All Chapters of 君が抉った心の傷に、まだ宿る名はない〜性奴隷は泣かない〜: Chapter 51 - Chapter 60

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第51話 伍代の楽しみ

 (伍代 視点) 「あら、久しぶりに指名が入ったと思ったら……伍代さんだったの。まあ、こんな年増の女を指名するのは、あなたぐらいよね。そうそう、噂は聞いてるわよ。"性奴隷"の坊やが大人になって、昔の買春相手を喰い荒らしてるって」 「だから?……問題でもあるのか」 「伍代さん、これは報復ってこと?」 「まさか。ひどい誤解だな」 ――"性奴隷"だった頃、俺をよく買春に来た女たち。今ではすっかり落ちぶれたその姿を見ると、妙に興奮を煽られる。熟女好きという性癖も手伝って、つい昔の顧客を指名する。それが噂になっているだけだ。だが、それがどうした。俺はただ、今は女を抱きたいだけだった。 「休みをもらって一番にあんたに会いに来たのに……なに、その塩対応。まあ、いいけどさ。三日間の休暇を有意義に使いたいんだ。だからマッサージなんて時間はいらない。今すぐ、そのだるんだるんに垂れた乳房にむしゃぶりついてもいいか?」 「好きにすればいいじゃない」 安物のベッドはギシギシと耳障りな音を立てたが、裸の女を目の前にすればどうでもよかった。艶を失いつつも、わずかに色香を漂わせる乳房にむさぼりつく。膣口に指を這わせると、すでに濡れていて思わず意地悪な笑みが浮かんだ。俺を"性奴隷"と嘲るわりに、随分と興奮しているじゃないか。 「ああっ……ん」 甘い声が女の口から漏れる。俺のペニスは準備万端。ズボンの前を外した、その瞬間――スマホの着信音が鳴った。 「いやいや……なんでこのタイミングなんだよ!?」 上着の隠しに仕舞っていたスマホを思い出す。床に脱ぎ捨てた拍子に壊れていれば言い訳もできただろうが、嫌な予感は当たるものだ。画面を覗けば、組長の名。 
last updateLast Updated : 2025-11-05
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第52話 伍代の怒り

 (伍代の怒り) ……いや、なんで集まってんだ。特に竜一。あんたがいれば竜二を刺激することくらい、分かってるだろうに。正直、邪魔だ。 「竜一さん。組長から連絡を受けています。これから竜二さんと交渉しますので、竜一さんは部屋に戻っていただけませんか。竜二さんを刺激する可能性が高い」 「伍代。おまえに命令される筋合いはない。叔父と会っていた時に竜二から連絡があった。――速水が竜二にレイプされたと聞いた。速水を傷つけた人間が俺の弟なら、兄である俺が制裁を加えるのは当然だろう?」 「制裁はお好きに。ただし、それは後にしてください。今は速水を救い出すことが先決です。竜二さんは“迎え”に俺を指名してきた。速水を助けるのは俺の仕事です。仕事の邪魔はご勘弁願いたい」 竜一は怒りを宿した眼差しで俺を射抜いた。だが次の瞬間、感情を飲み込み、一気に抑え込んでみせる。その制御の鮮やかさに、思わず見とれるほどだった。 「……伍代。おまえの言い分は理に適っている。俺は最上階で叔父と待つ。ただし、護衛はここに残す。必要なら使え。――伍代、速水を救ってやってくれ」 「承知しました。……竜一さん、感謝します」 既に竜一は俺に背を向けていたが、礼だけはしておいた。すぐに上体を起こし、竜二の部屋の扉へと向かいインターホンを押す。反応は早かった。モニター越しに俺の顔を確認したのだろう、無言のまま電子ロックが解除される。 俺は竜一が残した護衛に廊下で待機するよう指示を飛ばし、すり抜けるように室内へ。足を踏み入れた途端、速水の声が耳に飛び込んできた。 「嫌だよ、竜二さん……離さないで。僕は帰りたくない。竜二さんの傍を離れるのは怖いよ。ヤダよ……」 「速水、落ち着け。大丈夫だから」 「
last updateLast Updated : 2025-11-06
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第53話 怖い

