在自体が消えてしまったのよ? リーシャが貴方を覚えていないのは仕方ないけれども……」唇を噛むと、続けた。「ユダだって、トマスやザカリー……一緒に旅をした人たちの全員の記憶から貴方は消えてしまったのよ?一体これはどういうことなの?」スヴェンは暫くの間黙っていたけれども、やがて口を開いた。「ごめん、姫さん。俺……本当は『アムル』の領民じゃないんだ」「え?」その言葉に自分の顔が青ざめるのを感じた。「俺……実は、姫さんを護衛する為にあの村で待っていたんだよ。村人たちに暗示を掛けてな」「え……?」「ついでに姫さんがこの国の王妃になるのに相応しい人物か見極める目的もあったんだよ」「スヴェン……あ、貴方はひょっとして魔法が使えたの……?」信じられない思いで私はスヴェンの話を聞いていた。「いや、暗示に掛けるには別に魔法の力なんか必要ないさ。普通に魔法のアイテムがあるしな」スヴェンは肩をすくめた。 「そ、そんな……」信じられない……いや、信じたくなかった。信頼していたのに、あの旅の中で私は1番スヴェンを信頼していたのに。私に見せてくれたあの姿は全て嘘だったと言うのだろうか?「この国に着いた段階で俺の
last update最終更新日 : 2026-03-04
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