逆ハーレム建国宣言! ~恋したいから国を作りました~ のすべてのチャプター: チャプター 141 - チャプター 150

167 チャプター

第141話:世界心臓(ワールドコア)と、五つの意志

光の祠が開いた瞬間、世界はまるで大きく息を吸ったように揺れた。空間そのものが震え、白い霧のような光が足元から天へと上がっていく。「ここが……“世界心臓(ワールドコア)”?」 私は思わず息を呑んだ。そこは祠でも神殿でもなく――ただひたすら、広かった。天も地も見えず、淡い光が雲のように流れるだけの空間。けれど中心には確かに“何か”があった。脈動だ。空間そのものが、ゆるりと脈を打っている。まるで巨大な心臓に包まれているような感覚。足元から伝わる鼓動が、胸と同じ速度で震えている気がしてくる。「……これはすごいな。」 カイラムが剣を鞘に収めたまま、慎重に歩を進める。 「世界が丸ごと生きてるみたいだ。」「生きてますよ。ここは世界の“核”ですからね。」 ユスティアが記録板を見ながら言った。 「地脈、風脈、雷脈、氷脈……全ての魔力が一点で交わっています。」「つまり、世界中の魔力がここを通ってるってことか?」 レーンが辺りを見渡す。リビアが静かに頷く。 「ここは“世界を作った時の名残”だ。神性が渦巻く場所――本来、我らのような下位存在が足を踏み入れるところではない。」「でも入れちゃった。」「それは主殿が“招かれた”からだ。」招かれた――つまり、神様が私たちにここまで来いと言った、ということだ。光の祠で会った少女――神様は言っていた。“五つの核をひとつに繋げば、世界は続く”と。その“核”が今、光の向こうで脈動している。「エリシア。」 カイラムが私の名を呼ぶ。 「お前が中心に立て。これはお前が始めたことだ。」「うん。」私は風晶を胸に抱え、一歩、また一歩と中心へ進んだ。光が集まってくる。四属性の輝き――蒼、白、金、緑――そして中央に浮かぶ“白の欠片(ひかり)”。全てが触れあった瞬間――――世界心臓が、目を開いた。「っ……!」風が、一気に吹き抜けた。 雷が低く唸り、地が震え、氷の気配が頬を撫でる。世界中の祠から魔力が逆流してくるのがわかった。「これは……!!」 ユスティアが記録板を必死に押さえる。 「祠の魔力が、全部ここに集まっています! でも量が……桁外れです!」「耐えられねぇぞ、こんなの!」カイラムが叫ぶ。だが、崩れかけた魔力の奔流の中――“光の欠片”だけが静かに私の手の中へ降りてきた。『――大丈夫。全部、あなたが選んだ世界だよ。
last update最終更新日 : 2025-11-16
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第142話:帰還と、揺れるグランフォード

世界心臓から戻った瞬間、空気の重みが変わった。足元には柔らかな土、肌を撫でるのはいつもの風。白い光に包まれていた世界の反動のせいか、景色が妙に懐かしく、そして少しだけ心細く感じた。「……帰ってきた。」 私が呟くと、カイラムが肩越しに言う。 「当然だ。世界が安定したんだ。戻る場所が消えるはずがない。」ユスティアは杖を握り直し、深く息をついた。 「でも……この空気。何か、嫌な予感がします。」レーンは素手で地面に触れ、小さく眉を寄せる。 「地脈が……揺れてる。整いきっていないのか?」リビアが羽を震わせた。 「いや、違う。これは“外部”の揺らぎだ。」「外部?」 私が聞くと、リビアは空を見上げた。「グランフォードで、何かが起きている。」胸がぎゅっと掴まれたように痛んだ。「……急いで帰ろう!」◆◆◆全員で足早に森を抜け、丘を越えた先――遠くに見える我が国グランフォード。 家々の煙、賑わう市場の声……はずなのに。静かすぎた。レオニスが険しい顔で言う。 「警備の姿が見えない。」「門が……開きっぱなしです。」ユスティアが呟く。嫌な汗が背中を伝った。 走る。とにかく走った。門へ駆けつけた瞬間、私は叫んだ。「な……何これ……!」門の外、荷馬車が横転。地面には倒れた木箱、散乱した食材。そして――魔力の残滓。レーンが急いで地面の痕跡を読む。 「戦闘の跡がある……でも相手の気配が薄い。まるで“跡を消しながら進んだ”みたいだ。」「誰が侵入したか、わかる?」レーンはしばらく沈黙し、顔を上げた。「……見たことのない魔力。けど一つだけ言える。」「な、何?」「“黒い契約(ダークパクト)”を使ってる。」全員の顔が強張った。「黒い契約……まさか、まだ残党が?」リビアが低く唸る。 「違う。これは“新しい契約者”だ。以前とは質が違う。」「新しい……ってことは、誰かがまた――」そのとき、町の奥から声が響いた。「エリシア様ぁぁぁーーっ!!!」見慣れた大柄の男が、泣きながら全力で走ってきた。「お父様!?!?!?」父は私に飛びつき、腕を掴んだ。「よかった……! 無事でよかったぁぁ……!」「どうしたの!? 何があったの!?」父は肩で息をしながら答えた。「黒いローブの集団が突然現れて……国の“祠の護り”を奪っていったんだ!」「護り……って、まさ
last update最終更新日 : 2025-11-17
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第143話:影王胎動と、守るべきもの

