All Chapters of 君が抉った心の傷に、まだ宿る名はない〜性奴隷は泣かない〜: Chapter 91 - Chapter 100

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第90話 竜一の囲い②

(竜一 視点)「その『マトリ』は存在自体が厄介だな」『殺しますか?』「今は不味い。出来れば丹野組で始末してもらいたいものだな」『情報をリークしますか?』「『マトリ』と速水が関わったばかりの現状で、石井が『マトリ』だとばれるのは不味い」俺は唇を噛む。「速水まで丹野組に疑われて、地下に堕とされたらどうする。その『マトリ』は速水と心中するつもりなのか?」『あー、ありえますね』モグラが笑う。『死に場所を探している内に、心中相手を見つけちゃったのかもしれませんよ。無理心中になりますけど。ところで、そろそろ……速水さんを囲ってくれませんか、竜一さん』俺はモグラの言葉にすぐには返事が出来なかった。喉が締め付けられる思いに駆られた。それでも、無理矢理言葉を絞り出す。「まだ時期が早い」『早くないです。速水がこの街を出ていけない様に、しっかり囲ってください』モグラの声が冷たくなる。『それとも、この街を機能不全にするつもりですか? 竜一さんは、この街が好きでしょ?』「親父がテロリストを多数抱えているという話ならもう聞き飽きた。そんな戯言に付き合うつもりは無い!」『別にテロリストといっても、ちょっと世間に不満を持った半地下の住人ですよ?』モグラが淡々と続ける。『別にどこかに爆弾を仕掛けるわけでも、毒ガスをまき散らすわけでもない。ただ、彼らにはちょっとした技術があるだけ』彼の声が響く。『水道管を破壊したり、電気配線を壊したり、ネット回線を潰したり。ライフラインにダメージを与えるだけで、街を一つくらい機能不全にできます。それが何度も続けば、その街はもうゴーストタウンでしょ?』「馬鹿らしい!」『だけど、貴方なら自分の父親がその馬鹿らしい計画を推し進めた気狂いだと知っているはずだ』モグラの声が鋭くなる。『貴方は、巷では錬金術師だと言われているそうですね。だが、それは違う。あんたは、清一さんから半地下の住人の管理を任されていただけだ』彼が嘲笑う。『そこから流れてくる違法な金を洗浄しているだけのあんたに金儲けの才は無い』「そんな事は、分かっている」——指摘されなくても分かっている。俺に金儲けの才能など無い。ただし金を洗浄する才には恵まれたらしい。親父が築き上げた半地下の住人のネットワークから流れて来る違法な金を、洗浄して綺麗になった金を半
last updateLast Updated : 2025-12-22
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第91話 竜一の囲い③

(竜一 視点)『清一さんは死を予期した時に、速水に関わるであろう三人の男たちにばらばらの遺言を残した』モグラが語り始める。『弟の清二さんには、速水を殺して山に埋めてやってくれと遺言を残した。竜二さんには、速水をこの街から連れ出してやってくれと遺言を残した』彼の声が沈む。『そして、竜一さんには速水を死ぬまで一生囲って逃すなと遺言を残した。実に、清一さんらしいですね』モグラが笑う。『自分の『死』さえも娯楽に変えるのだから。よほど娯楽に飢えていたんでしょうね。俺を調教したのもただの娯楽。俺はその調教で、すっかり清一さんの犬になってしまいましたけどね』「全てが娯楽か」拳をきつく握る。「半地下の住人をテロリストに仕上げる事もただの娯楽。全てが親父の娯楽」『お、少しは信じてくれました?』「分かっている事は親父は……清一は完全に狂っていたという事ぐらいだな」『それで、正解ですよ』モグラの声が冷たい。『で、どうしますか? もし、清二や竜二が清一の遺言を実行して、あるいは第三者がどんな形であれ速水をこの街から連れ出したなら、テロが起こって街は機能不全に陥る』彼の言葉が俺の胸を抉る。『貴方は資金源を失い、青山組は終わりだ。この街を離れた速水が安全でいられるかも不明瞭だ』モグラが続ける。『だけど、青山組というバックも半地下の資金源も失ったあんたでは、何も守れない。無防備な速水は、すぐに『性奴隷』に堕とされるだろうな。多くの男に突っ込まれて、輪姦されて、やがては廃人だ』「モグラ……黙れ」『悪いね、口うるさくて。だが、俺はこの街が好きなんだ』モグラの声が静かに響く。『綺麗な街に住む人間には、この街は汚く映るかもしれないけど……この街が気に入っている。清一さんはこの街を嫌っていたけどね。そこは意見が異なる処かな』彼の声が変わる。『俺は清一さんの犬だが、公安の犬でもある。公安にもテロの情報は流したから、半地下の人間もそう簡単にはテロを起したりはしないだろう』モグラが警告する。『だが、奴らが清一の飼い犬だって事を忘れるな。速水がこの街を出れば、必ずテロは起こる。清一に一度調教された人間は、もう後戻りはできないんだよ。俺みたいにな』彼の声が沈む。『速水だってそうだ。あいつをもう一度、囲ってやれ。それが、一番安全だ』「お前に指図を受けずとも
last updateLast Updated : 2025-12-24
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第92話 俺のものになってくれ

