All Chapters of 娘が死んだ後、クズ社長と元カノが結ばれた: Chapter 1251 - Chapter 1260

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第1251話

遥樹が病室を出ると、先ほどの3人のうちの一人が近づいてきた。遥樹は短く言い渡す。「少し外す。ここを頼んだぞ」男はうなずき、そのまま蒼空の病室から少し離れた長椅子に腰を下ろした。遥樹は瑛司の病室の前まで来て、手を上げてノックする。すぐに中からドアが開き、現れたのは秘書だった。彼女は扉を押し開け、通れるだけのスペースを空ける。「どうぞ」遥樹は軽くうなずき、中へ入る。秘書はタイミングよく病室を出ていき、ドアを閉める直前に一度だけ振り返った。遥樹はそのまま瑛司のベッドの前まで歩み寄り、見下ろす。瑛司はベッドの背にもたれ、手に書類を持っていたが、遥樹が近づいてようやくゆっくりと眼鏡を外し、書類をサイドテーブルに置いた。二人とも驚くほど落ち着いている。さっきまで激しくぶつかっていたとは思えないほどだ。安莉は目を伏せ、最後の隙間まで扉を閉めた。沈黙を破ったのは瑛司だった。「座れば?」遥樹は首を振る。「いい。少し話して帰る」「そうか」遥樹はその、一発殴ってやりたくなるような顔を見据えながら言った。「今回で最後にしたい。もう蒼空に付きまとうな」瑛司は眉を上げ、わずかに意外そうな顔をする。「指輪のことを聞くと思っていたが」遥樹は淡々と答える。「そんな話はもうどうでもいい。もう終わったことだ。今大事なのは、彼女の指にあるのが俺の指輪であって、お前のじゃないってこと。それで十分だ」瑛司は特に驚く様子もなく、ただ軽く笑った。遥樹は視線を逸らし、静かに続ける。「お前も理解したほうがいい。彼女との過去はもう終わってる。それにしがみついてると、みっともないぞ」瑛司は口元をわずかに歪める。「だが、お前は気にしているように見える」遥樹の表情は変わらない。「気にするかどうかと、終わったかどうかは別だ。俺がどう思おうと、お前と彼女の関係はもう終わってる」しばらく沈黙が落ちた。消毒液の匂いだけが、静かな空気の中に漂う。やがて瑛司が口を開く。「前より余裕があるな。蒼空にプロポーズを受けてもらったからか」遥樹は彼を見て、あっさり認めた。「そうだ。それが不満か?」瑛司は軽く笑い、サイドテーブルに置いてあったタブレットを手に取ると、画面を操作する。「ちょうど
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第1252話

タブレットの画面に映し出された内容をはっきりと見た瞬間、遥樹の表情が一気に沈んだ。画面には、三種類のダイヤモンドリングのデザイン案が並んでいる。どれも精巧で、どれも芸術品のような完成度――デザイナーのこだわりが一目でわかる出来だった。遥樹は冷ややかに視線を瑛司へ移す。「お前、頭おかしいのか?」瑛司は気にも留めず、なおも問いかける。「どう?蒼空の恋人として見て、どれが好みだと思う?どれも違うなら構わない、デザイナーにまた新しく作らせるから」さらに続ける。「前に一度、彼女に指輪を渡したことがある。でも、あまり気に入っていない気がして。だからもう一つ贈ろうと思っているんだが......どう思う?」もう聞いていられない。遥樹は手を上げ、瑛司の持っていたタブレットを叩き落とした。タブレットは柔らかいベッドの上に落ちる。次の瞬間、遥樹は低く身をかがめ、瑛司の襟を掴んだ。その整った顔には冷気が満ち、至近距離で睨みつける。「警告したはずだ。俺の婚約者に近づくなって。こんな卑怯な真似はもういい加減にしろ。堂々たる松木グループの社長が、まさか愛人にでもなるつもりか?」――婚約者。その言葉を聞いた瞬間、瑛司はわずかに意識が揺らぐ。遥樹のプロポーズが成功したという事実が、より鮮明に突きつけられた。もう「彼女」ではない。「婚約者」だ。より親密で、未来を当然のように語れる関係。その現実が、胸の奥に不快なざわめきを生む。瑛司は至近距離の遥樹の目を見つめ、ふっと笑った。そして自分の襟を彼の手から外し、骨ばった指で皺を軽く整える。「ムキになるな」淡々とした口調で言う。「ただの冗談だ」遥樹は体を起こし、手のひらを軽く叩いて、存在しない汚れを払うような仕草をする。視線は冷え切っていた。「お前がどんな指輪を贈ろうが、蒼空は気に入らない。無駄なことはやめろ」瑛司はまったく意に介さない。むしろ楽観的な口調だ。「それでも構わない。試してみないと結果はわからないだろう?君だって、プロポーズする前から成功を確信していたわけじゃないはずだ」まるで、教師を困らせる問題児のようだ。規則を破ることを楽しみ、何を言っても聞かない。今の瑛司は、遥樹にとって学生時代に出会ったどんな問題児
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第1253話