影継の谷の奥へ進むにつれ、空気がさらに重たくなった。光は吸い込まれ、声すらひそめたくなるような圧迫感。けれど私たちは止まらなかった。止まったら、きっと取り返しがつかなくなるから。「影の反応が強くなっています……!」 ユスティアの手元で記録板が震える。「中心はこの先だな。」カイラムが剣を構えた。影道を抜けると、半球状の巨大なホールに出た。天井は見えず、無数の影が渦を巻いている。その中心――黒い祭壇。そこに、黒契約者のローブ姿が立っていた。手の中の“祝福の欠片”はすでに半分が黒く染まり、空気に触れるたびに低い唸りを上げている。「間に合ってよかったよ、勇者の末裔。」 影は口角をゆがめた。「やめて! 本当に危ないんだから!」「危ない? 違うさ。これこそが“正しい影”だ。光と影は共にあって完全となる。ならば影が光を呑み込むことも、ひとつの完成だろう?」レーンが怒鳴る。 「ふざけんなよ! それで世界が壊れかけたんだろうが!」影は肩をすくめた。 「世界など、壊れてもまた作ればいい。だが“闇の王”は違う。あのお方を完全に復活させれば……我らは本当の姿を取り戻せる。」リビアが厳しく目を細めた。 「闇の王……影継の民が封じた存在か。」「封じた? 違う。奪われたのだ。“光の王”によってな。」胸がざわりと揺れた。光の王。神様が最後に残した言葉。世界の始まりに関わった“存在”。影は続ける。 「勇者の末裔よ。お前の魂に宿る光、その純度こそが最後の鍵だ。さぁ――祭壇へ来い。」「行くわけないでしょ!!」影が指を鳴らす。次の瞬間、祭壇の裏から巨大な影の獣が浮かび上がった。狼のようで、蛇のようで、翼を持つ異形。影が肉体めいた形になっている。「よけろ、エリシア!!」 カイラムが私を抱き寄せ、影の牙を雷の軌跡で弾き飛ばす。レーンが拳で地を叩く。 「ユスティア! あいつの影の流れを読む!」「はいっ!」 ユスティアは素早く記録板を操作し、影獣の動きを解析する。リビアは羽根を震わせ、広範囲の光障壁を展開した。 「主殿! あの獣は“影核”を破壊すれば散る! 影核を探せ!」私は息を呑む。「影核……どこ!?」「エリシア、感じてみろ。」カイラムが私の手を握った。 「お前は光を選ぶ力を持っている。影との違いに気づけるはずだ。」私は目を閉じ、影の渦を見つめる。真っ黒
last update最終更新日 : 2025-11-19
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第144話:帰還と、揺らぐ静寂

