All Chapters of 断罪された悪妻、回帰したので今度は生き残りを画策する(Web版): Chapter 231 - Chapter 240

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第2章 104 共有の秘密

「クラウディア……お前は一体何を言っているんだ? 宰相がどのような勝負を持ちかけてくるかも分からない状況で、勝算はあるのか?」今までにない慌てた様子のアルベルトに、戸惑いながらも答えた。「それはまだ分かりませんが、出来る限りのことはしてみようと思っています」「そんなことを言って、もし負けた場合はどうするのだ? 俺があの場にいたら止めることも出来たのに、お前は宰相の前で勝負に挑んだのだろう? 神殿との結びつきの強い宰相の決めたことを覆すのは難しいのだぞ? ましてや『聖なる巫女』を連れてきたことで、ますます権力を強めているというのに……」ため息をつくアルベルトの顔色は酷いものだった。やはりこの国の陰の支配者は宰相だったのだ。 回帰前もアルベルトは宰相に逆らえず、私を処刑したのだろうか?「とにかく、何とか手を打って宰相に勝負を取り消すように言わなければ……」イライラした様子で爪を噛むアルベルト。「その必要はありません」「いい加減にしてくれ! 俺はお前のことが心配でたまらないんだ! そのことが分からないのか!?」「アルベルト様……」アルベルトは本当に私のことを心配しているのかもしれない。けれど、私の脳裏に断頭台に立たされた私を冷たい瞳で見つめていたアルベルトの姿が今も焼き付いて離れないのだ。彼を見る度に、その時の光景が鮮明に蘇ってくる。カチュアの肩を抱き、私に処刑執行を命じたアルベルトの言葉が……。「どうした? クラウディア。顔色が悪いぞ、やはり勝負のことが不安なのだろう? 大丈夫だ……何としても俺が宰相を説得して勝負の取り下げを命じよう」アルベルトが私の両肩に手を置いた。「待って下さい、そのようなことをすればアルベルト様の立場だって悪くなってしまいますよ? 敗戦国から来た王女の肩を持つ国王だと触れ回る者が出てくるかもしれません」「クラウディア……」「ましてやアルベルト様は王位を継いだばかりなのですよ? 人々の信頼を得無ければならない大事な時期なのですから。それに全く勝てる見込みが無いのなら、私だってわざわざ勝負に乗りません」「その話は本当なのか?」信じられないとばかりにアルベルトは首を傾げた。「はい。ではアルベルト様。そこまで私の身を案じて下さるのならお願いがあります」「どんな願いだ?」「はい。誰にも知られることのない……私
last updateLast Updated : 2026-02-16
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第2章 105 決意

 あの後、アルベルトはまだ仕事が残っているということで部屋を出て行った。再び、1人になった部屋で私は祖母が残した日記帳を読んでいた。「やっぱり移動魔法のような錬金術は見つからないわね……」ため息をついて日記帳を閉じた時に、視線を落とすと自分の指にはめた指輪が目についた。「そうだわ。この石は【賢者の石】。何故アルベルトがこの石を持っているかは分からなけれど、ここの王宮図書館なら錬金術の本があるかもしれないわ」時計を見ると、時刻はそろそろ正午になろうとしている。今から図書館に行っても良いが、もしかするとアルベルトから食事の誘いがあるかもしれない。「図書館はお昼を食べてからの方がいいかもしれないわね……」ポツリと呟いた時、扉のノック音と共に声が聞こえた。――コンコン『クラウディア様。いらっしゃいますか?』それはリーシャの声だった――****「リーシャ。数日ぶりね?」昼食を運んできたリーシャに声をかけた。「はい、クラウディア様。中々伺えずに申し訳ございませんでした。ここ最近はメイド教育を受けていたものですから」テーブルに食事を並べながらリーシャが申し訳なさそうに答える。「いいのよ。それ位のことは分かっているから。それでどう? ここでの仕事は少しは慣れたのかしら?」「はい。大分慣れてきました。冷めないうちにどうぞ、クラウディア様」「ありがとう」テーブルの上を見ると並べられた料理はスフレ風パンケーキだった。カットされたフルーツが飾り付けられ、パンケーキの上には生クリームがたっぷりかかっている。まるでスイーツのような食事に私は目を見開いた。前世の私はパンケーキが大好きだった。子供たちが小さかった頃は良くおやつにパンケーキを焼き、自分も一緒になって食べた記憶が蘇る。「まさか……ここでも食べられるなんて……」回帰前はこんなスイーツを食べたことは一度も無かっただけに驚きと喜びがあった。  「何か仰いしましたか? クラウディア様」「ううん。とても美味しそうだと思って」 「ええ、そうですよね? これは『グリルケーキ』と言う甘いデザート料理です。ここ『エデル』では有名らしいですね」リーシャが嬉しそうに教えてくれる。 「そうだったの?」それではカチュアも食べたことがあるのだろか?回帰前はアルベルトの寵愛を受け、今は宰相の完全庇
last updateLast Updated : 2026-02-17
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第2章 106 責める騎士に微笑む私

