(速水 視点)花屋『かさぶらんか』に出勤すると、三原が豪華な花束を整え終えたところだった。僕がその花束に視線を奪われていると、三原が僕に気が付き、挨拶してくれた。「おはよう、速水!」「おはよう、三原!」僕が返事をすると、すぐ横から声が響いた。「あれーー、俺には挨拶なしっすか、三原さん?」伍代だった。僕は軽く肩をすくめる。「あれーー、伍代さんいたんですか?」三原がわざとらしく驚いて見せた。伍代と三原はあまり仲が良くない。二人は異母兄弟なのだけれど性格が全く異なるので、相性が悪いみたい。せっかくの兄弟なのだから仲良くすればいいのにとも思うが、どうやら難しいらしい。「三原、それって注文? 随分豪華な花束だね」僕は花束に視線を戻した。「今日の売上が楽しみーー!」「お前、完全に商売人の顔つきだな」三原が苦笑する。「で、この花束は青山組の組長から妻へのプレゼントだよ」「ん、妻?」思わず聞き返していた。胸が、どくりと跳ねる。「速水が出勤する前に、組長自らが『かさぶらんか』を訪れて花束を注文してくれたんだ」三原は花束を手に取る。「メッセージカード入りの花束だ。受け取れよ」「あ、うん!!」僕の顔が隠れてしまいそうなほどの大きな花束を受け取った。戸惑いつつも、胸が熱くなってしまう。清二が自ら『かさぶらんか』に足を運んでくれるとは珍しい。『愛人』から『内縁の妻』に昇格した僕は清二と同棲を始めたけれど、彼はやっぱり青山組の組長として忙しい身の上で、青山の屋敷に泊ることも多い。『愛人』の時よりは少し会う頻度が増えたかなと感じる程度だ。ただ、家庭に縁のない生活を長年送ってきた僕としては、今の生活に十分満足しているのだけれども。「速水さん、さっそく組長のメッセージカードを見ましょう」伍代が意地悪そうな笑みを浮かべた。「そんな意地悪そうな顔の伍代さんには、大事なメッセージカードは見せません」僕は花束を伍代に押し付ける。「僕だけが見るんだから、伍代さんはこの花束を持っておいてください。わざと床に落とすとかしたら怒りますよ」伍代に花束を渡すと、メッセージカードを花束の中から探し当てた。さっそくメッセージを確認する。視線を滑らせた瞬間、胸が熱くなった。『まずは、仕事が忙しく青山の屋敷に泊ることが多い事を謝りたい。だが、これだけは信
Last Updated : 2025-11-24 Read more