光の祠が開いた瞬間、世界はまるで大きく息を吸ったように揺れた。空間そのものが震え、白い霧のような光が足元から天へと上がっていく。「ここが……“世界心臓(ワールドコア)”?」 私は思わず息を呑んだ。そこは祠でも神殿でもなく――ただひたすら、広かった。天も地も見えず、淡い光が雲のように流れるだけの空間。けれど中心には確かに“何か”があった。脈動だ。空間そのものが、ゆるりと脈を打っている。まるで巨大な心臓に包まれているような感覚。足元から伝わる鼓動が、胸と同じ速度で震えている気がしてくる。「……これはすごいな。」 カイラムが剣を鞘に収めたまま、慎重に歩を進める。 「世界が丸ごと生きてるみたいだ。」「生きてますよ。ここは世界の“核”ですからね。」 ユスティアが記録板を見ながら言った。 「地脈、風脈、雷脈、氷脈……全ての魔力が一点で交わっています。」「つまり、世界中の魔力がここを通ってるってことか?」 レーンが辺りを見渡す。リビアが静かに頷く。 「ここは“世界を作った時の名残”だ。神性が渦巻く場所――本来、我らのような下位存在が足を踏み入れるところではない。」「でも入れちゃった。」「それは主殿が“招かれた”からだ。」招かれた――つまり、神様が私たちにここまで来いと言った、ということだ。光の祠で会った少女――神様は言っていた。“五つの核をひとつに繋げば、世界は続く”と。その“核”が今、光の向こうで脈動している。「エリシア。」 カイラムが私の名を呼ぶ。 「お前が中心に立て。これはお前が始めたことだ。」「うん。」私は風晶を胸に抱え、一歩、また一歩と中心へ進んだ。光が集まってくる。四属性の輝き――蒼、白、金、緑――そして中央に浮かぶ“白の欠片(ひかり)”。全てが触れあった瞬間――――世界心臓が、目を開いた。「っ……!」風が、一気に吹き抜けた。 雷が低く唸り、地が震え、氷の気配が頬を撫でる。世界中の祠から魔力が逆流してくるのがわかった。「これは……!!」 ユスティアが記録板を必死に押さえる。 「祠の魔力が、全部ここに集まっています! でも量が……桁外れです!」「耐えられねぇぞ、こんなの!」カイラムが叫ぶ。だが、崩れかけた魔力の奔流の中――“光の欠片”だけが静かに私の手の中へ降りてきた。『――大丈夫。全部、あなたが選んだ世界だよ。
最終更新日 : 2025-11-16 続きを読む