All Chapters of 逆ハーレム建国宣言! ~恋したいから国を作りました~: Chapter 151 - Chapter 160

167 Chapters

第151話:空白の子を追って――転生の痕跡

空白の子が姿を消してから、三日が経った。 けれど王都は落ち着くどころか、むしろ“警戒の膜”が張りつめたように静かだった。影王の脅威でもなく、光の王の覚醒でもなく―― いま私たちが恐れているのは、ただひとりの“名なき子ども”。『……ママ……』ルーメは私のそばを離れず、不安の色が消えない。 遊ぶ時も、ごはんの時も、寝る時も、ずっと手を握っている。「ルーメ、少しでも怖い?」『……コワイ……。アレ……キライ……。ママ……トラレル……』その言葉に胸がぎゅっと痛む。「大丈夫。絶対に離れないから」ぎゅう、と抱きしめると、ルーメの光がやっと温かさを取り戻した。でも――その安心がいつまで保てるかはわからない。◆◆◆執務室には、異様な空気が漂っていた。 テーブルの上には書類、古文書、星図、空白波動の観測記録が山積みになっている。ユスティアは目の下にクマを作りながら解説していた。「こちらが空白波動の解析結果です……」レーンが思わず突っ込んだ。 「寝てないのか!? 目の下に世界地図できてるぞ!?」「……これは、努力の地図です……」「いや寝て!!」カイラムはユスティアの肩に手を置き、強制的に座らせた。「少し休め。お前が倒れても困る」「は、はい…………」リビアは資料をめくりながら、重い声で言った。「空白の子が残した波動……やはり“魂”の性質に近いものじゃ」「魂?」ユスティアが弱々しく頷く。「はい……転生や死後の魂の循環に関わる“基底層”の波動です。 つまり、あの子は……エリシア様と同じく、転生に関わる存在……」「同じ……?」胸の奥がひりつく。 だって私はただの一般人だった。 前世で特別なことなんてなにも――「主殿」リビアが静かに言った。「“転生者が一人とは限らぬ”……そういうことじゃ」「えっ……」レーンが身を乗り出す。 「もう一人の転生者ってことか?」カイラムは首を振る。 「いや、違う。もし単なる転生者なら“空白”にならない」「じゃあ何なの……?」カイラムは少しだけ間を置いて言った。「“途中で途切れた転生”だ」「途切れた……?」リビアが続ける。「要は……何らかの理由で転生が不完全なまま、魂だけが世界に落ちた。 記憶も形も持たず、ただ“求めるもの”だけを強く残して……」求めるもの。空白の子が求めていたもの。――私
last updateLast Updated : 2025-11-29
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第152話:欠片の姉妹と、魂分裂の真実

高原に広がる冷たい風が、一瞬だけ止まった。目の前に立つ“白い子ども”。 白髪、薄銀の瞳、小さな体――なにもかもが儚くて、触れたら壊れてしまいそうで。けれどその瞳が私を見た瞬間。『……おねえちゃん……』その声は、あまりにも自然すぎた。「……え……」私は言葉をなくした。ルーメが胸の中で震える。 『ママ……アレ……イヤ……!イヤ!!』レーンが剣を中途半端に構えたまま、ぽかんと固まっている。 「お、おいエリシア……妹……なのか……?」「いや、そんなはずないって……! 私ひとりっ子だし……!」リビアが深い皺を刻みながら呟いた。 「“はず”の話が、通用せぬのが転生じゃ……」ユスティアは計測具を震える手で操作する。 「魂波形……間違いありません。エリシア様と類似度が異常に高い……。まるで――」「まるで?」「“魂が、分裂した”かのようです……」空気が凍りついた。◆◆◆「分裂って……なにそれ……!?」 私は思わずユスティアの袖を掴む。ユスティアはいつになく真剣な目で言った。 「転生の瞬間、魂が強い衝撃や干渉を受けると……“核”が割れることがあります」「核が……割れる?」「はい。その場合、主魂と副魂に分かれます。 主魂は“あなた”として転生し、副魂は彷徨い……不完全なまま実体化する場合がある」レーンの口がぽかんと開いた。 「つまり……どういうことだ?」カイラムが静かに答える。「――エリシアの“もうひとつの命”だ」「っ……!」その言葉が、胸にずしんと落ちた。白い子どもが、そっと一歩近づく。『……おねえちゃん……ちがう……。 いっしょ……。いっしょの……ひかり……』風に揺れる声は、震えていた。『……さみしかった……。まってた……。 こわかった……。さがした……。』その言葉はあまりにも純粋で、胸の奥が強く締め付けられる。「……ずっと……ひとりだったの……?」子どもは小さく頷いた。『……うまれられなかった……。 おねえちゃん……イッタ……。 ボク……イケナイ……。』「言ってないよ!?私そんなこと絶対言ってない!」『……でも……きこえた……。 おねえちゃん……どこ……?って……。』……違う。その言葉を言ったのは――“私のほうだ”。転生の瞬間。曖昧な意識の中で。(……だれか……いるの……?) (……さみしい……こわい…
last updateLast Updated : 2025-12-01
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第153話:空白の兄妹と、二つの渇望

