御堂《みどう》の乱暴だった口付けは少しずつ変化していき、優しく啄むように何度も私の唇を求めてくるようになる。 私は抵抗も出来ないまま、ただ彼の唇を受け入れるしかなくて。 ……いいえ、抵抗出来ないんじゃない。もしかしたら私は御堂の強引な言動を本気で嫌だと感じていないのか。 心のどこかでこのまま彼に流されることが出来るならば、という気持ちが無いわけじゃないと思う。 あの過去の記憶を消し去るくらい、御堂が強く私を奪ってくれるならば…… そんな期待をしなかったと言えば、嘘になる。だけど、御堂はそんな私の弱い所もすべてお見通しだったようで。「紗綾《かっこ》。お前が俺を受け入れられず、苦しんでいる|理由《ワケ》を話せ。それと向き合い乗り越えなければ。お前は心から恋愛することが出来ないんだろう?」 身体だけ差し出して過去を隠してしまおうとする私の狡さを、やはり御堂は見過ごさない。 彼は私の身体だけでなく心も、過去も未来もすべてを手に入れるつもりなのだろうか? 欲張りだと思うが、それさえも御堂らしいとも言える。「紗綾の唇は俺を愛したい、俺に愛されたいと伝えてくるみたいだ。お前自身も少しは素直になったらどうなんだ?」「……自信過剰よ、私はそんなこと貴方に伝える必要ないわ」 つっけんどんにそう返せば、全く動じない御堂からキスの雨を降らされて。頬に、額に、唇に……そのキスに私は堪らず彼のシャツを握りしめる。 まだ「そうだ」と自信を持って応えられるほど、御堂に気持ちがあるとは言えない。だって私は貴方がとても怖いもの。 だけど……御堂の熱《キス》は、少しずつだけど私を固まった溶かしていく。何年も変えることの出来なかった私自身を、確実に変化させていく力が彼にはあるんだって思えた。
Terakhir Diperbarui : 2025-07-09 Baca selengkapnya