 (清二 視点) 亡くなった内縁の妻が、今もフォトフレームの中でほほ笑んでいる。速水をこの部屋に住まわせてからも、その写真をアルバムに戻すことはできなかった。――彼女は俺の子を唯一、腹に宿した女だった。 だが、その喜びは長くは続かなかった。同じ頃に乳がんが見つかり、治療に専念させるため、俺は子を諦めさせたのだ。あの時、ひどく泣きじゃくった彼女の姿を、今でも鮮明に覚えている。子を諦めさせてまで治療を選んだというのに……結局、彼女は病に勝てなかった。 俺は、子種をまき散らす兄の清一が憎らしくもあり羨ましくもあった。あいつは己の子供には関心を抱かず、"性奴隷"のガキばかりを構っている。だから俺は、父親代わりとして竜一や竜二に接した。失った子を埋め合わせるように、清一の子を探し出しては組員にしたこともあった。 だが、結局のところ俺は竜一や竜二の父親代わりにはなれなかった。愛した者と触れ合えぬ寂しさを身をもって知りながらも、竜二の将来を案じるあまり速水を彼から引き離した。子を得られなかった寂しさから、清一の子に心を傾けすぎていたのだ。 もう相手は、親を必要としない年齢になっているというのに――子離れできていないのは、結局俺の方だった。  ◇◇◇◇  「伍代のやつ、遅いですね……」 写真から視線を竜一に向けた。ソファーに座った竜一は、イライラとした様子で俺に話しかけていた。 「今回の件だが、竜二は本当に速水をレイプしたと思うか?」 「……」 「だんまりは卑怯だぞ、竜一」 「清二叔父さん。速水の性格を考えれば、竜二とすん
last updateLast Updated : 2025-11-07
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第54話 解離状態の速水と竜一

 (竜一 視点)  「解離状態とはどういう状況なんだ、竜一?」 叔父が低く呟き、速水の様子に見入っている。――解離の症状を見るのは初めてなのだろうか。俺は返答に迷いながらも、なんとか言葉を繋いだ。 「もしかすると……MDMAの影響で多幸感に浸っていた速水が、薬の効果が抜けた途端、強烈な恐怖と不安に襲われて解離状態になり……囲いに逃げ込んだのかもしれません」 「……囲い?」 「おやじ――清一の囲いです」 「思い出した……。速水自身が言っていたな、“ムカデ男”に襲われた時に解離したって。あの時も記憶がなかったと。――そう考えると、MDMAが抜けた途端に耐えきれなくなり、兄貴の囲いに逃げ込んだってことか……。なんか、せつねぇな」 叔父が深くため息をつく。その姿を見て、俺もまたため息をこらえきれなかった。胸の奥に広がるのは、同じ切なさだった。最近の速水は精神面も安定し、少しずつ自己肯定感を取り戻していると思っていた。だが、俺の認識は甘かったらしい。――いまだに“おやじの囲い”は、速水を捕らえて離さない。 竜二は、たとえ薬の力を使ってでも、その囲いから速水を救い出したかったのだろう。だが結局、不安と恐怖が頂点に達した速水は解離し、再びおやじの囲いに逃げ込んでしまった。 なぜだ? なぜ速水は、責苦を与えたおやじの元に逃げ込む……? そこに安らぎなどあるはずがないのに。――逃げ場がそこしかないとすれば、あまりに悲しすぎる。 俺の“更紗らんちゅう”は、いまだ血の水槽で浮き沈みを
last updateLast Updated : 2025-11-08
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第55話 舞い戻った清一

 (竜一 視点) 口元からこぼれた雫が白い喉を伝って落ちていく。だが俺は構わず、最後まで飲ませ続けた。よほど渇いていたのだろう。一本を飲み干すと、速水は甘い吐息を洩らした。 思わず胸がどきりと鳴り、俺は速水を見つめる。速水は不思議そうに、真っ直ぐ俺を見返してきた。そして、ぽつりと呟く。 「清一さんが……清一さんの顔をしてない。手は清一さんなのに……違う人だ。なんで?」 「……」 ――いや、黙っている場合じゃない。このままでは速水との会話が途切れる。だが、適切な言葉が思いつかない。俺は助けを求めるように叔父へ視線を向けた。 狼狽した叔父は、しばし沈黙したのち、とんでもない案を口にした。 「清一はすでに死んでいると伝えろ、竜一。……おまえは清一に“取り憑かれた”ことにしろ」 「はぁ?」 「いいから、それでいけ」 あまりに無茶な命令に、思わず頭が真っ白になる。もっと精神医学を学んでおくべきだった。いや、いっそ今から極道をやめて大学に入り直すか……? ――いや待て、今はそんなことを考えている場合じゃない。俺は深呼吸をして混乱を押し込み、胸に抱いた速水へ語りかけた。 「誠……さっき俺が言った言葉を覚えているか? 『今日は特別な日だから、おまえには優しくする』って」 「うん、覚えてる!」 「今日は……おまえの誕生日だ」 「そうだっけ?」&
last updateLast Updated : 2025-11-09
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第56話 竜一の怪我