高原の空気は、一瞬で張り詰めた。 白いユキナが私の前に立ち、震える手で私の袖を掴んでいる。 その顔は怯えているのに――それでも離れまいと必死だった。『……おねえちゃん……まもる……』「ユキナ、危ないから下がっ――」言い切る前に、裂け目の奥から黒い“怒り”が噴き出した。『……ナマエ……ヨバレタ……。 ユキナ……ナマエ……モラッタ……。 ボク……モラッテナイ……』声が揺れ、世界が軋み、風が逆巻く。 まるで“嫉妬”そのものが空間を歪ませているようだった。レーンが眉をひそめる。 「くそ……完全に拗らせた弟じゃねぇか」「やめてその表現ほんとやめて!!!」ユスティアが計測具を見ながら蒼白になる。「空白の子の魂波動……怒りによって“形態が変化”しています!」カイラムが剣を構え、一歩前に出る。 「エリシア。今のあれは、もう対話できる状態じゃない」「う……うん……」裂け目の奥で、黒い気配が渦を巻く。 言葉にならない咆哮が響いた。『……ボク……オネエチャン……ホシイ……。 ユキナ……イラナイ……。 エリシア……ボク……ノ……ッ!!』世界が震える。 高原の草が逆流し、影が引っ張られるように伸びる。 空白の子が――“兄”が怒っている。でも、その怒りの奥には。(……さみしい……) (……こわい……)そんな幼い気配が、微かに混ざっていた。◆◆◆「エリシア様!危険です、下がって!」 ユスティアの声が震えている。「いや、私が下がったら……あの子はもっと壊れちゃう」私はユキナとルーメをそっと後ろに下げ、前へ進み出た。カイラムがすかさず私の前に立つが、私は首を横に振る。「大丈夫。いざとなったら守ってくれるでしょ?」「……ああ、当然だ」カイラムの声が低く、確かだった。裂け目の奥から、にじり出る影の腕がゆっくり私へ伸びる。 その動きは怒りに満ちているのに、どこか泣きそうなほど幼い。『……ボク……ナマエ……ホシイ……。 ユキナ……ズルイ……。 ボク……ダッテ……エリシア……ト……』私は一歩踏み出し、静かに言った。「ねぇ。怒ってるんだよね?」裂け目が震える。『……オコッテル……!!』「悲しいんだよね?」影の腕がぴたりと止まる。『……カナシイ……!!』「じゃあ――来て。話そう?」影全体が震えた。 怒りと不安と渇望が交錯し、形が不安定になっ
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第154話:空白核の目覚めと、守るべき家族

