遥樹が得意げになるほど、黎はますますつらくなり、歯を食いしばって言った。「蒼空がお前の彼女だってことはもう知ってるから、もう言わなくていい。『俺の彼女』、なんて言葉はもう聞きたくない」友人の「失恋」を前に、遥樹は慈悲深い顔をした。「努力はするよ。でも、そういうのって正直、なかなか自制がきかないんだよね」「友人」のさりげない自慢に、黎の顔が歪む。獰猛な笑みを浮かべて遥樹を見た。「このあと誰に会いに行くか、覚えてるよな?」案の定、遥樹の笑みは少し薄れた。黎は一歩優位に立ち、さらに遠慮なく言う。「蒼空のこと考えてる場合じゃないだろ。まずはあの松木瑛司をどうやって相手するか考えとけ。最近あいつ、蒼空とやたら距離が近いって聞いたよ。ちゃんと気をつけないと」遥樹はちらりと彼を見た。「少なくともお前よりはマシだ。俺には『彼氏』という立場がある。なのにお前はただの『友達』......」「!」いっそ車を止めて殴ってやりたい。警察にも、法律にも見つかりませんように......力なく遥樹を見て、黎は言った。「もう勘弁してよ」遥樹は襟元を整え、気遣うように言う。「ほら、気合い入れろよ。まだ運転中だろ」遥樹の晴れやかな様子とは対照的に、黎はすっかり虚ろな目だ。「最初から運転代わればよかった......」数日前に失恋したばかりでまだ傷心中だというのに、友の一本の電話で尻尾を振るように駆けつけ、運転手まで買って出る自分。それだけでも十分なのに、目の前で堂々と惚気られる。しかも、胸の痛みを堪えながら、その友を無事に目的地まで送り届けなければならない。本当に、つくづくいい人だ。遥樹と瑛司が約束したのは、極めてプライバシー性の高いレストランだった。会員制で、ホール席はなく、個室のみ。来店も身元も徹底して守られる。車を降りると、黎はハンドルに突っ伏したまま言った。「何かあったら電話しろよ。外で待ってる。すぐ入れるから」遥樹は気軽にうなずく。「分かった。ありがとう」店内に入ると、入口のウェイターが歩み寄った。「ご予約のお客様でしょうか」遥樹が名前を告げると、ウェイターは微笑む。「お連れ様がすでに個室でお待ちです。こちらへどうぞ」回廊を抜け、個室の前へ。ウェイタ
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