  (速水 視点)  「……竜一、頬が血で染まってる。僕の記憶が途切れているのは、解離状態になっていたからなの?竜一さんを傷つけたのは、僕?僕は竜一さんにひどいことをしたの?何をしたの……?ねえ、教えて、竜一さん!」 「速水、どこから記憶がある?」 竜一の胸に顔を埋め、僕は必死に記憶を辿った。胸が痛くて、涙が止まらない。竜一を傷つけたのは僕なのに、その記憶がなかったからだ。もし解離状態に陥っていたのなら、思い出すのは難しいかもしれない。 ――それでも、人を傷つけておきながら記憶がないなんて、無責任すぎる。思い出さなければ。 「待って、竜一さん……今、思い出すから」 「無理はしなくていいぞ、速水」 竜一が優しく髪を撫でてくれる。その温もりに勇気をもらい、僕は必死に記憶を探った。――すると、突然竜二の顔が浮かんだ。次の瞬間、記憶が一気に蘇る。竜二の肌の感触、突き込まれたペニスの形までもが鮮明によみがえった。 竜二とのセックスは、気持ち良すぎた。 興奮と幸福感で胸が満たされ、永遠に続けばいいとさえ思うほどだった。ペニスを捩じ込まれても、"快感と興奮"が"恐怖と苦痛"を圧倒し、すべてをかき消していく。底知れぬ幸福感に酔いしれ、身も心も溺れていくしかなかった。――けれど、セックスドラックが切れた瞬間に、恐怖と不安が一気に押し寄せる。竜二のことは今でも大好きなのに、あの時の"興奮と快感"はすべて幻のように感じられる。それが、何よりも苦しい。 「僕は、竜二さんとセックスした。すごく興奮して、快感でいっぱいで、恐怖も苦痛も消えてた。夢中で愛しあったって思ってた……でも、終わってしばらくしたら、急に幸せが消えて、怖くなった。すごく怖くて、もう一度セックスして
last updateLast Updated : 2025-11-10
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第57話 伍代と竜一

 (伍代 視点) 俺は、速水が嫌いだ。 「くそ……竜一さんと取っ組み合いしている内に、寝室の鍵が閉められたじゃないですか。ひどくないですか~。俺は速水の護衛ですよ? 寝室に入る権利はあると思うんですよね。なのに締め出すとか、ムカつくんですけど」 「いい加減に諦めろ、伍代」 「竜一さん。俺に制圧されてる時点で、そのセリフになんの説得力もないって分かってます?」 この街では、不幸な境遇で育ったやつなんて珍しくもない。速水もその一人だと認めている。……だが、何時までも不幸な過去に囚われて抜け出せないあいつを見ると、どうしてもイライラしてしまう。 「ところで竜一さん。なんで右手を怪我してるんですー?」 「おまえには関係ない」 「いや、関係あるでしょ? もしかして速水に反撃されました? 俺が寝室から追い出された直後から、速水の泣き喚く声が聞こえなくなりましたよね。……あいつの口に布でも突っ込んで黙らせたんです?」 「そんな訳ないだろ!! 速水は今、正気に戻っている。ちゃんと状況を説明するから、俺の拘束を解け」 「いや、無理です。抵抗はやめてくださいね、竜一さん。俺の寝技はねちっこいから、簡単には抜けられません」 護衛の仕事に就くにあたり柔道を習った。俺のやくざな師匠は寝技で相手を失神させるのが大好物なやつだった。抵抗するほど絡みつくように極まる寝技。しかも、あの変態野郎は寝技で勃起する癖まであった。思い出すと吐き気がするから、考えるのはやめよう。 「どうして組長は……俺を寝室から追い出したんですかねぇ?」
last updateLast Updated : 2025-11-11
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第58話 護衛として

 (伍代 視点) 寝室の扉を見つめながら、呟く。 「速水は無事なのか?」 「ああ無事だ」 「竜一さん、あんたバカでしょ? どういう状況かは知らないけど、ナイフの刃を掴んだって勢いは止まらない。あんたの肌を切り裂いたまま、速水を傷つけてもおかしくなかったんだぞ」 「無意識に掴んでたんだから、仕方ないだろ。それより伍代……状況を説明するから、俺の掌の傷を治療してくれ。治療する気がないなら、速水の様子は教えない」 「俺は別に速水の事なんて興味ないですけど」 「だったら、自分で治療する。お前に用はない、伍代。俺は以前から、お前は速水の護衛として相応しくないと思っていた。あいつへの気遣いが、感じられなかったからな。速水に興味が無いのなら、それも当然だ。叔父に別の護衛を付けるように進言しておく。お前は帰っていいぞ、伍代」 竜一が掌から血をぼたぼた流しながら、冷え冷えとした声でそう言った。俺は思わずぞくりとし、竜一を見つめた。やくざとしては優しすぎる男だが、その奥には清一の血筋がはっきりと息づいている。 速水を手放さない為に、必死に人を殺しまくった清一。その遺体の処理を、俺は知らぬ間に受け持っていたかもしれない。俺の異母兄弟の竜一は、不器用な清一と同じく、不器用に速水を愛している。俺は奇妙な血の繋がりに、吐き気と倒錯した興奮を覚えた。 「この部屋は速水さんと組長の愛の巣ですからね~。竜一さんの血で穢されると困ります。俺が治療しますよ。竜一さんは、ソファーに座っていてください」 「伍代……お前が、素直だと不気味さしか感じないな」 「何ですか、それは。せっかく治療する気になったのに酷いですね。でも、速水
last updateLast Updated : 2025-11-12
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第59話 制裁を受けろ