影継の谷が静かに崩れていく。光が差し込み、影の濃度が薄れていくその様は、まるで永い夜がようやく明けていくようだった。「出口が安定しているうちに戻るぞ!」 カイラムの声が響く。私たちは黒契約者を拘束したまま、影道を急いで戻った。足元の影はもう生き物のように蠢かず、ただの薄暗い通路に近づいている。リビアが羽根を震わせながら言う。 「主殿、影の侵食は受けていないか?」「うん、大丈夫。ほら。」 胸に抱いた“光の欠片”は、まるで心臓のようにふわりと脈動していた。ユスティアが安堵の息をつく。 「光の核が完全に正常値です。影化を完全に止めました。」「さすがエリシア様……!」レーンがニカッと笑う。 「いや、本気でどうなるかと思ったけどな!」「正直、私も……」 私は苦笑しつつ、胸の光をそっと撫でる。 「あの神様の声がしたの。だから怖くなかった。」出入口の黒い鏡面が見えてくる。その向こうは、いつもの空と風。「帰ろう。みんなが待ってる。」私たちが井戸から地上へ出た瞬間――「エリシア様ーーー!!!」涙声が飛んできた。走ってきたのはメイド長、そして私の母。「もう! もう心配したのよ!! 戻らないなんて言うから……!」「お母様、ただいま……!」ぎゅうっと抱きしめられる。影の重さが一気に抜けて、私は思わず涙をこぼした。父はと言えば――「無事ならよしっ!! 腰は無事!! 腰は船底、抜いたら沈む!!」と、意味不明なテンションで飛び跳ねていた。……腰、大丈夫そうでよかった。落ち着く暇もなく、町の人たちが次々に駆け寄ってくる。「エリシア様ーっ!」 「みんな帰ってきたんだな……!」 「魔物は!? 敵は!?」カイラムが一歩前へ出て、落ち着いた声で告げた。「脅威は去った。黒契約者は確保した。」その言葉に、周囲がどっと安堵の息をつく。……でも、気になることがあった。黒契約者は捕まってなお、ただ静かに俯いている。負けたと落ち込んでいるというより、何かを待っているような……そんな気配。ユスティアが私に耳打ちする。 「エリシア様。あれは……単なる狂信者ではありません。背後がいます。」「うん、私もそう思う。」“影王”“光の王”そして新たに姿を見せた“黒契約者の組織”世界心臓を救っても、まだ終わりじゃないんだ。その時だった。黒契約者が顔を上げ
last update最終更新日 : 2025-11-20
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第145話:光背の王と、揺れる天頂

――風が、変わった。天頂の塔が近づくにつれ、空気の密度が変化していくのが肌で分かる。 風はまるで何かの呼吸のように脈打ち、遠く空で光が蠢いていた。「エリシア様、ここから先は空間そのものが不安定になります。魔力の制御に注意を」「分かった、ありがとうユスティア」ユスティアの助言を受け、私は足元に魔力を通して安定を図る。 レーンは早速、空気中に散らばる光の粒子に手を伸ばして、ぱくっと食べた。「……甘っ! これ、光の味か?!」「食べないで!」リビアが羽根をばさっと広げて叱ると、レーンは反省もなく笑っていた。「……でも、すごいな。空がこんなに重く感じるなんて」カイラムが眉をひそめる。塔が近づくにつれて、空間がひずみ、光が折れ曲がって見える。塔のふもとには、誰もいないはずのはずだった。 けれどそこには――「……待ち構えてる。あれは」ユスティアが指さした先に、白い装束をまとった者たちが立っていた。 その姿は光を纏うようで、どこか神聖に見えるけれど、どこか違和感もある。「光の神官……?」「いいえ、あれは……“光背の徒”」リビアの声が低くなる。「光の王に仕える、最古の信徒たちです。封印の管理者にして、目覚めを迎える使徒――」「つまり敵ってことね?」「そうなる可能性が高い、主殿」塔の前、道を塞ぐように並んだ彼らの中心に、一人だけ異質な存在がいた。 他の者が白銀の装束なのに対し、その人物は黄金に輝くローブをまとっている。 そして、その瞳――「……なんか、知ってる気がする……」私がそう呟いた時、その人物がゆっくりと手を伸ばした。「……エリシア様、下がって!」ユスティアの叫びと同時に、空気が爆ぜる。 光が弾け、音もなく衝撃が走った。 一瞬、何が起きたのか分からず、気づけば私たちは全員、塔の前の大地に膝をついていた。「……これが、光の洗礼……」リビアが苦しげに言う。「まだ、ただの揺らぎだっていうのに……っ!」「まずい、早く中へ!」カイラムが叫び、私たちは塔の内部へと駆け込む。中は、まるで別世界だった。 重力が反転したかのような空間に、浮遊する階段、逆さまに流れる水流、音のない鐘の音。 そこは、理の外にある空間――神が眠る場所。「本当に、ここに……光の王が?」私の問いに、ユスティアが小さくうなずいた。「……エリシア様。今から始まる
last update最終更新日 : 2025-11-23
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第146話:神の器と、空白の伝承

