(竜一 視点)「その『マトリ』は存在自体が厄介だな」『殺しますか?』「今は不味い。出来れば丹野組で始末してもらいたいものだな」『情報をリークしますか?』「『マトリ』と速水が関わったばかりの現状で、石井が『マトリ』だとばれるのは不味い」俺は唇を噛む。「速水まで丹野組に疑われて、地下に堕とされたらどうする。その『マトリ』は速水と心中するつもりなのか?」『あー、ありえますね』モグラが笑う。『死に場所を探している内に、心中相手を見つけちゃったのかもしれませんよ。無理心中になりますけど。ところで、そろそろ……速水さんを囲ってくれませんか、竜一さん』俺はモグラの言葉にすぐには返事が出来なかった。喉が締め付けられる思いに駆られた。それでも、無理矢理言葉を絞り出す。「まだ時期が早い」『早くないです。速水がこの街を出ていけない様に、しっかり囲ってください』モグラの声が冷たくなる。『それとも、この街を機能不全にするつもりですか? 竜一さんは、この街が好きでしょ?』「親父がテロリストを多数抱えているという話ならもう聞き飽きた。そんな戯言に付き合うつもりは無い!」『別にテロリストといっても、ちょっと世間に不満を持った半地下の住人ですよ?』モグラが淡々と続ける。『別にどこかに爆弾を仕掛けるわけでも、毒ガスをまき散らすわけでもない。ただ、彼らにはちょっとした技術があるだけ』彼の声が響く。『水道管を破壊したり、電気配線を壊したり、ネット回線を潰したり。ライフラインにダメージを与えるだけで、街を一つくらい機能不全にできます。それが何度も続けば、その街はもうゴーストタウンでしょ?』「馬鹿らしい!」『だけど、貴方なら自分の父親がその馬鹿らしい計画を推し進めた気狂いだと知っているはずだ』モグラの声が鋭くなる。『貴方は、巷では錬金術師だと言われているそうですね。だが、それは違う。あんたは、清一さんから半地下の住人の管理を任されていただけだ』彼が嘲笑う。『そこから流れてくる違法な金を洗浄しているだけのあんたに金儲けの才は無い』「そんな事は、分かっている」——指摘されなくても分かっている。俺に金儲けの才能など無い。ただし金を洗浄する才には恵まれたらしい。親父が築き上げた半地下の住人のネットワークから流れて来る違法な金を、洗浄して綺麗になった金を半
Last Updated : 2025-12-22 Read more