 (竜二 視点) 俺は間違った。間違ってしまった。 速水をこの街に置いていくなんて、あり得ない選択だった。あの時、あいつは俺から引き剥がされ、泣き叫んでいた。手放すべきではなかった。もっと実力をつけてから迎えに行くつもりだったが、それはただの言い訳に過ぎない。 格好をつけて何になる。速水との甘い交わりの時間は、すべて高画質で録画した。神戸の上部組織で必死に働く時の励みにするつもりだった。だが無理だ。もう待てない。今すぐにでも速水を奪い返しに行くしかない。 全ての原因は、速水が可愛すぎることだ。 青山の屋敷に連れて来られた時から、速水はずっと可愛かった。だが、二十歳を過ぎてもなお、その可愛さが増すとはどういうことだ。俺の癒しである速水は、日に日に愛らしさを増していく。可愛すぎて、どうしようもない。 そして――速水との初めてのセックス。 速水にセックスドラッグを盛った。だが俺自身はドラッグ系には一切手を出さず、初めての行為に臨んだ。そして確信した。速水と俺の相性は最高だ。速水が恐怖心さえ乗り越えてくれれば、いつだってあの時間を共有できる。 俺は幾度となく速水とのセックスを妄想し、自慰に耽ってきた。だが今となっては、その妄想はすべて空虚なものに思える。 ――いや、違う。妄想の中の速水も、確かに可愛かった。幻の中ですら愛らしく、俺は満足していたはずだ。 だが、本物を抱いてしまった今では……もう妄想では我慢できない。 「今から、速水を拉致しに行こう」 腰を上げた瞬間、インターホンが鳴った。俺は反射的に棚から拳銃を取り出す。相手が速水であることを願いながらモニターを覗き込んだ。だが映っていたのは兄貴だった。迷
last updateLast Updated : 2025-11-13
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第60話 元には戻らない関係

 (速水 視点) 竜二が、この街を一時的に去ることになった。 『かさぶらんか』で所轄の署長の胸倉を掴んだ場面は、今も鮮明に焼き付いている。騒動の一端を担ったのに、僕に咎めはなかった。責めを引き受けたのは竜二だった。逮捕こそ免れたが、警察に貸しを作った形になり、その代償として神戸の上部組織へ。鞄持ちからの出直しだという。 ――幼馴染みを見送る胸の奥に、重い寂寥が沈んだ。 出立の前、竜二は『かさぶらんか』で僕を訪ねてくれた。右目に白い包帯を巻き、痛ましい姿だった。竜一から聞かされている。僕をレイプした罰を、自らの手で下したのだと。 包帯に指先を触れ、「ごめんなさい」と呟いた僕に、竜二は笑った。「何で速水が謝る?」そう言い、突然唇を重ねた。耳許に囁かれた甘い声が残る。 ――「今度は、セックスドラッグなしでセックスしような、速水」 胸が詰まり、呼吸が乱れた。 そんな竜二を容赦なく蹴り飛ばし、店先に追い出したのは伍代だった。モニタールームで男たちの嬌声をオカズに自慰をしていたはずの男が、荒い息のまま竜二を掴み、怪我人を車へ押し込む。神戸行きを命じた。別れは唐突に断ち切られた。 だが、気づけば制服のエプロンのポケットに、竜二の住所と番号を記したメモが五つも忍ばされていた。指が震え、思わず笑みが零れた。  ◇◇◇  竜一は定期的に店に現れる。花束を注文し、拙い出来にも上機嫌で札束を置き、持ち帰る。金額に怯える僕を見て、三原が「店のためだ」と諭す。 ある日、竜一は再び瑠璃色のペンを差し出した。あの時、解離の淵で自殺を図った僕を止めたのが竜一だった。その掌には深い傷痕が残り、皮膚は引き攣れて痛む。顔を顰める
last updateLast Updated : 2025-11-14
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