佑人はうつむいたまま、左手を上げて掌を見つめた。――優奈に言われたからひいおじいちゃんに謝りに行った。たしかに謝った。だが、心の中ではまだ納得していない。あんなに強く叩かれて、いまも手はひりひりと痛む。だからこそ、ひいおじいちゃんに掌なんて見せたくなかった。もしまた叩かれたらどうするのだ。それにひいおじいちゃんが怒りを収めたからといって、自分まで怒りが消えたわけではない。胸の奥にはまだわだかまりが残っている。自分の病室へ駆け戻ったあと、佑人は少し得意になった。敬一郎の言葉に惑わされず、掌を差し出さなかった自分は賢い、と思ったのだ。優奈はそんな彼を見ても、何を考えているのかまでは分からない。頭を撫でながら言う。「お腹すいてない?朝ごはん、もう届いてるよ。先に食べましょう」佑人の意識はすぐに掌から朝食へ移る。お腹をさすり、目を輝かせた。「朝ごはん?なにがあるの?」優奈は顎でベッドサイドの棚を示す。そこには使い捨ての弁当箱がいくつも並び、中にはあっさりした料理が詰められていた。パンやサンドイッチ、ケーキまであり、なかなか豪華だ。佑人はすぐ駆け寄り、箱に顔を近づけて匂いを嗅ぎ、待ちきれずに手を伸ばして開けようとする。だが優奈が手で制した。「ひいおじいちゃんがまだ食べてないわ。先に持って行ってあげて」小さな眉がぎゅっと寄る。「さっきもう謝りに行ったのに......まだ行くの?」優奈は根気よく言う。「謝るだけじゃ足りないの。謝罪には気持ちも添えないと」佑人は唇を噛み、黙り込む。優奈は肩をつかむ。「さあ、朝ごはんを届けてあげて。ひいおじいちゃんの機嫌を直るのよ」気は進まないが、なだめられ、いくつかの弁当箱を手に取る。小さな顔いっぱいに不満を浮かべ、小さな歩幅で、ゆっくり、ゆっくりと敬一郎の病室へ向かう。歩みはわざと遅く、到着を引き延ばそうとする。けれど病室はすぐ隣だ。どれだけ引き延ばしても、あっという間に扉の前へ着き、仕方なく押し開けて中へ入った。弁当箱をそっと抱え、声を低くする。「ひいおじいちゃん、朝ごはん、もう食べた?」敬一郎は届けられた新聞に目を落としていたが、声に顔を上げる。佑人は緊張で目をすぼめ、ゆっくり近づく。「ひいお
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