曇市一の高級ホテル、そのVIPスイートのバスルーム。 全身裸のまま、朝倉紗夜(あさくら さよ)は葛城晴人(かつらぎ はると)に押さえつけられ、浴槽の中で激しく抱かれていた。 目の前には巨大な窓ガラス、半分の街が夜景になって揺れている。 晴人は興奮した様子で首筋をきつく掴み、「どう?ドキドキしてる?」と挑発的に囁いた。 ようやく全てが終わると、紗夜はぐったりとバスタブに沈み、少しだけ目を閉じてしまう。 再び目覚めたとき、バスルームには自分一人しかいなかった。 ドアは外から鍵がかかっている。 紗夜は必死に叩いたけど、外からは何の気配もない。 「晴人!そこにいるの?ドアが壊れたみたいで、開かないよ!」 「晴人!」 叫んでも、返事はない。 三年前の火事がトラウマになって、紗夜はひどい閉所恐怖症になっていた。 狭い空間に閉じ込められると、恐怖と震えが止まらなくなる。 必死に助けを呼んでも、誰も来てくれない。 呼吸はどんどん荒くなり、胸が締め付けられていく。 頭の中には、両親が炎に包まれていく映像が離れなかった。 気を失いかけたそのとき、ようやく外から物音がした。 「紗夜、ドアが壊れちゃったみたい。もう少しで開くから、頑張ってて」 晴人が業者を連れて戻ってきた。 ドアが開いた瞬間、紗夜は晴人の腕の中で気を失った。 「紗夜、ごめん。全部俺が悪いんだ。ずっと側にいなきゃいけなかったのに」 優しく抱きしめる晴人の目は、ひどく心配そうだった。 少しだけ休んでから、晴人は隣のスイートで友人たちとカードゲームを始めた。 さっきの恐怖も不快感も、まだ胸の奥に重く残っている。 無理やり身体を起こし、みんなの夜食でも持っていこうと部屋を出る。 隣の部屋のドアは半開き。 中から聞こえてくる声が、どうしても耳に入ってしまった。 「晴人、俺は思うんだけど、さっきもっと放っておいてやればよかったんじゃね?もっと症状悪化してたかもな。そっちのが復讐になるだろ」 「はは、あいつ絶対まだ晴人のこと救世主とか思ってんだろうな。笑えるよなぁ。晴人があいつのことなんか好きなわけないのに。三年間も付き合ってやったのは、全部復讐のためだってのにさ」 「だよな。卒論も、こっそり晴人がすり替えたせいで卒業証書
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