(速水 視点)「お前を屋敷に囲う。その前に……一度だけでいい。俺のものになってくれ、速水」「僕を囲う理由を説明して、竜一さん」竜一は衣服を脱ぎ捨てると全裸となり、僕と肌を合わせた。既に服を剥ぎ取られた僕は、触れ合う肌の熱に吐息を漏らした。竜一は僕の首元にキスを落としながら、そっと囁いた。「お前を青山の屋敷に囲うつもりだ」竜一の声が静かに響く。「以前、母が住んでいた離れ家がある。今も綺麗に保っているから、快適に過ごせるはずだ」彼の手が僕の頬を撫でる。「出来るだけ不自由なく過ごせるように配慮する。俺がお前を犯すのも……今回だけだ」「答えになっていないよ、竜一さん」「お前を囲う理由を説明すれば、抵抗せずに俺のものになってくれるか?」僕はゆっくりと目を瞑った。そして、僕に覆いかぶさる幼馴染の背中にゆっくりと腕を回した。竜一は僕のその行為に、僅かに身じろぎした。僕は目を瞑ったまま思わず笑ってしまった。そして、ゆっくりと目を開く。その目に竜一さんを映しながら、僕は幼馴染に話しかけた。「竜一さんは、やっぱり正直だね」僕は竜一を見つめる。「僕を幼馴染として愛してくれている。でも、『性奴隷』としての僕の事は嫌悪している」僕の声が震えた。「潔癖すぎる竜一さんに……僕が抱けるかな?」「煽るな、速水。お前を傷つけたくはない」「もう傷つけているよ!」僕の声が跳ね上がった。「僕が囲われる事に恐怖を感じないとでも思っているの? たとえ相手が幼馴染の竜一さんでも、閉じ込められるのは耐えられない」喉が震える。「それを僕に強要するのなら、竜一さんは僕に説明すべきだ。貴方は、僕の事を幼馴染として愛してくれているけど、この体には興味はないでしょ?」涙が滲んだ。「僕を囲う理由が分からないよ……」「俺は、親父とは違う」竜一が僕を見つめる。「お前にセックスを強要するのは、今回だけだ。屋敷に囲った後は、お前が望まない限り肌には触れない」彼の声が優しい。「お前は、離れ家で穏やかに過ごせる。欲しいものは全て与える。だから、囲う理由は聞かないでくれ」「僕にセックスを強要しないのは、竜一さんがそうしたくないだけでしょ?」僕は竜一を見つめた。「でも、僕を囲えば周りの人間は竜一さんの事を失望の眼差しで見るようになると思うよ」僕の手が竜一の腕を掴む。「その
last updateLast Updated : 2025-12-26
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第93話 幼馴染を失いたくない