遥樹は最後にもう一度、瑛司のタブレットに視線を落とし、言った。「忠告だ。今のうちにキャンセルしとけ。蒼空はお前の指輪なんて絶対受け取らない。無駄金になるだけだ」瑛司は平然と返す。「構わない。金ならいくらでもある。そのうち、蒼空にも君にも満足してもらえる指輪を作れるさ」遥樹は言葉を失った。結局、この会話もまた、瑛司の露骨な図々しさの前に終わりを迎える。新たな認識を抱きながら、遥樹が背を向けて立ち去ろうとした、そのとき――背後から、低くくぐもった声が届いた。「そんなに急ぐな。まだ話は終わってない」遥樹は振り返らず、淡々と答える。「まだ何か?」瑛司は問いかける。「蒼空へのプロポーズ、君の祖父は知っているのか?」遥樹の動きがわずかに止まる。瞳がかすかに揺れ、色が一段と深く沈む。「......何を知ってる?」瑛司は続けた。「具体的にはそうだな......君の家の問題は片付いたのか?確か少し前まで、日下家の一人娘と婚約していたはずだが?それでよく蒼空にプロポーズなんてできたな」遥樹は短く言い捨てる。「お前には関係ない」瑛司は首を横に振る。「いや、関係あるさ。俺はただ蒼空のことを心配しているだけだ。今は彼女と一緒にいなくても、少なくとも今の恋人が誠実な男であってほしいと願ってる。彼女を傷つけないようなね。だが俺の見る限り、君はそんな男ではない。家に決められた縁談、まだ片付いていないんじゃないか?」遥樹の目が鋭く沈む。「部外者のお前に、口出せる問題じゃない。家のことはもう片付けてある。蒼空に不自由はさせない。退院したら、俺の家に連れて帰るつもりだ」そう言って振り返った瞬間、彼の視線が止まる。瑛司が再びタブレットを掲げていた。だが今度の画面は、さきほどとはまったく違う。映っていたのは、一枚の写真。複数人での食事の場面だ。しかもはっきりと写っている。遥樹の祖父、そして日下家の両親と日下菜々――その会食の様子が。瑛司は遥樹の表情を見つめながら、ゆっくりとタブレットを下ろした。「これが『片付いた』ってやつか?」静かに言い放つ。「数日前に撮られた写真だ。君の知らないところで、祖父は君の婚約者候補の家族と会っている。それで『解決した』とは、ずいぶん都合がい
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第1254話