第二層へ踏み込んだ瞬間――空気が変わった。「……音が、ない?」まるで世界の音を全て奪われたような静寂。 足音すら、空気に吸い込まれていく。「ここ……“記録の間”ですわ」 ユスティアが、手に持った書を胸に抱く。 その声さえ、囁きにも満たない。空間には、無数の“光の書物”が浮かんでいた。 どれも文字ではなく、光の粒の流れで情報を表しているらしい。「何これ……すごい」 「すごくはあるが、嫌な予感しかしない」 カイラムが眉を寄せる。塔の中心部、まるで王座のような場所に大きな書が一冊だけ鎮座していた。「……あれだ。あの書が第二層の核」 ユスティアが小さく頷く。しかし、そこに近づこうとした瞬間――ぱん、と空間が弾けた。光の本棚が揺れ、文字のような粒子が周囲に飛び散る。 そして、中心の書から“声”が落ちてきた。『――汝、記録に触れる資格なし』「何、それ……?」すると、天井から光の糸が垂れ、絡まり、形を作った。それは“巨大な羽根のようなもの”だった。 だが天使のような優雅さではなく、鋭く研ぎ澄まされた刃そのもの。「試練か……!」レーンが剣を構えた瞬間、光の羽根が音もなく振り下ろされ――「っ速い!」私たちは散開した。 音がないせいで、風切り音さえ予兆にならない。「ユスティア!弱点は!?」「この層の守護者……“記録そのもの”です! つまり、攻撃の核は――中心の書!」「なるほど、じゃあぶん殴れば――」 「主殿、言い方!」レーンが飛び出そうとした瞬間、光の羽が槍のように伸びて襲いかかる。ガギィン!!カイラムの影壁が間一髪で受け止めたが、衝撃で後ろに弾き飛ばされる。「くっ……影壁が、焼かれた……」「影すら焼く光……!?そんなの反則でしょ!」「主殿の嘆きはごもっともじゃ」光の羽が次々と舞い、空間を切り裂く。 ユスティアの結界でもすべては防ぎきれない。「じゃあ……!」私は胸の光を握る。「これを使う……!」「だめですエリシア様!!」 ユスティアが叫ぶ。珍しく声に焦りが混じっていた。「それは……光の王の本質です!この塔の空間は光属性が濃すぎます、下手をすれば同調して――」「光の王に……引き込まれる?」一瞬、胸が固くなる。だが、その時――「エリシア。お前なら大丈夫だ」カイラムが、影の残滓をふるい落としながら言った。「光でも
last update最終更新日 : 2025-11-24
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第147話:胎動の間と、光王の心臓

第四層――胎動の間。扉をくぐった瞬間、胸の奥がぎゅっと締め付けられた。 空気が濃い。光が重い。まるで“ここだけ世界が違う”みたいに、空間そのものが優しく脈打っている。「……なんだこれ」 レーンが息を呑む。視界全体に、やわらかな光が揺れていた。 霧のようで、でも霧じゃなくて……光が呼吸している感じ。「エリシア様、気を強くお持ちください。ここは……光の王が“誕生”した場所です」 ユスティアが震えた声で言う。誕生。その言葉に、胸の光がかすかに脈打つ。 それに応じるように――どん、どん、どん……塔全体が、規則正しい“心臓の音”を発し始めた。「まさか……」カイラムが私を見る。「これ……お前の光と同調してる……?」「か、勝手にしないでよ……!」心臓の音は少しずつ早くなっていく。 まるで“会いに来た”ことを喜んでいるように。◆◆◆胎動の間は広大だった。 天井は見えず、床は光る紋様で覆われ、どこか“神殿”に似た荘厳さがある。中央にだけ、何もない空白の領域がぽっかりと空いていた。「ここが……光の王の心臓?」私が近づいた瞬間――光が寄り集まって形を成した。ひとつ、ふたつ……無数の光の粒が渦を巻き、白い球体を形成する。 まるで、胎児のような―― いや、もっと曖昧な、概念のような“存在”。「……これが、光の王……?」リビアが震えつつ呟いた。その瞬間、球体の表面が薄く開いた。そして――『――コドモ』声がした。 私の胸の奥に、直接響いてくるような声。「え……?」『キミ……アタタカイ……キレイ……キニイッタ』子どものような、透明で、無垢な声。 光の王……? でも、この声は――『キミ……ワタシ、ト……オナジ……』胸の光が、眩しく輝く。 光の王の“心臓”が、それに呼応する。「エリシア!近づきすぎるな!」カイラムが私の腕を掴むが―― その瞬間、光の球体の視線が彼へ向いた。『ア……キエロ』次の瞬間、光の刃のような奔流がカイラムへ向けて突き刺さる。「カイラム!!」私は反射的に光を放ち、カイラムを包むように結界を作った。轟ッ!!!光と光がぶつかり、空間がひび割れる。 その衝撃に、私の足がすくむ。「ッ……な、何これ、光の王ってこんな……!」『キミ……ジャマ。 ジャマ……キライ……。 キミ……イラナイ……。』その声は、子どもが
last update最終更新日 : 2025-11-25
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第148話:王都育児戦線と、ルーメの初めて