 昼食後、図書館へ行く準備をしていると部屋の扉がノックされた。――コンコン『クラウディア様、いらっしゃいますか?』扉越しに聞こえて来たのはハインリヒの声だった。「え? ハインリヒ?」一体私に何の用があるのだろう? 訝し気に思いながら扉へ向かった。「どうしたの?」扉を開けると彼は一瞬驚いた様に目を見開いた。「まさかクラウディア様自らが扉を開けられるとは思いませんでした。お1人だったのですか? 侍女やメイドはついていないのですか?」「ええ。彼女たちは仕事が忙しいだろうから私に構わず自分達の仕事をするように伝えてあるのよ」「そうですか。まぁ確かに侍女が1人に専属メイドが2人では数が少ないかもしれませんね。それなのに、あの女は何人もメイドをつけて……」ハインリヒの口調はどこか苛ついているようにみえる。「いいのよ、彼女はこの国の『聖なる巫女』なのだから」「本当にそう思われているのですか?」私の言葉に訝し気な眼差しを向けて来るハインリヒ。「え? ええ。そうよ」「ですが、クラウディア様は宰相達に喧嘩を売ったと噂が流れていますよ?」その言葉に思わずため息がもれてしまう。「私は別に喧嘩を売ったつもりはないわ」「ですが、現に城中の者達が口々にそう話しております。何故貴女は陛下を困らせるようなことをされるのですか?」ハインリヒは明らかに私を非難してきた。「宰相達が大げさに触れ回っているのじゃないかしら? 何しろ、圧倒的にこの城の中で信頼を得ているのはカチュアさんの方なのだから」「でしたら尚更、軽はずみな行動は取らないでいただきたいものです」彼の態度はあくまでも強固だ。「……分かったわ。今後はなるべく気を付けるようにするわ。そのことを伝えに来たのね?」今の彼には何を言っても無駄だろう。しかし、彼の口から出た言葉は意外なものだった。「いえ、違います。私はクラウディア様の専属護衛騎士ですから参りました」「そうだったのね?」「ええ。それに先ほどの話の件ですが、あれは私にも責任がありますからね。クラウディア様の置かれている状況を考えれば、いかなる時も側にいなければなりませんでした。その事については、大変申し訳ございませんでした。」まさか、謝ってくるとは思いもしなかった。ひょっとすると、アルベルトに注意されたのだろうか?「別に謝らなくても
last updateLast Updated : 2026-02-18
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第2章 107 落胆