遥樹はさらに容赦なく言い放つ。「そういえば、数日前に俺の部下から聞いた話だけど......お前の祖父と息子が首都に来てるらしいな。元妻の件で、あちこち駆け回って助けようとしてるとか。俺から見れば、松木社長の家庭事情もずいぶん散らかってるみたいだが?それでよく他人のことに口出しできるな。さっさと自分の問題を片付けたらどうだ」――それが遥樹の自信の源だった。瑛司は離婚歴があり、さらに子どももいる。この事実は、どれだけ取り繕っても消せない。それこそが、彼にとって最大の弱点だ。蒼空が見る目を持っているなら、恋愛経験もなく身軽な自分を差し置いて、わざわざバツイチ子持ちの男を選ぶはずがない。この一点だけでも、瑛司は決して自分には及ばない。遥樹はさらに追い打ちをかける。「それともう一つ。松木社長、もう三十は超えてるだろ?もう年なんだから、こんな関係ないことに首突っ込んでないで、健康管理にでも精を出したらどうだ」冷ややかな視線の先で、瑛司の表情がゆっくりと沈んでいく。この会話で、どちらも得るものはなかった。胸の内に残る感情は、それぞれにしかわからない。遥樹は最後にもう一度、瑛司の手にあるタブレットをちらりと見て、ふっと笑った。「では、しっかり休めよ。蒼空には介護士を手配させておく。遠慮はいらないよ。蒼空の『婚約者』として当然のことをしただけだからな」「婚約者」という言葉をわざと強く言い切ると、そのまま背を向け、病室を後にした。中から足音が聞こえた瞬間、安莉はすぐに姿勢を正し、何事もなかったかのようにドアの前に立つ。ドアが開き、遥樹が出てくる。安莉は軽く会釈した。「時友社長」遥樹は無表情のままうなずき、そのまま蒼空の病室へ戻っていく。静かにドアを閉めると、窓から差し込むわずかな光の中で、ベッドに横たわる人影を見つめた。さっきまでのざわついた心が、少しずつ落ち着いていく。視線もやがて柔らかさを帯びていった。彼は足音を忍ばせて近づき、ベッドのそばにしゃがみ込む。どこか焦るように、布団の端をそっとめくり、蒼空の左手を探し出して、ゆっくりと握った。そのまま視線を落とす。左手の薬指に光るダイヤの指輪。それを見つめていると、ようやく心が静まっていく。この指輪こそが、二人の関
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第1255話

蒼空は無意識に顔を布団の中へ押し込み、少し体を動かしてから、再び静かになった。遥樹はそんな彼女を見つめ、目の奥にわずかな笑みが滲んでいく。彼女を見ていると、まるで時間が止まったかのようだった。騒がしさはすっと遠ざかり、この薄暗く静かな病室だけが残る。遥樹は立ち上がり、蒼空のベッドを一瞥する。だが、自分が横になれるだけのスペースがないことに気づき、残念そうに息をついた。仕方なく付き添い用のベッドに移り、横向きになって、離れた場所から彼女の寝顔を見つめる。目元には満ち足りた喜びが浮かんでいた。やがて眠気に襲われ、彼もゆっくりと目を閉じた。先に目を覚ましたのは蒼空だった。腕の傷のせいで、眠っている間も無意識に姿勢を制御していたため、同じ体勢を保ち続けてしまい、起きた瞬間、体はこわばり、筋肉も少し痛んでいた。彼女はまばたきをし、ぼんやりと隣の付き添いベッドにいる遥樹の姿を捉える。遥樹は目を閉じ、呼吸は規則正しく、まだ目覚めていない。蒼空は目をこすりながら、ゆっくりと体を起こし、ぼんやりとベッドの背にもたれかかる。首のこりをほぐすように手を伸ばした、その時。ふと、手に触れたものの冷たさに首元をかすめられ、彼女は一瞬固まった。手を下ろして見る。意識が徐々に戻り、彼女は左手の薬指にはめられたダイヤの指輪をじっと見つめた。部屋は厚いカーテンに遮られ、照明も落とされていて、完全な暗がりに包まれている。その中で、ただ一つ――その指輪だけが、かすかな光を反射していた。彼女は視線を落とし、じっと見つめる。眠気が薄れ、やがて思い出す。眠る前、遥樹にプロポーズされた。そして自分は、それを受け入れたのだと。胸の奥が微かに揺れ、思わずその指輪に触れようと指を伸ばす。その時、ふいに隣から声がした。「外すの?もしかして......後悔してる?」蒼空は心臓が跳ねるのを感じ、振り向いた。遥樹は枕に頭を乗せたまま、こちらを向いている。視線はどこか恨めしげだ。「いつ起きたの?」蒼空が問うと、遥樹はそのままの表情でゆっくりと体を起こし、ベッドの端に腰を下ろした。「さっき」そして、すぐにもう一度問いかける。「......後悔してる?」蒼空は彼の視線を追い、自分の手元を見る。そこで
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第1256話