空白の“本体”が去ったあと、高原にはしばらく風の音すら戻らなかった。 大地は揺れたまま余韻を残し、空は薄い灰色に滲み、草はまだ震えている。あれは――ただの襲撃なんかじゃない。 世界そのものを歪ませる、“存在の胎動”だった。『……ママ……コワイ……』ルーメが私の服をぎゅっと掴み、涙をぽろぽろ零す。 小さな光の体は怯えで弱々しく揺れていた。「大丈夫、大丈夫。ほら、ママいるよ」『……ママ……マモル……。ルーメ……ママ……ト……イル……』「うん。一緒にいようね」ユキナは反対側で私の袖を噛みそうな勢いで掴んでいる。『……おねえちゃん……いかない……いらない……アレ……キライ……』クロトは怒りを飲み込みながら、私の背中を守るように立っていた。『……ボク……エリシア……まもる……。アレ……ゆるさない……』三人とも、言葉は幼いのに、思いがあまりにも強い。 胸が痛くて、でもあたたかい。 守りたい。全部守りたい。……でも。守るだけじゃいられない。あれはまた来る。 そして次は“完全体”として現れる。ユスティアが重い声で告げた。「エリシア様……空白本体の波動が、世界規模で揺れています。 このままでは、数週間以内に“第二段階”へ移行します」「第二段階……?」リビアが羽根を震わせる。 「空白核の“目覚め”じゃろうな」「空白核?」「空白勢力の中心にある、魂を喰い、奪い、溶かし、組み替える核……。 光王や影王の“王核”と似ておるが、もっと原始的で……“飢え”に近い」レーンが眉を寄せた。 「つまり親玉の心臓ってことか?」「そうじゃ。あれが完全に目覚めれば……王都どころか大陸がもたん」「そんな……」カイラムが私に向き直る。「エリシア。お前が狙われている理由、まだわかるか?」「……魂が……特別だから?」「違う」カイラムはゆっくり首を振った。「お前は“空白核の欠片”を持っている」「……は?」「正確には、転生のとき“核の力が干渉した”んだ。だから魂が分裂した。 ユキナとクロト、その二人ができたのも……お前の魂が空白に巻き込まれたからだ」「じゃあ……私が原因?」ユスティアが慌てて首を振る。「違います!あなたが悪いわけではない! ただ……“特別な魂”であることは確かです」(特別……?私が?)前世ではただの一般人だった。 華やかでもない。す
last updateLast Updated : 2025-12-04
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第155話:魂結界戦と、欠片たちの覚醒

廃寺を揺らしたのは、まるで大地そのものの心臓の鼓動だった。 空白核の前段階――“核影(かくえい)”がゆっくりと姿を現した瞬間、世界の色が薄れていく。灰白の巨影。人型とも獣ともつかない形。形があるようで、形がない。 未成熟で、未完成で、なのに……見ただけで魂が震えるような圧迫感。ユスティアが蒼白のまま叫んだ。 「空白核の“胎芽形態”です! まだ完全覚醒ではありませんが……力は七割!」「七割でこれなの!?」レーンが剣を構えながら悲鳴のように叫ぶ。 「完全覚醒したら大陸まるごと消えるんじゃねぇの!?」リビアが羽根をぱっと広げた。 「覚悟を決めよ! 三つの魂――そなたらの出番じゃ!」ユキナが震える声で言った。 『……おねえちゃん……まもる……!』クロトが拳を握りしめる。 『ボク……たたかう……! エリシア……まもる!』ルーメが光を強く灯す。 『ママ……マモル……! ルーメ……がんばる!』胸がぎゅっとなる。――三人とも、こんなに小さいのに。 ――こんなに幼いのに。それでも私の前に立とうとする。「無理はしないこと! みんな、一緒にね!」ユスティアが術式陣に手を置き、魂結界を発動する準備を整えた。「魂結界――“三環の陣(さんかんのじん)”、展開します!」光の輪が地面から持ち上がるように広がっていく。 中央に私、外周にユキナ・クロト・ルーメ。三つの魂が重なった瞬間――世界が一度震えた。◆◆◆核影が咆哮した。『――――ァァアアアアア!!』風が爆ぜ、廃寺の瓦が吹き飛び、光と影が逆流する。「防げ!!」カイラムが影壁を展開した。 だが核影の触手が影壁を突き破る。レーンの剣が閃く。だが灰白の光弾がその一撃を弾き返す。リビアの羽根が防御術式を広げるが――虚無の波動に押されて後退。「こいつ……強すぎる!!」ユスティアは結界を維持するのに精一杯。 「三人の魂が安定しないと、結界が崩れます……っ!」「みんな! 落ち着いて!」私は三人の方へ意識を向けた。 結界を通じて三人の感情が流れ込んでくる。ユキナ:『こわい……こわい……! でも……!』 クロト:『まもる……まもる……! エリシア……!!』ルーメ:『ママ……ママ……!! いる……いる!!』不安と恐怖が混じっていて、このままでは力が出し切れない。「三人とも――こっち向いて!」私は中
last updateLast Updated : 2025-12-05
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第156話:空白完全体と、魂の継承者

