礼都は軽く笑って言った。「先に病院へ行こう」車に乗る際、礼都は瑠々に手を差し出した。「荷物、僕が持つよ。あとで車に置いておく」瑠々はうなずき、賞状などをすべて礼都に渡した。受け取った礼都は何気なく目を通し、賞状の順位を見て一瞬目を止める。「三位?」すでに車に乗り込んでいた瑠々は、その言葉を聞いて体がわずかに強張った。彼女の周囲の人間は皆、彼女の強い勝負欲を知っている。一位が好きなのではなく、一位しか要らない。どんな大会でも、彼女は常に一位を求めてきた。とりわけ礼都は、その勝負根性を誰よりも理解している人物だ。彼女にとって、一位以外は負けと同じ。それは紛れもない屈辱だった。だが今回は、美紗希と完全に決裂してしまい、裏切らない代役作曲者を見つけることができなかった。仕方なく、自分一人で引き受けるしかなかったのだ。その結果、ピアノ曲の完成度は目に見えて落ちた。ステージに上がる前から、彼女は強い不安に襲われていた。この出来で、果たして決勝に進めるのか。同時に、蒼空や美紗希が、前回のように告発してくるのではないかという恐怖もあった。二つの不安が重なり、緊張は極限に達していた。そのせいで、出番前、彼女は何度も振り返って蒼空の様子をうかがっていた。幸いにも、本番では演奏自体は悪くなく、曲の弱さをある程度カバーできた。結果はぎりぎりの三位だったが、何とか決勝進出は果たした。今の彼女にとっては、まさに天からの恵みのような結果だ。だが、長いキャリア全体で見れば、これはほとんど悪夢に近い。それでも、その苦しさを礼都に打ち明けることはできなかった。彼はずっと、この曲が彼女自身の創作だと信じている。真相を知らない以上、口に出す勇気はなかった。胸が締めつけられる思いを抱えながらも、表情は崩さずに説明する。「今日は調子があまり良くなくて......だから三位だったの」不安げに顔を上げ、彼を見つめた。「礼都は、気にしないよね?」礼都は一瞬、疑問を抱いたが、瑠々の目に浮かぶ落ち込みを見て、それ以上考えることはできなかった。慌てて言う。「何をだ?この成績、全国で見ても十分トップクラスだよ。瑠々は自分に求めるレベルが高すぎるだけなんだ。少しはハードルを下げて、自分を
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