遥樹は眉をひそめ、困ったような顔をする。まるで散々悩んだ末に、ようやく折れたかのように。「......分かったよ。そこまで言うなら、仕方ない。できるだけ早く君の手でつけてくれよ」――とはいえ、実際にはにやけ面を抑えきれない様子だった。蒼空は横目で彼を見やる。「もう、素直じゃないんだから」その瞬間、遥樹はくるりと振り向き、彼女を抱き寄せた。「俺はそういう男だってことは、とっくに分かってただろ。今、めちゃくちゃ嬉しいんだから許して」「いいけど、少し待ってもらうことになるよ。デザイナー探さなきゃいけないし、すぐには無理」遥樹は彼女の肩を掴み、じっと見つめる。わざと声を落とし、低く響かせる。「大丈夫。蒼空のためなら、どれだけでも待つよ」蒼空は微笑んだ。「まだそのセリフを続けるなら、なしにするけど」遥樹の表情が一瞬で変わる。「ダメダメ!もう約束したじゃないか」蒼空は彼の頬に触れた。「お腹すいた。デリバリー頼んで」遥樹はすぐにベッドから降りた。「分かった、すぐ手配する」彼が電話をかけている最中、蒼空のスマホが鳴る。以前、瑛司の世話を頼んでいた介護士の女性からだった。「もしもし。あ、もう着いた?」「はい」蒼空は遥樹をちらりと見て、小声で言う。「じゃあ、今から1204号室に行ってください。中にいるのが以前担当してもらった松木さんです。何かあれば私に連絡を。では、よろしくお願いします」手短に電話を切る。遥樹が近づいてきた時、顔色はあまり良くなかった。「......松木に介護士つけたの?」蒼空は頷き、冗談めかして言う。「そうよ。遥樹も欲しいの?手配してあげるけど」彼が不機嫌になるのは分かっていたから、軽く場を和ませるつもりだった。遥樹は眉を上げ、低く鼻を鳴らす。「いい。あいつみたいに役立たずじゃないし。俺は蒼空の面倒を見る側だから」蒼空は彼の手の甲を軽く叩く。「何言ってるの。あの人、私を助けてくれたんだよ」遥樹は眉をしかめ、さらに不満げになる。「......それであいつの肩持つのか?」蒼空は彼の手を引き、隣に座らせた。「変な嫉妬しないで。あの人とは何もないって、もう言ったでしょ」遥樹は彼女の肩に頭を預けたまま、黙り込み、不機嫌そ
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第1257話

ところが瑛司はあっさりと言った。「いらない。帰してくれ」安莉は一瞬言葉に詰まり、確認するように尋ねる。「......どちらを、ですか?」瑛司は彼女に余地を与えなかった。「君が連れてきた方だ。そんなに人数はいらない」安莉は深く息を吸い、蒼空が手配した介護士の女性に目を向ける。その視線にはわずかに冷たさが宿っていた。介護士の女性はその気配に気づき、一瞬戸惑って視線を落とす。「分かりました」安莉はきっぱりとそう言い、振り返って自分が連れてきた介護士の女性を連れて出ていった。廊下に出ると、安莉は淡々と言い放つ。「聞いたでしょう?お疲れ様、もう帰っていいですよ」介護士の女性は苦笑いを浮かべる。「それは困ります。条件を見て他の依頼を断って来たんです。いらないというのなら、それなりの補償はいただかないと」安莉は苛立ちを抑えきれず、表情も険しくなる。財布を取り出し、中から数枚の万札を抜いて差し出した。「これでいい?」介護士の女性はためらいながらも言う。「これだけ、ですか?」安莉はその手に無理やり押し込み、冷たく言い切った。「これ以上はない」女性は仕方なく受け取るが、小声でぼやく。「お金もないのに介護士なんて雇うなよ」安莉は眉をひそめた。「今、何て言った?」介護士の女性は鼻で笑い、金をポケットに入れて背を向け、そのまま去っていった。安莉の胸の中の苛立ちはさらに膨らむ。彼女は冷たい目でその背中を見送り、病室へ戻った。中に入ると、蒼空が手配した介護士の女性が瑛司のそばで水を注いでいるのが目に入る。その光景に、胸の奥が一層重くなる。その介護士は、先ほどのやり取りを蒼空に伝えていた。蒼空からの返信はこうだ。【帰らせていないなら、そのままいてください。お給料は私が払います】介護士の女性はほっと息をつき、背筋を伸ばした。――ホテル。優奈が甲高い声を上げる。「何ですって?相馬さんが捕まった?いつの話?どうして捕まったの?」和人は苛立った様子で頭をかきむしりながら、調べた情報をすべて話す。「昨日の夜、相馬さんは関水を拉致して、対馬たちに示談書を書かせて瑠々姉の件の証拠を消させようとしたんだ。瑠々姉を引き上げるために。順調だったはずなのに...
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第1258話