廃寺に残った虹色の残光は、まるで夢のようにゆっくりと消えていった。 核影(かくえい)は砕け、虚無の核は霧散し、大地は静けさを取り戻す――はずだった。けれど、胸の奥がざわざわする。 嫌な予感が止まらない。ユスティアが震える手で星読み具を操作しながら、息を呑んだ。 「……やはり……完全体の波動が動いています……!」「完全体……」 私は無意識に、ユキナ・クロト・ルーメを抱き寄せた。「じゃあ……いま倒したのは?」リビアが低い声で答える。 「“核影”は言うなれば、あやつの影にすぎん。本体は……もっと上位じゃ」レーンが頭を抱える。 「七割であれだろ? 十割とか……もう無理ゲーじゃねぇか……!」カイラムは剣を握り直し、空を睨みつけた。 「完全体はまだ遠い。だが……目覚めようとしている」空の奥――遥か上空で、誰かが眼を開いた“感覚”だけが、微かに流れてくる。ユキナが震えた声で言った。 『……あれ……ほんもの……?』クロトが私の服の端をぎゅっと掴む。 『……ボク……イヤ……。あれ……キライ……。』ルーメは私の肩で光を縮ませる。 『ママ……ルーメ……オソレ……カンジル……』三人とも、核影ではなく“完全体”の気配を感じ取っている。私は三人の頭にそっと手を置いた。 「大丈夫。ここにいるよ」しかし――ユスティアの次の言葉で、全員の動きが止まった。「……完全体が目覚めた時、最初に“接触”するのは……」「……誰?」ユスティアは、迷いを挟まぬまま私をまっすぐ見た。「――エリシア様です」空気が凍る。「え……なんで……?」ユスティアは深く息を吸い、説明を始めた。「空白核は“魂の未完”を求めます。自らの不完全を埋めるために。 そしてエリシア様は……三つの魂を生んだ“主魂”です」リビアが続ける。 「言い換えれば……お前は空白核にとって“完全な素材”なのじゃ」レーンは思わず叫ぶ。 「素材!? 冗談じゃねぇだろ!!」「いや、事実だ。空白核は“完成”するためにエリシアを奪おうとする」 カイラムは一歩前に出て続けた。 「そして、まだ来ていないということは……じっくり狙っているということだ」ぞくり、と背中が冷たくなる。ユキナが私の手を握りしめる。 『……やだ……やだ……!! おねえちゃん、とられないで……!』クロトも涙を浮かべて叫ぶ。 『エリシア……ボク……
last updateLast Updated : 2025-12-06
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第157話:四魂統合と、世界樹の胎動