天頂の塔での騒動から、丸一日。 私たちは無事に王都へと帰還した。 ……ただしひとつ、大きな問題を抱えて。「ママ……」「ちがーう!!」――そう、問題の中心は私の腕の中である。光の王こと、ルーメ。 生まれたての神性存在(幼児)。その姿は光の粒をまとった半透明の子どもで、ふわふわ浮きながら私の腕に収まっている。レーンがじぃーっと覗き込む。 「なあエリシア。どう見ても息子にしか見えねぇぞ?」「なんでそうなるの!? こう見えて神様だよ!? 世界規模の存在だよ!?」ルーメは満足げに私の首に抱きついた。 『ママ……アッタカイ……』「やめてー!みんなの誤解が深まるからー!!」カイラムは深い深い深~~~いため息をついた。 「……とりあえず、状況整理しようか」◆◆◆王都執務室。 久しぶりに戻ってきたはずなのに、目の前の混乱は史上最大級だった。メイド長「エリシア様!? 光る子ども!?!?」料理長「その子、食べられるのか……?」「食べないで!?!?」リビアが怒鳴り、料理長は即座に正座した。ユスティアは震える手で光読の書をめくる。 「生命波形……安定。神性指数……安定。幼児性……極めて高い」「幼児性って何!?」「……精神年齢です」ああ……ですよね……。ルーメはというと、興味津々で部屋のものを触りまくる。『コレ ナニ?』「それは書類。壊したらカイラムが泣く」『ナク?』「泣く」ルーメは書類から手を引っ込め、カイラムをじーっと見つめた。『ナク……ダメ……』「……いい子だ」カイラムの声が一瞬だけ柔らかくなった。 でもすぐ、真顔に戻る。「問題は、これからだ」みんながうなずく。「ルーメは……この国に置くしかない」 リビアが腕を組む。「こんな幼い状態で放っておけば暴走の危険がある。 主殿が傍にいれば安定するのは確実じゃ」「つまり……」カイラムは書類の束を置き、静かに言った。「エリシア。お前は……しばらく“保護者”としてルーメを育てることになる」「やーーーーだーーーー!!!」王都の窓が震えた。◆◆◆とはいえ拒否権はなかった。 なにせルーメは私から離れると、すぐ不安になって泣く。『ママ……ママ……? コワ……』「よしよし、ここにいるよ」『ママ……!!』 ぎゅーーっ。……かわいい……!!!いやダメ! 心を許したら沼る!
last update最終更新日 : 2025-11-26
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第149話:空白の胎動と、王国の新しい日常