「クラウディア様。まさか貴女は宰相との勝負に勝てるとでも思っていらっしゃるのですか?」ハインリヒは信じられないと言わんばかりに目を見開いて私を見つめる。「そうね。実際に勝負をしてみなければ分からないけれど……カチュアさんにも出来ることなら、私にだって可能かもしれないでしょう?」「本気ですか? 相手は宰相ですよ? 恐らくあの女と事前に打ち合わせをしたうえで、クラウディア様に勝負を挑んでくるに決まっています」「だからこそ尚更私がその勝負に勝てば2人の鼻を明かすことが出来るし、この国での私の評価も上がるのでは無いかしら? これはアルベルト様の為にもなると思わない?」「本当に貴女は呆れた方ですね。もう御自身で決められたことなのですから仕方ありませんが……これ以上陛下の足を引っ張らないようにして下さい」「ええ、分かっているわ」ハインリヒは一度だけ眉をしかめると、再び歩き出した。そしてその後ろを歩く私。彼の背中を見つめながら――****「図書館に到着いたしました。ここはいくら宰相や『聖なる巫女』とはいえ、王族しか入室出来ないのでゆっくりするには良い場所でしょう」そうか……確かにハインリヒの言う通り、宰相もカチュアも中に入ることが出来ないのなら、私にとってはお誂え向きの場所かもしれない。「ええ。そうね。今度からそうさせてもらうわ。気付かせてくれてありがとう」「では、私は図書館の前で待っております」ハインリヒの言葉に私は首を振った。「いいえ、そこまでしてもらわなくても大丈夫よ」「ですが、私はクラウディア様の専属護衛騎士でありますから」 「それは分かっているわ。けれど貴方がここに立っていれば万一宰相達が現れた時に私が図書館にいることがバレてしまうでしょう?」「成程……確かにその通りですね」納得したかのように頷くハインリヒ。「だから待っていなくてもいいわ。そうね……2時間後に迎えに来て貰えれば大丈夫よ」「はい、ではそのようにさせて頂きます」ハインリヒは返事をすると、そのまま踵を返して去って行った。彼の背中を見届けると、扉に向き直りノックをした――****「クラウディア様、またいらしてくださったのですね?」扉を開けてくれたのは司書のジョゼフだった。「ええ。どうしても探したい本があったから」「はい、どのような本をご所望ですか?」
last updateLast Updated : 2026-02-19
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第2章 108 突然の訪問者

 とりあえず、魔術に関する書棚を一通り見て回ることにした。しかし、どの書棚にも錬金術に関する本は何処にも無かった。「こんなに魔術に関する本はあるのに、錬金術の本が一冊も無いなんて……」ここは『エデル』の王宮図書館。この国で1番大きな図書館であるはずなのに置いていないとなると……。「ひょっとして、この国では錬金術は禁忌の術なのかしら? それであえて意図的に隠してある……?」けれど、いくら考えても答えが出ない。やはりここはアルベルトに尋ねるべきなのだろうが……。「でも駄目だわ。私はまだ彼を信用しきれない……。それにいつカチュアに心を奪われるか分からない状況で自分の秘密を明かすわけにはいかないもの……」一瞬浮かんだ愚かな考えを払拭する為に首を振ると、無駄とは思いつ再び私は本を探し始めた――****  2時間後―― 「どうでしたか? お目当ての本は見つかりましたか?」図書館を出ると、私を迎えに来たハインリヒがすぐに尋ねてきた。「ええ。そうね。良い時間を過ごせたわ」歩きながら返事をする。結局錬金術に関する記述本が見当たることはなかった。けれど図書館にいれば宰相にもカチュアにも会うことはない。あの2人に極力会わないようにするには、もってこいの場所だった。「陛下から伝言を承っております」前を歩くハインリヒがこちらを振り向きもせずに言う。「何かしら?」「今夜も一緒に食事を取ろうと言うことでした」今夜もアルベルトと食事なんて……。「分かったわ」憂鬱な気持ちで返事をした。****  19時―― 私はアルベルトと2人でダイニングルームで向かい合わせに座っていた。給仕のフットマンがテーブルの上に置かれたグラスにワインを注ぐ様子を見つめながらアルベルトが尋ねてきた。「ハインリヒから聞いたが、今日も図書館に行ったそうだな?」「はい」どうやら私の行動は全てアルベルトに筒抜けのようだ。回帰前は私に関心すら寄せなかったのに。「それでどんな本を探していたんだ?」「いえ、特には……ただ、図書館にいれば宰相やカチュアさんに会うことも無いだろうと思っただけですから」「ふむ……そうか。確かに王宮図書館は、いくら宰相と言えど立入禁止にしてあるからな。あそこには禁呪の本も置いてあるし……」アルベルトが意味深な台詞を口にした。「禁呪……ですか
last updateLast Updated : 2026-02-20
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第2章 109 不敵な笑み