(速水 視点)僕は身を捩って、その行為から逃れようとした。だが、逃げる僕の唇に竜一の唇が重なる。竜一の舌が歯列を割って僕の口内に侵入する。「んっ……ふぅ……んんっ」「んっ……」唇を解放されて息を吸い込むと、再び唇を奪われる。それを繰り返されて思考がぼんやりとかすむ。深く潜る舌が僕の舌を絡めとり、卑猥な水音がくちゅりと室内に響いている。「んんっ……はぁ……はぁ、やだ、やめて……」「速水……俺のものになれ」「やっ、……んんっ……っつ」室内にはアロマキャンドルの甘い香りが妖しく漂っていた。その香りに煽られるように胸が高鳴り、翻弄されるままに竜一の舌に応じた。僕は何時の間にかポロリと涙をこぼしていた。不意に、竜一が僕から身を離した。そして、テーブルに置かれたアロマキャンドルの揺れる炎を消した。「竜一さん……」「同意もなしにセックスはしたくない」竜一の声が震える。「いや、俺は怖い。幼馴染を失う事が……怖くてたまらない」「僕も幼馴染を失いたくない」僕は竜一を見つめた。「だから、説明が欲しい……竜一さんの口から説明が欲しいよ」「……荒唐無稽な話だ」竜一がため息を吐く。「だが、親父が関わっていると思うと、俺には完全には否定できなくなる」「その荒唐無稽な話を聞かせて、竜一さん?」竜一は床に落ちかけの掛布団を掴むと、僕の横に寝転がって布団を掛けた。互いの裸体の温もりがふわりと僕と竜一を包んだ。それは生々しく互いの皮膚を刺激し心を煽った。竜一は僕の頬を優しく撫でながら、ゆっくりと語りだした。「親父の清一はこの街を嫌っていた」竜一の声が静かに響く。「この街で生まれ、この街で育ちながら、この街に馴染めなかったようだ。だが、その気持ちは分からなくもない」彼の目が遠くを見る。「俺もこの街が好きになれない。時々息が詰まる。それでも、この街には多くの繋がりがある。その繋がりが愛おしくもあり、息苦しくもある」「僕もその繋がりに入ってる?」竜一は笑って僕の頬に唇を寄せた。「ああ、速水との繋がりが……最も愛おしくて、最も息苦しいかもしれないな」「酷いなぁ。僕は竜一さんに息苦しさなんて感じた事は無いのに……」「そうか? 解離状態の速水は俺の事が嫌いだと、はっきりと言い切っていたぞ?」「えっ!?」「まあ、当然だな」竜一が自嘲するように笑
last updateLast Updated : 2025-12-27
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第94話 心中相手

(速水 視点)僕は目を見開いて竜一を見た。竜一は僕の髪を撫でながら、そっと口を開く。「ショックを受けたか?」「モグラさんは清一さんの調教を受けて、精神を病んでいるんだよ? 彼の話を信じるなんてどうかしてるよ……」「いや、奴はお前の前で演技をしているだけで正気だ」竜一が静かに答える。「あいつは、清一に拾われる前は、公安の犬だったらしい。今は、亡くなった清一に忠誠を誓う犬と化しているが、同時に公安にこの街でテロの可能性がある事を伝えたらしい」竜一の声が続く。「モグラはこの街が好きだから守りたいと言っていたな。そして、テロの引き金になる速水がこの街を離れない様にさっさと囲えと俺に迫っている」「モグラさんが……信じられない」「だが、真実だ」竜一が僕を見つめる。「そのモグラから、報告があった。速水は思い出したくも無いだろうが……昔の『かさぶらんか』にいた第三の男が判明した」「それって、石井さんの事だよね?」「やはり、お前に接触していたか」竜一の目が鋭くなる。「あいつは『マトリ』だが……どうも正気を失っているらしい。お前には何か話していたか?」僕は少し逡巡した後に、竜一を見つめて口を開いた。「彼は、丹野組の麻薬ルートを最近潰したばかりだと言っていた」僕は竜一を見つめる。「石井さんが『マトリ』である事を、信頼する人に話せって。『マトリ』を売れば、僕が抱えている負債も無くなってこの街を出られるって言っていた」僕の声が震える。「過去の贖罪だって言ってた。あの人は、多分自分の死に場所を探して、この街に来たのだと思う」「あいつが、第三の男で間違いないという事か……」竜一の声が低く沈む。「今はタイミングが不味いが、お前が望むならこちらで殺してもいい。今でも恨んでいるだろ?」「まって、彼は……ムカデ男とは違ってた」僕は竜一を見つめた。「ムカデ男は、人を苦しめる事に快感を得ていた。それが僕には耐えられなかった」手が震える。「だけど、石井さんは違ってた。あの人は普通の人間だった。恐怖と共に生きている人だった」「俺はあいつを殺したい」不意に竜一が語気を強め僕を抱きしめてきた。驚いて竜一の顔を見ると苦い表情を浮かべていた。「あいつは、心中相手をこの街に探しに来たようなものだ」竜一の声が震える。「その心中相手は、速水……お前だ。麻
last updateLast Updated : 2025-12-28
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第95話 こんな気持ち……知らなかった