優奈は頭が真っ白になり、どうしていいかわからず、かすれる声で呟いた。「どうして......」五年前のあの頃、あの卑屈で気弱だった養女が、まさか瑛司にあそこまで大切にされる存在になるなんて、誰一人として想像していなかった。最も信頼していた人に裏切られたような感覚が胸に広がり、優奈の目は赤く染まる。彼女はスマホを取り出し、瑛司に電話をかけようとした。「兄さんに聞く。本人の口から、どういうことなのか確かめないと」和人は眉間に深い皺を寄せ、重苦しい声で言った。「嘘じゃない。警察から聞いた話だし、間違いようがない。それに......兄さんは今、たぶん関水と一緒に病院にいる。電話したら、彼女の声まで聞こえるかもしれないぞ」優奈はスマホを握りしめたまま、茫然とした目で呟いた。「......じゃあ、どうすればいいの?」和人は苛立ちを隠せない様子で言う。「今一番の問題は相馬さんが捕まったことだ。どうにかして、あの人を刑務所から出す方法を考えないと」この間、相馬が瑠々のために奔走してきたことは、二人ともよく知っていた。彼がいることで、少なからず心の支えにもなっていた。だが今は、瑠々を助け出すどころか、相馬自身が捕まってしまった。優奈は、肩にのしかかる重圧がさらに増したように感じ、胸の奥が落ち着かない。スマホを握りしめたまま、不安げに呟いた。「......やっぱり、おじいちゃんに聞いてみる」ここ数日、敬一郎は毎日外出しており、付き添いは秘書のみ。他の者は誰も同行を許されていなかった。佑人でさえ例外ではない。佑人もこのところは妙に聞き分けがよく、曾祖父が忙しくしていることを理解していた。優奈や和人も人脈を頼って奔走しており、彼に構う余裕がない。それでも彼は駄々をこねることもなく、毎日ひとりでおもちゃで遊び、テレビを見て、時間になるときちんと寝る。これまでで一番大人しいと言っていいほどだった。今も、ホテルの部屋のリビングでひとり、テレビのアニメの音がドア越しにかすかに漏れてきている。和人は疲れたように頷いた。「そうだな。おじいちゃんがどう考えてるか、俺も気になる」優奈は敬一郎に電話をかけた。すぐに繋がる。少し緊張した声で言う。「おじいちゃん、今お時間ありますか?」敬一郎は軽
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第1259話