「全く失礼な男だ。こちらは食事中だというのを分かっていながら訪ねてくるとは……どうする、クラウディア。追い払うか?」アルベルトはとんでもないことを問いかけてきた。「いいえ、そんな追い払う等と……。仮にも宰相である方なのですから、中に入れて差し上げるべきだと思います。それに、リシュリー宰相は私のことでいらしたのですよね?」「分かった。お前がそう言うなら仕方あるまい。宰相を中に入れてくれ」「承知いたしました」フットマンはすぐに扉へ向かうと一言二言、言葉を交わし……やがて宰相が部屋の中に現れた。「陛下にお目通り願います……おや? クラウディア様も御一緒でいらっしゃいましたか? 本当にお二人は仲がよろしいようですな?」リシュリーはわざとらしい言葉を口にする。「ああ、そうだ。見ての通りクラウディアと食事中だ。だから要件なら手短に話してくれ」「さようでございますか。ですが陛下。お二人だけで食事をするのではなく、時にはカチュア殿を交えて食事をされてはいかがです?」「何故、お前にそのようなことを言われなければならない?」宰相の口からカチュアの話が出てきたのが余程気に入らないのか、アルベルトは彼を睨みつけた。「僭越ながら、陛下はあまりにも『聖なる巫女』を軽視されているように感じられます。彼女はこの国の宝なのですぞ?『エデル』が強国であるのは、神殿の力添えがあることをお忘れではありませんか? 毎年世界中からどれほどの人々が聖地を訪ねてくるのか、お分かりですよね?」「俺はまだあの女を『聖なる巫女』だと認めた覚えはない。大体あの女を連れてきたのはリシュリー、お前だろう? お前が相手をすれば十分ではないか」イライラした口調でアルベルトは宰相に言い返す。「陛下! 何という罰当たりな……この国に天罰が下ってよろしいのですか!?」「その話はもういい! それよりも宰相! 早く要件を述べよ! クラウディアのことで話があって、わざわざこの時間を狙ってやって来たのだろう!?」「いえ、別に意図していたわけではありませんが……でもクラウディア様がいらっしゃるのは好都合です。実はカチュア殿とクラウディア様の勝負の内容が決定したのでご報告に参ったのですよ」宰相はチラリと私に目をやる。「リシュリー! お前……本気であの女とクラウディアを勝負させようとするのか!?」声を荒げる
last updateLast Updated : 2026-02-21
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第2章 110 宰相からの挑戦状

「1度だけの勝負ではクラウディア様に分が悪いでしょうからな……チャンスを2回差し上げようかと思い、2種類の勝負を御用意させていただきました」妙にもったいぶった言い方をする宰相。「そうですか、それはお気遣いありがとうございます」「まず1つ目ですが、この国には聖地と呼ばれる場所があるのはご存知ですかな?」「ええ。勿論知っております。その聖地に神殿があるのですから」「その聖地の奥地には『聖木』と呼ばれる巨木があります。そしてこの巨木には神聖力がある者には黄金の果実を生らせてくれるのです。そこで『聖木』を探し出し、黄金の果実を無事に持ってくることが一つ目の勝負となります」「黄金の果実……ですか」「ええ。この黄金の果実を口にすれば、どのような病もたちどころに治ると言われるまさに神の果実です」得意げに語る宰相の言葉に、アルベルトが表情を険しくして反論した。「宰相! あの巨木は神聖力が尽きて、枯れてしまっているはずだぞ! それなのに黄金の果実を持ってくることなど無理に決まっているだろう!」「ええ、勿論陛下の仰る通りですが……。神聖力をお持ちであれば、例え神木が枯れ果てていようとも果実を生らせることくらい出来るのではありませんか? 現に今から300年程前、この国に召喚されてきた聖女・セシリアは黄金の果実を手にしたのですよ? どうですクラウディア様。この勝負……受けますか?もし、どうしても無理だと言うなら我々に謝罪をすれば考え直してあげないこともありませんよ?」そしてリシュリーは挑発的な目で私を見る。「馬鹿げている! そのように本当にあるかどうかも分からない黄金の果実を取ってこさせるなどあり得ない話だ! しかも謝罪をすれば考え直すだと!? クラウディア、勝負をすることも謝罪する必要も無いからな?」アルベルトが必死で止めに入ってきた。けれど私にはそんな気は更々ない。「はい、分かりました。その勝負、謹んでお受けしましょう」「クラウディア! 本気で言っているのか!?」私の言葉にアルベルトが青ざめる。「ほう……。まさか本当に受けるとは思いませんでした。いや、これには流石に驚きました。随分とクラウディア様は自信がおありのようだ」一方で宰相の方は、自ら勝負の内容を決めたにも関わらず驚きの表情を浮かべている。恐らく私が勝負を諦め、謝罪をするとでも思っていたの
last updateLast Updated : 2026-02-22
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第2章 111 私からの要求