王都に静寂が戻って三日。 世界を揺らした襲撃のあとにも関わらず、生活は不思議と日常へ戻ろうとしていた。――いや、戻っていない部分もある。「ママぁぁぁぁぁ!!!」「だから違うってば!!!」朝の廊下を光の粒が猛スピードで飛び回る。 犯人はもちろん我が家の新入り――光の王ルーメ。『ママ!オハヨ!ママ!ママッ!』朝一番からテンションが高い。 というか高すぎる。「ルーメ、まずは落ち着いて……光、散らかってる散らかってる!」『ママ マケナイ!』「何と戦ってるの!?」レーンが廊下の隅で腕を組みながら笑っている。 「なぁエリシア、こいつ絶対お前似だぞ」「似てないから!!」リビアは呆れつつも羽根でルーメを捕まえようとする。 「朝から元気すぎるぞ、神の子よ……まずは飯を食え」『タベユ!ママ ト イッショ!』「なんで全部一緒にやろうとするの!?」ユスティアは朝から書類に目を通しながらぼそり。 「依存度が高いのは良い兆候です……安定しています」「いや高すぎない!?」カイラムだけが少し遠くから様子を見ていた。 その表情はいつもより柔らかいけど、どこか考え込んでいる。◆◆◆朝食――までは良かった。 問題はそのあとだ。「今日の予定は?」と聞いたら、ユスティアがさらりと言った。「ルーメの“社会性訓練”です」「しゃかいせい……?」「はい。神性を安定させるためには、周囲との交流が不可欠。 ですので……王都の人々と触れ合わせます」「いやいやいやいや!?」レーンがすでにルーメを肩車している。 『タカイ!タカイッ!!』「おーし、まずは町の広場だな!」「勝手に連れていかないで!?」リビアは深いため息をつきつつ説明した。「主殿、ルーメは“光の王”じゃ。存在しているだけで周囲に影響がある ゆえに、民の前に出して慣れさせねばならぬ」「でも、危ないかも……」「だから儂らがついておるじゃろ」カイラムが私の肩に手を置き、静かに言った。「お前ひとりで抱え込む必要はない。 ……なにせ相手は神だ。俺たちに任せろ」その言葉で、私はようやく深呼吸できた。「……わかった。じゃあ行こう」『ママ アソブ!!』「遊びじゃないから!?」◆◆◆王都の広場は朝から賑わっていた。 美味しそうなパンの匂い、子どもたちの笑い声、商人たちの呼び声。そこで――『……ママ…
last update最終更新日 : 2025-11-28
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第150話:揺れる星々と、第三勢力の影

夜が明けても、不安は消えなかった。 昨日の“空白の裂け目”――あれは、ただの脅威じゃない。 私の名前を呼び、私だけを狙い、ルーメは逆に“興味がない”と言われた。つまり、目的は私。なんで? 私にそんな価値ある? むしろ私なんて、世界再生のついでに転生してきた……ただの庶民のはずで――「エリシア、また難しい顔してる」カイラムが声をかけてきた。 朝の執務室。窓辺には光が差し込み、ルーメは床でぽふぽふ浮かんで遊んでいる。『ママ!ミテ!コロコロ!!』「こら、床を光の玉で転がさないで……あっカーテン燃える!!」ふわぁっと火花。「危なっ!?」カイラムが影の腕でカーテンを包んで鎮火。 レーンは爆笑して転げまわり、リビアは頭痛を抱え、ユスティアはメモを取っている。「……毎日これです」「まあ、平和と言えば平和だよな」 レーンが笑う。 「昨日のアレを考えると、この程度のわちゃわちゃは癒やしだろ?」そうなんだけど……。ユスティアが本題を切り出した。 「昨夜の現象、解析がほぼ終わりました」「ほんと!?」ユスティアは深刻な表情で書を開く。「まず、アレは“生物”ではありません。意思を持った『欠片』です」「欠片?」「はい……“誰かの魂の欠片”。それも、未完成の」空気が張り詰める。「魂の……欠片?」「しかも、おそらく“転生程序の外側”で発生した存在」転生。外側。私が転生した時とは、まったく違う何かが起きてる……?リビアがつぶやく。 「主殿、思い当たる節は?」「ない……と思う……いや多分ない……」だが胸の奥で、微妙に引っかかっている感覚はあった。あの声のトーン。 込められていた感情の色。“ボク……トオナジ……”その言葉が、ずっと頭に残っていた。まるで私と同じ“何か”を持っているみたいな――。◆◆◆「ユスティア。あれの発生源はわかった?」「……それが、問題でして」ユスティアは窓の外――朝空の一点を指差した。「昨夜から、王都の北空に……星が一つ、揺れています」揺れる星。皆が吸い寄せられるように窓へ向かい、外を見る。朝なのに、薄ぼんやりと輝く星が一つだけ見えた。 光が微弱に波打ち、まるで呼吸しているみたいに明滅している。「……あれが?」「はい。空白の波動と一致しています。 おそらく“本体”はあの星の向こう……あるいは、星そのも
last update最終更新日 : 2025-11-28
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