和人はうなずいた。「分かってる、もう弁護士には連絡してる」二人は黙ったまま座り続けた。空気は凍りついたように重く、死のような静けさが広がっていく。優奈は目を赤くしながら、手で目元をこすった。「おじさんとおばさんって、相馬さんと仲良かった。今もきっと連絡を待ってると思うし......やっぱり一度知らせたほうがいいよね」和人はうなずき、反対はしなかった。優奈は典子に電話をかける。その瞬間、肩にのしかかる重みがさらに増した気がした。ずしりと重く、息苦しいほどだった。このところ、久米川夫婦は瑠々のことで奔走し続けている。そんな中で相馬が逮捕されたと知れば、どれほどの衝撃を受けるのか――それに耐えられるのか、分からなかった。電話はすぐにつながり、向こうからは疲れをにじませながらも、どこか期待を含んだ声が聞こえてきた。「優奈?電話くれたってことは、何か分かったの?」優奈は胸が詰まり、鼻の奥がつんとする。「おばさん......お伝えしないといけないことがあります......あまり良くない話なんですが......」電話の向こうが一瞬静まり返る。やがて、典子は恐る恐る口を開いた。「......どんな話?まさか瑠々に、また何かあった?」優奈は慌てて否定した。「いえ......別の人のことです」ほっとする間もなく、続けて言う。「でも......瑠々姉とも関係があります」典子の心臓は激しく鼓動し、息が詰まりそうになる。頭上にたまっていた重苦しい雲が、さらに濃くなったようだった。「......大丈夫。覚悟はしてるから......言って」胸を押さえながらそう言う彼女の顔はやつれており、かつて黒々としていた髪には、はっきりと白いものが混じっていた。物音に気づいた慎介がそばに来て、彼女の肩を支える。「どうした?」典子は首を横に振り、スマホをスピーカーにして彼にも聞こえるようにした。電話の向こうで、優奈は言葉を選びながら、どうすれば衝撃を和らげられるか考えていた。やがて、静かに口を開く。「......実は、相馬さんのことなんですが」その一言で、典子の呼吸が止まる。夫と顔を見合わせ、震える声で問う。「相馬が......どうしたの?」優奈はゆっくりと言った。
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第1260話

優奈も首を振った。「私も分からない......本当に不思議で」相馬は海外に会社を持ち、可愛い娘もいる。常識的に考えれば、こんな衝動的な行動を取るはずがない。もし彼が刑務所に入れば、娘や会社はどうなるのか――優奈は言葉を失い、眉間のしわをさらに深くした。典子は慎介に支えられて椅子に座り、ため息をつき続ける。「瑠々のせいで、あの子は巻き込まれたのね......いい子なのに。瑠々のためにここまでできるなんて、本当にいい子だったのに......一緒に瑠々を迎えに行こうって約束して、まだ果たしてもいないのに......どうしてこんなことに......」優奈も胸が締めつけられるようで、小さな声で言った。「こちらはもう弁護士には依頼しています。せめて減刑できるよう、できるだけ頑張ります」典子は受け入れ難い現実に押し潰されそうになりながらも、どうにかそれを受け止めるしかなかった。しかし次の瞬間、彼女は目を開き、話題を変える。「じゃあ関水は?今はどうなったの?」優奈の口から、自分が望む答えが出てくることを期待していた。だが、その期待は裏切られる。「関水蒼空は警察に保護されて、今は入院しています。大きな問題はなさそうです」典子は再び目を閉じた。――まただ。またあの関水蒼空だ。誰であれ彼女と関われば、何一つ得るものがない。瑠々もそうだった。相馬もまた同じ。蒼空は忌々しい疫病神のような存在で、典子は今すぐにでも排除してしまいたいとすら思っていた。再び口を開いた時、彼女はまるで数歳老け込んだようだった。「本当にバカな子ね......相馬は。どうしてあんなことを......」優奈は歯を食いしばり、つらそうな目をした。典子は深く息を吸い、言う。「分かったわ......様子を見て、あの子に会いに行くことにするよ。じゃあ、一旦切るわね」優奈はうなずき、通話を切ろうとしたその時、隣で電話をしていた和人が、驚いた顔で近づいてきた。彼女は戸惑う。「どうしたの?」電話の向こうの典子は、まだ通話が切れていないことに気づかず、そのまま静かに耳を傾けていた。和人が言う。「さっき連絡が来た」優奈の胸がどくりと跳ねる。「相馬さんに、また何かあったの?」和人は重くうなずいた。「
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