(速水 視点)吐息をもらしながら竜一は僕の首元に唇を寄せ囁いた。「親父は俺に『速水を死ぬまで一生囲って逃すな』と遺言を残した」竜一の声が静かに響く。「竜二には『速水をこの街から連れ出してやってくれ』と遺言を残した。叔父には『速水を殺して山に埋めてやってくれ』と遺言を残した」彼の手が僕の髪を撫でる。「親父の本心なんて俺には分からない。だが……俺はこの街でテロが起きて機能不全に陥って寂れて消えていくのは耐えられない」「竜一さんは……この街を守る為に、清一さんの遺言に従うの?」「ああ、そうだ」竜一が僕を見つめる。「竜二がお前を囲う事をずっと危惧してきた。だが、実際には速水を囲うのは俺の役目だ」彼の声が硬質になる。「竜二にお前を渡すことはできない。叔父とも別れてもらう。叔父がお前を殺すとは思えないが、人がどう動くかなど想像もつかないからな」「清二さんが言ってたよ」僕は竜一を見つめた。「もしも、僕が望まない形で囲われて……どうしてもそれに耐えられないなら遺言を実行するって。僕もそうして欲しいと、清二さんにお願いした」「……実行はさせない」「テロが実際に起こるかどうかなんて分からない」僕の声が震える。「それでも、竜一さんは僕を囲う覚悟をしたんだね。でも、そうだね。清一さんならするかもしれない」僕は竜一を見つめた。「あの人は、澄んだ夜空が大好きだった。でも、この街は夜空さえ穢すネオンが毎日瞬いているもの」涙が滲んだ。「清一さんは、そんな理由でも街を壊す人だと思う」「ああ……俺の親父は狂っていた」竜一は僕の首元に顔を埋めたまま、自嘲気味に笑った。そしてしばらく沈黙した後に、竜一は顔を上げて僕の顔を覗き込み真剣な表情で言葉を発した。「俺に囲われてくれ、速水」僕は竜一の目を見つめながら返事をしていた。「青山の屋敷の離れ家に囲った後は、僕に何でも欲しいものを与えてくれると言ったよね?」僕は竜一を見つめる。「今から欲しいものを言ってもいい、竜一さん?」「ああ、言ってくれ」「『かさぶらんか』のオーナーのままでいたい」「店で働くことはできないぞ?」「分かってる。店は三原と秋山にお願いする」僕は竜一を見つめた。「それでね……毎日『かさぶらんか』の店内で一番出来のいい花を一本選んで、青山の離れ家に持ってきてもらうんだ」僕の
last updateLast Updated : 2025-12-29
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第96話 一度の交わり

(竜一 視点)ただ一度の交わりが、全てを変える。もう、幼馴染には戻れない。速水は俺の囲われものになる。速水の声。速水の肌。全てが、生々しく俺の脳を焼き尽くす。速水のうなじに唇を寄せながら、俺は囁き続けた。「速水……力を抜いて」「やっ……はぁ、はぁ、むり……」「力を抜いて……速水、きつい……奥に入れない、はぁ、はぁ」「んっ、あっ、やぁ!」速水のペニスを握り込み擦りあげる。びくりと背中を震わせた速水が、涙を零しながら甘やかな喘ぎ声をあげた。甘やかな速水の声に鼓動が跳ね上がる。背中がぞくりと震え眩暈の様な快感を覚える。——溺れる。速水に溺れる。「ぁあ、やぁん、はぁはぁ……んんっ……ぁあん」「速水、奥に入れるよ……くっ!」「ひぃん……っ、やぁ、竜一さん、やめっ……ぁああっ!!」——溺れたくない。速水の腰を掴み強引にペニスを最奥に捩じ込んだ。解しもしないで挿入を許した速水のそこは既に切れて、血を流していた。太ももに流れ滲んだ血液がシーツを赤く染める。快感の喘ぎを漏らしはじめていた速水が痛みに悶える。——速水に溺れれば……俺はお前を壊してしまう。「痛いっ、ひぃ、いたっ……やめて、竜一さん!」「今回だけだ……俺を……恨んでいい」——速水に溺れたくない。怖い。もし、速水の体に溺れたら、俺は親父の様になりかねない。毎日のように速水を抱いて犯した親父。速水を『性奴隷』として扱った親父。親父に嫌悪感を抱き、親父に抱かれる速水に嫌悪感を抱き。——親父の気持ちを本能的に理解していた自分への嫌悪感……これが俺の本性か。「速水……体を交えるのは……今回だけだ」「んぁあ、痛いっ……抜いて……ひぃ……」腰の動きを速める。——これ以上、速水と繋がっては駄目だ。一度だけの交わりで終わらせる為に。早く。早く。欲望を吐き出せ。「……くっ」「んっ……ああ!」速水の体内に精液をぶちまけた。速水はびくりと震えながら白濁を受け入れる。俺は速水の体内からペニスを抜き出すと、彼の髪を撫でて唇を寄せ囁いた。「すまなかった、速水……大丈夫か?」「痛い……」「ああ、分かってる。すぐに体を清めて治療する」俺は速水の髪を撫でる。「今から準備をするからベッドで休んでいてくれ」「竜一さん……傍にいてくれないの……?」「体を清めたら……傍にいるよ」「
last updateLast Updated : 2025-12-29
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第97話 お前を囲う