「クラウディア様。本当に勝負を受けるつもりなのですな? 今ならまだ考え直すことが出来ますぞ?『聖なる巫女』であるカチュア殿に謝罪すればですが……」宰相は明らかに動揺している。まさか私が本当に勝負を受けると考えてもいなかったのだろう。「いいえ、勝負をやめるつもりも謝罪するつもりもありません。逆に私が勝った場合、私の侍女とメイド達に謝罪を要求します。ついでに私をここまで連れてきてくれたユダ達にも謝罪して下さい」今までの私は、この国で見下されても自分1人が我慢すれば良いことだと考えていた。何しろ回帰前は私の味方はリーシャただ1人きりだったから。けれど今は違う。 リーシャだけでなく、マヌエラ、エバがいる。それにトマスにザカリー。そして『エデル』の兵士でありながらユダも私の味方でいてくれる。私のせいで、彼らまで見下されるようなことはあってはいけない。「な、何と身の程知らずのことを言うお方だ。自分の立場も弁えず……」「立場を弁えないのは、むしろ宰相! お前の方だ!」突然アルベルトが宰相を叱責した。「陛下、お言葉ですが……まだクラウディア様とは婚姻されておりません。今はこの方は我が国の敗戦国の人質に過ぎないのですよ?」「黙れ! 口を慎め!」その言葉に宰相の眉が険しくなる。「陛下……お忘れのようですが、私は先代の頃よりこの国の宰相を務めております。それだけではなく、神殿にも通じているのですよ? その辺りをもう少し冷静に考えるべきだと思います」リシュリーは怒りを抑えているつもりだろうが、顔は赤くなっている。「そうか。一応忠告として受け止めておこう」私は2人のやり取りが未だに信じられなかった。以前のアルベルトは宰相の言いなりになっていたのに……。やはりあのときのアルベルトは操られていたのだろうか?次に宰相は再び私に視線を移した。「しかし……陛下がそれほどまで言うのであれば良いでしょう。もし万一この勝負でクラウディア様が勝つことが出来れば、カチュア殿と一緒に謝罪致しましょう。侍女とメイド……監獄に入れた者達に」「ええ、お願いします」「では、早いほうが良いですな。それでは1回目目の黄金の果実を持ってくる勝負は2日後の午前10時に行いましょう。いかがですかな?」「何!? たった2日後だと!? 幾ら何でも唐突すぎるだろう!?」宰相の提案にアルベ
last updateLast Updated : 2026-02-23
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第2章 112 アルベルトの説得