廃寺を包む光は、まるで新しい世界を作り直すみたいに静かに脈動していた。 “継魂の導き手”が描き出した光陣は、廃寺の地面一面に広がり、古代文字が淡く呼吸するように揺れている。その中心に立つのは――私たち四人。私。 ユキナ。 クロト。 ルーメ。三魂契で繋がった私たちの“心”は、まだ熱く震えたまま。 そして今から行うのは、それをさらに強める究極の術――四魂統合。導き手は柔らかく微笑んだ。 「心配しなくていいわ。統合は“魂を一つにする”のではない。 互いの魂の階層を合わせ、力を引き出すための共鳴……それだけ」ユスティアは額に手を当て、緊張した声で言った。 「“それだけ”と言いますが……四魂統合は古代でも成功例が極めて少ない術なのですよ……!?」レーンが半泣きで叫ぶ。 「エリシアを危険に晒すのは反対だぞ!? いやでも強くなるのは賛成だけど……いやでも危険は……!」「レーン落ち着いて?」リビアが呆れた声でため息をつく。 「主殿の魂は特別じゃ。“統合”も本来は自然な形なのだろう」カイラムは落ち着いた声で私を見る。 「エリシア。やると決めたんだな?」私は深く頷いた。 「うん。もう逃げない。強くなるために……みんなを守るために」ユキナが裾をぎゅっと掴む。 『……おねえちゃん……だいじょうぶ……?』クロトは拳を握っている。 『……いっしょに……つよくなる……!』ルーメは金の光の粒を散らしながら私の胸に額を押し当てる。 『ママ……マモル……! ママ…&helli
last updateLast Updated : 2025-12-07
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第158話:覚醒四魂と、世界樹の冠

廃寺を覆う虹色の光は、もはや結界というより“天へ伸びる柱”のようだった。 四魂統合が覚醒段階へ入り、私の魂と三魂がひとつの大きな“輪”となり、世界樹へと直結している。その光の柱を、空白完全体がじっと見つめている。 怯え……いや、“理解できない”とでも言ったほうが近い、そんな揺らぎが伝わってきた。『……ナゼ……コノ……イロ……』完全体は、虹色を“恐れている”。 それは虚無の存在には本来存在しない概念だ——“全肯定の色”。カイラムが剣を構えながら呟いた。 「……空白核が後退するなど……歴史にも例がないはずだ」ユスティアは額に汗を浮かべながら光柱の解析を続けている。 「四魂統合……想定より遥かに強力です! 世界樹の上層に接続している……」リビアが羽根を震わせ、信じられない面持ちで言う。 「まさか、“世界樹の冠(かんむり)”に触れておる……?」「世界樹の……冠?」思わず聞き返すと、リビアの瞳がわずかに揺れた。「世界樹の最頂……魂の系譜が始まる場所じゃ。古代でさえ、触れた者はほとんどおらん」気づけば、足元の光陣は白から虹へ。 世界樹の幹が幻のように視界に重なり、私の体の奥で“何か”が脈打っている。ユキナ・クロト・ルーメは私の正面へ並び立ち、ひとつの輪を作っていた。 その姿はすでに以前の“三魂の器”ではなく—— 魂そのものが“進化”しているように見える。ユキナは雪のように白い衣をまとった少女の姿
last updateLast Updated : 2025-12-08
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第159話:四魂統合完成と、空白王の影