(竜一 視点)速水はうつ伏せのまま、腕をそっとの伸ばし俺の肩に触れた。「ねえ、竜一さん。青山の屋敷の離れ家に持っていきたい物があるのだけど……言っていい?」「ああ、言ってくれ」「あのね、瑠璃色のペンを持って行ってもいい?」「……あれは、ナイフだ」「そうだね。ナイフの機能も付いているよね」速水が小さく笑う。「でも、ペンだよ?」俺は迷った末に、うつ伏せのままの速水に声を掛けた。「体が大丈夫なら……俺の方に体を向けてくれ」俺は速水を見つめる。「俺の目を見て、瑠璃色のペンが欲しいと言って欲しい」「ふふ、僕がそのペンで自殺でも図ると思っているの?」「過去に自殺を図った……そのお前を信じるのは難しい」声が沈む。「だから、俺の目を見て話して欲しい。それとも、俺の顔を見るのも嫌になったか、速水?」速水はごろんと転がって体勢を変えると俺の顔を見つめた。そして、そっと呟いた。「瑠璃色のペンは、僕と竜一さんが大切な幼馴染だという証だから……囲われた後も持っていたい」「……わかった。速水を信じる」俺が速水の額に自らの額を当てると、彼はふわりと笑った。——もう、速水は幼馴染ではなく俺の囲われ者になったのに……それでも、俺に笑いかけてくれる。それだけで、俺は安堵の息を付いた。「そうだ。竜一さん、僕とお揃いの瑠璃色のペンを持っているでしょ?」「ん、どうして知っているんだ?」「土下座している丹野さんの頭を踏みつけていた時、瑠璃色のペンを持っていたのを見たよ?」速水が笑う。「もしかして、竜一さんが制裁好きになっちゃったのかと焦っちゃった」「そ、そんな訳ないだろ!あのペンを手にすると気分が落ち着くんだ」俺は慌てて答える。「丹野彰を蹴り飛ばしたくてたまらなくなったから、瑠璃色のペンを握って怒りを収めたんだ。流石に、格上の丹野組と幹部をあれ以上痛めつけるわけにはいかなかったからな」「うーん、十分に痛めつけけていたような」「あれでも、随分我慢した」俺は苦笑する。「悪いな、速水。勝手に同じペンを持たれるのは気持ち悪いよな。俺はストーカー気質があるのかもしれない」俺の言葉に、速水が笑い出した。「同じペンを持っていてもストーカーだなんて思わないよ、竜一さん」速水が微笑む。「ねえ、あの瑠璃色のペンは特注なの?」「ああ、奈良の職人に特注し
last updateLast Updated : 2025-12-30
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第98話 伍代の日常

