崚佑さんとあまりお話をしない方がいいとはどういうことだろう? 私はドキリとして固まる。 一瞬、業務中に無駄話をしている態度が周囲から不快に思われてしまっているのかと危ぶんだが、その点は大丈夫だった。 というのも事務現場は意外と和やかで、皆、業務の手を動かしつつも、お喋りや息抜きを盛んに行っていたのだ。 そうであるにも関わらず、同僚が忠告をするのは何故だろう? ひょっとして幸恵も言っていた「崚佑は愛が重いタイプ」という事と関係があるのだろうか? 私は俄かに同僚の真意が気になり、意を決して尋ねてみた。「崚佑さんとあまりお話をしない方がよいというのはどうしてなのでしょうか?」 私は相手が自分の忠告を聞き返されたことによって、不快に思うのではないかと危ぶんだが、意外にも反応は全くの正反対で、むしろ話に喰いついてくれたと嬉しそうな様子だった。 どうやらこの件について、彼女は詳しく話をしたいようだ。 そう察した私は「ぜひ教えてください」と秘密をおねだりするように、もう一言添えてみた。効果は覿面だった。彼女は嬉しそうに理由を教えてくれた。「それはですね、崚佑さんが女性の看護師や女医から人気だからです。病院勤務は外部との関わりが少ないので、どうしても院内で「相手」を見つけないといけないんです。そうした思惑が渦巻く院内で、私たち事務方が男性医師と親しくしていると、目をつけられちゃうからですよ」 そう話す彼女は本当に楽しそうだった。 私は相手がかなりのゴシップ好きだと理解した。「そうやって目を付けられて、辞めていった事務方は多いんです。充希さんも気をつけてくださいね。特に充希さんは誰とでも親し気で、相手に対して親切だから男性に好かれていそうという嫉妬をより集めそうに見えるので」 饒舌になった彼女は、私の評価についても口走ってしまった。 それは悪意のある嫌味ではなく、純粋に私が「モテそう」という誉め言葉のつもりだったに違いない。 しかし、その一言は、私の胸に小さな果物ナイフを刺したかのような鋭い痛みを与えた。 私は「男性に好かれていそう」と周囲から思われているとのことだった。 驚くべきことに、私はその評価をとても不名誉
Last Updated : 2025-08-21 Read more