(伍代 視点)速水は無言のまま俯いてしまった。俺は速水の両手首を掴んだまま離せなくなって、その細い速水の手首に親指を這わせて何となく脈拍をはかっていた。——意味のない行動だと自分でも分かっている。ただ、速水に触れていたかった。速水の脈が速い。酷く早くて、俺の脈拍までおかしくなりそうだった。「速水……本当は……」——本当は、囲われたくなかったのか?青山竜一はお前をどんな風に扱ってる。あいつは、お前を『性奴隷』として扱っているのか……父親の青山清一の様に。——だから、お前は泣くのか?「速水……」——辛いのか? 逃げ出したいのか? この囲いから?「伍代、速水から離れろ」俺は速水の腕を掴んだまま、背後を振り返った。そこには、青山竜一とモグラが立っていた。俺は竜一を睨んだまま、速水の手を離さなかった。「手を離せ、伍代」「速水が泣いている」俺は竜一を睨む。「あんたは……速水にどんな扱いをしているんだ」「竜一さんは悪くない!」速水は急に俺の手を振り払って立ち上がると、青山竜一に近づいた。そして、柔らかく微笑むと竜一の腕に触れた。竜一はそっと笑うと速水の腰に手を回した。俺は速水の変わり身の早さにあっけにとられながらも、囲い主におもねるのは『性奴隷』として当然かと思い直した。速水が性奴隷に堕ちていく姿は何とも寂しくやりきれなかった。俺は少し拗ねた気分になりながら口を開いた。「竜一さんも悪くないけど、俺も悪くないからな」俺は速水を見る。「速水が勝手に泣いて『寂しい』とか言い出すから悪い。ちょっと心配して損した」言葉を継ぐ。「つうかさあ、毎日俺に花を一輪ずつ持ってこさせるのって、嫌がらせなわけ? なあ、速水」俺がそう声を掛けると、速水は酷く傷ついた顔をした。——言葉にしてからしまったと思ったがもう遅い。俺は思ったことをすぐに口にして後悔するたちだ。でも、言ってしまったものは仕方ない。不意に速水が口を開いた。「伍代さんが、嫌ならもういいよ」「え?」「もう、持ってこなくてもいいよ」「あ、そうなの? じゃあ、今日でやめるけどいいんだな?」「いいよ……もう、いい」——何とも簡単にきりすてられてしまった。まあ、元々暇を持て余した速水が考え出した、ただの悪戯なのだろうから、断られて俺が傷つく謂われは無い。まあ、釈然とは
Last Updated : 2026-01-02 Read more