(伍代 視点)速水が青山竜一に囲われて一か月がたった。俺は未だに速水の気持ちが分からずにいる。「ねえ、伍代さん。あんたが護衛してた人……名前何だっけ?」「んっ、速水の事か?」「そうだ、そんな名前だったわ」年増女が煙草を吹かす。「新しい青山組の組長の青山竜一に囲われたんだってね? 上手くやったわね、その子」女の声が嘲るように響く。「前は、青山清二の愛人やってたんでしょ? その前は、青山清一。『性奴隷』としては年増だけど、よっぽど具合がいいのね、速水って人」「つうか、そんな事どうでもいいだろ?」俺は女を睨む。「それより、俺に奉仕しろよ。お前も年増だが、風俗嬢だろ。支払った金額分は真面目にやれよ」俺の手が女の頭を掴む。「俺のちんぽ舐めろっての」「まあ、口が悪いこと。ま、舐めるけどね」年増女にペニスを咥えさせながら、俺はぼんやりと天井を見つめ考え事をしていた。——全てが突然だった。速水は青山竜一によって、青山の屋敷の離れ家に囲われてしまった。俺は速水の護衛をやめさせられ、代わりに『かさぶらんか』の護衛兼従業員にさせられた。全くもって、意味が分からない。速水は青山清二と仲良くやっていた。『かさぶらんか』のオーナーも任されて満足している様子だった。——でも、やっぱり、あいつは『性奴隷』上がりだったって事だな。若い男の体が欲しくなって、あっさりと青山竜一に乗り換えたってところか。囲われる事も『性奴隷』に戻ることも嫌がっていたあいつが、こうも簡単に元の世界に戻るとは思わなかった。兄貴分の俺としては正直、速水に失望した。でもまあ……『性奴隷』上がりの奴が再び『性奴隷』に堕ちる事なんてよくある事だ。俺が速水に期待しすぎていただけだ。あいつが、あんまりにも一生懸命に生きようとしていたから。少しだけ、俺も心が傾いてしまった。——ま、もういいけどな。「くっ……はぁはぁ……っいく!」「んっ……」年増女の口の中に射精した俺は、少し気分が良くなって女の乳首を弄ってやった。女は悶えながら、口から白濁を零した。その姿を見ながら、ふと速水が竜一の白濁を口から零して相手を煽る姿を想像した。その姿は、俺の下半身を刺激したが、同時に気持ちが萎えてしまった。「そろそろ、仕事行かねえと」俺はベッドから起き上がる。「じゃあ、またな。次も、指名いれ
last updateLast Updated : 2025-12-31
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第99話 囲いの中の速水

(伍代 視点)「遅い!」「くそ、三原と同じ台詞かよ!」青山の屋敷の離れ家に向かうと、速水の第一声がそれだった。——ちょっとくらいの遅刻で怒るなよ、男のくせに。俺はカサブランカを渡しながら愚痴を漏らした。「俺にも用事があるんだよ。下半身の事情で遅れたんだから仕方ないだろ」「えー、また風俗に行ってたの」速水が呆れたように笑う。「その風俗の帰りに花を選んだの? 手はちゃんと洗った?」「安心しろ。精液でべたべたのかさぶらんかだ」「伍代さんは、相変わらず伍代さんだ」「悪いか」「花を生けるから、床の間の花瓶をここに持ってきて」「命令ばっかだな。偉そうに」速水が指さした先には、畳の上に紫の綺麗な敷物が敷かれていた。日々一輪の花を選んで、速水に持ってくるだけ。それが俺の朝一の仕事だ。速水は毎日様々な色合いの敷物を用意して待っている。俺は面倒だとは思いつつも、仕事の為、仕方なく弟分の速水に付き合っている。床の間の花瓶を紫の敷物の上に置くと、速水はカサブランカを手にしたまま『ムムム』と妙な声を漏らしながら何処に活けるか迷っているようだ。俺はしばらくその様子を見ていたが、段々イライラしてきたので速水の手から花をむしり取って花瓶に花を突っ込んだ。「あーー、何するの、伍代さん!」「お前は、何をやるにも遅い」俺は肩をすくめる。「花が腐るだろ!」「どこに活けるか構図を考えていたのに」「速水に生け花の才能が無いことは既に判明している」俺は速水を見る。「どこに活けようと同じなんだよ。バーカ、バーカ」「伍代さんに馬鹿呼ばわりされるのだけは嫌だ」速水が俺の肩を拳で軽く叩こうとしたので、思わず速水の腕を掴んだ。「あっ」不意に速水が顔を赤らめたので、俺は慌てて掴んだ腕を離した。速水の腕は随分細く感じられて、俺は少し不安を覚えた。速水は俺が掴んだ腕の部分を、そっと指で撫でた。その仕草が妙に生々しく思えて目が離せなかった。「速水……痩せたな」「ん?」「腕が細くなった」「あー、腕の筋肉が衰えたのかもしれないね」速水が小さく笑う。「一応、花屋のオーナーとして鉢植えとか運んでたもの。そうだ『かさぶらんか』は順調?」「毎日聞かれても返事のしようが無いが、三原も秋山もお花も、地下の男たちも元気だ」俺は答える。「そうそう、お前の『呪われた
last updateLast Updated : 2026-01-01
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