世界樹の冠——その最奥へ向かって走り出した瞬間、足元の光景が一変した。さっきまで暖かかった光の大地は姿を消し、代わりに広がったのは透き通った“枝の道”。一本一本が光の線で描かれ、まるで夜空に浮かぶ蜘蛛の巣のように繊細で……なのに、そこを走れるほど確かな存在感を持っていた。ユキナ、クロト、ルーメの三人も、私の隣を軽やかに走っている。ユキナは白い花びらのような光を舞わせ、 クロトは靴底に影を宿して大地をつくり、 ルーメは金色の羽をきらきら輝かせながら進む。三人とも、もう“魂の欠片”ではない。——魂として成長している。私がそう思った瞬間、胸の奥が共鳴した。“……統合は、すでに始まっている……”誰の声でもない。 でも確かに、魂の奥から湧き上がる感覚だった。「みんな……準備はいい?」ユキナ『……うん。おねえちゃん、いるから……だいじょうぶ』クロト『エリシア……まもる。だから……まえ、いく』ルーメ『ママ! いっしょにいく!!』胸が熱くなる。 私は小さく微笑んで、世界樹の最頂へ続く一本の太い光の枝に足を踏み出した。その瞬間——空が裂けた。◆◆◆『————エリシアァァァ…………』声が、世界樹全体を揺らした。 光の枝葉がざわざわと震え、揺れ、根まで響く振動が伝わってくる。三魂が即座に反応した。ユキナ『……きた……!』 クロト『……アイツ……クル……!』 ルーメ『ママ……マモル!!』私は奥歯を噛みしめ、空を睨む。「空白完全体……!」光の天蓋が砕け、黒い“影とも虚無ともつかない塊”がゆっくりと顔を出した。だが——その姿は、先ほど廃寺で現れた「巨大な異形」ではなかった。もっと“形”がはっきりしている。 もっと“人”に近い。 もっと……“こちらを理解しながら狙っている”。細い輪郭。 揺れる黒銀の髪。 瞳の奥には底なしの虚無。まるで人間の姿を模したような……“空白王”。ユスティアたちが残った廃寺から叫び声を上げているのが、遠くの風に乗って微かに聞こえた。「エリシア様!! 意識を切らさないで!!」 「完全体の気配が強まりすぎです!!」 「影の防御が保たん!!」……大丈夫。 彼らの声は届いている。でも、ここはもう“別の層”。 魂の冠。 世界樹の最上階。魂の本質だけが戦える場所。完全体はゆっくりと手を伸ばした。『……カエレ……カ
last updateLast Updated : 2025-12-11
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第160話:魂の還り道と、四つの光の帰郷

虹色の光がゆっくりと収束していく。 四魂統合の輝きが世界樹の冠に吸い込まれ、静寂が戻りつつあった。完全体——空白王はもういない。 破壊されたのではなく、光に包まれ、魂の核そのものが“浄化”されたように感じた。ただの虚無ではなかった。あれは孤独と渇望の魂だった。……かわいそうに、と思ってしまった自分がいる。でも、終わった。「……みんな、大丈夫?」光の粒から三魂が姿を現す。ユキナはふわりと私に抱きつき、『……おねえちゃん……つかれた……でも……へいき……』クロトは息を整えながら、『エリシア……まもれた……ボク……つよくなった?』ルーメは半泣きで胸に飛び込み、『ママぁぁ……ママ……マモレタ……ルーメ……エラい……?』「もちろん! みんなすっごく強かったよ!」三人は誇らしげに光を強めた。そこへ、柔らかな声が降りてくる。「よくやったわ、エリシア」初代空白守が、世界樹の根元から歩いてくる。 その姿は最初に会ったときよりも淡く、透けていた。「初代さん……!」「あなたが四魂を“家族”として選んだから……完全体は倒せた。あなたの魂は、私よりずっと強い」胸が熱くなる。「いえ……私なんて、ただ必死で……」「いいのよ。それで。魂は誰かのために動くとき、一番強くなるの。あなたの魂は——もう“私の欠片”ではなく、完全にあなた自身のものよ」世界樹がふわりと光の花を散らす。 まるで祝福のように、四方へ輝きが舞っていく。ユキナはその光を掴もうとして跳ね、『……きれい……!』クロトは静かに眺め、『……あったかい……』ルーメはぱくっと食べようとして私に止められる。「食べ物じゃないよ!?」初代がくすりと笑う。 「さて——エリシア。あなたたち四魂は現界へ戻らなくてはならないわ」「戻る……?」初代はゆっくりとうなずく。「空白王の脅威は去ったとはいえ、世界樹のバランスが揺れている。あなたたちの光は現界に戻り、世界を安定させる“要石”にならなくてはいけない」「私たちが……要石に?」ユキナが不安そうに袖を掴む。 『……おねえちゃんと……はなれる……?』クロトも眉を寄せる。 『エリシア……ひとり……イヤ……』ルーメは首を振りながら泣きかける。 『ママ……ママと……ずっと……いっしょ……!!』初代は優しく笑って三人に手を差し伸べた。
last updateLast Updated : 2025-12-12
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