 扉が閉ざされ、ダイニングルームは静けさを取り戻した。「クラウディア……」 食卓テーブルの上のキャンドルに照らされたアルベルトの顔には疲れが宿っているように見える。「はい、アルベルト様」返事をすると、アルベルトは深いため息をついた。「何故……毎回毎回、俺に何の相談もせずに勝手に話を進めるんだ?」「それは私の問題に巻き込みたくはなかったからです。アルベルト様はこの国の国王で、お忙しいお方ですから」「確かに俺はまだ即位したばかりで、戴冠式も終わってはないが国王に違いはない。だが、その前にお前を心配する1人の男だということも忘れるな」「!」その言葉に驚き、思わずアルベルトの顔を見つめる。「頼むから俺をもっと頼ってくれ。お前が俺を信用できない気持ちは良く分かるが……」「アルベルト様?」何故、アルベルトはそんな風に思うのだろう。「クラウディア、あんな無謀な勝負に挑むということは、それなりの自信は勿論あるのだろう?」「はい、あります。ですが……」「理由は明かせない……と言いたいのだろう?」「申し訳ございません」「分かった……。それなら別の質問をする。明後日の勝負だが、誰に馬に乗せてもらうつもりだ」「ユダにお願いしたいと思います」「な、何だと!? またユダか!?」アルベルトが焦った様子で問いかけてくる。「はい、そうですが……?」何しろ、今度の勝負で私は錬金術を使うつもりなのだ。私の秘密を知っているユダにお願いするのが1番だろう。それに彼は何より兵士なのだから。「理由は何だ?」アルベルトが妙に食いついてくる。「はい。彼は私を『エデル』まで連れてきてくれた信頼できる仲間ですから」「また、仲間か……いや、それよりもだ。何故この俺に頼もうとは思わないのだ?」「ええ!?」あまりの言葉に流石に驚いてしまった。「そんな、頼むことなど出来るはずありません。アルベルト様は国王ですよ? それにこれは私とカチュアさん……いえ、宰相との勝負です。もしここでアルベルト様が私に力を貸そうものなら、おおごとになってしまいます! 宰相とますます対立することになってしまいますよ? それに周りも反対すると思います」「反対されたって構うものか。何しろお前はいずれ俺の妻になるのだからな。戴冠式が終わり次第、式を挙げようかと考えているところだったし」「え? 
last updateLast Updated : 2026-02-26
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第2章 113 夜の庭園の誘い

 宰相が現れたことにより、食事が中断されてしまったことで食欲も無くなってしまった。先に食事を終えたアルベルトは私が食べ終わるのを待っているのか、ワインを飲んでいる。そこで彼に声をかけることにした。「アルベルト様」「どうした?」「あの、今夜はあまり食欲が湧きませんので、これで終わりにしたいのですが……」「そうなのか? まだ半分も食べ終えていないじゃないか。でもまぁ……あれでは食欲が失せても仕方ないな」苦笑するアルベルト。「ええ、そうですね」「なら、気分転換に散歩にでも行かないか? 夜の庭園を散歩したことがあるか?」「いいえ。ありません」アルベルトの提案に驚きながら返事をした。正直に言うと回帰前、アルベルトの後をつける為に夜の庭園に行ったことがある。勿論、回帰後は一度も行ったことは無いけれども。「そうか。夜の庭園は陽の光で見るのとではまた一味違う。ランタンで照らされた庭はとても美しい。一緒に行こう」「え? わ、私と……ですか?」未だに信じられず、問いかけた。「当たり前だ。ここには俺とお前しかいない。他に誰を誘うと言うのだ?」ムッとした顔で私を見るアルベルト。「そうですよね、申し訳ございません」「よし、それでは早速行こう」「はい」そして私達は席を立った。****ダイニングルームを出ると、廊下にはハインリヒが待機していた。「ご苦労。ハインリヒ」アルベルトがハインリヒに声をかける。「いえ、これも私の役目ですから。それではクラウディア様、お部屋に戻りましょう」すると私が返事をする前にアルベルトが口を開いた。「いや、これから2人で夜の庭園に散歩をしに行くところだ」「そうなのですか?」意外そうにハインリヒが首を傾げる。「ああ、今日は食事中に不愉快な訪問者がいたからな。気分転換だ」「成程……承知いたしました。それでは私も御一緒に……」「いや。お前は来なくていい」「「え?」」私とハインリヒが同時に声を上げる。「何だ? 2人とも。今のはどういう意味だ?」アルベルトが私とハインリヒを交互に見る。「いえ、いくら城内と言えど……今は夜ですし、護衛がいるのではないかと思ったからです」ハインリヒが珍しく焦った様子で答える。「そうか? クラウディアはどうなのだ?」「はい、私も……彼と同じ考えでしたけど……?」「そ
last updateLast Updated : 2026-02-28
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