「深雲さん、私が欲しいのは、あなただけ」姿月は涙で濡れた顔を上げ、彼を熱っぽく見つめる。「あなたも、私のことが好きでしょう?私は『特別』だって、そう言ってくれたじゃない……」深雲の喉仏が、ごくりと大きく上下した。理性の糸が、軋む音がする。「姿月、だめだ……」かろうじて、声をしぼりだした。「どうして……?」姿月は大胆に体を寄せ、彼のあごにキスを落とす。深雲の息が、熱く震えた。それに勇気づけられたように、彼女の唇は下へと滑り、彼の喉仏に吸いついた。その瞬間、深雲の中で何かがぷつりと切れた。理性の光が完全に消え失せた瞳。荒い息づかいのまま、彼は姿月を病室のベッドへと、力任せに押し倒した。傷口が引きつれて痛む。だが、姿月の瞳はとろりと熱を宿していた。痛みと快感が同時に、彼女の体を貫いていく。――今夜、私は、完全にこの人のものになる。「深雲さん、本当に愛してる……景凪さんにできることなら、私にも。あの人にはあげられないものだって、私なら……」媚びるような甘い声。男を惑わすため息。姿月は深雲の手を取り、みずからの服の隙間へと誘った。男の熱い掌が、柔らかなふくらみに触れた瞬間、姿月はびくりと体を震わせた。その時、彼女はようやく気づく。今夜の彼は、何かがおかしい。「深雲さん、あなた、すごく熱い……」だが、次の瞬間。ブチブチ、と音を立ててブラウスが引き裂かれ、ボタンが弾け飛んだ。深雲は彼女を組み敷き、いっさいの愛撫も、優しい前戯もなく、ただ焼けつくような手で、あらわになった肌をなぞる。まるで、ひどい熱にうなされ、彼女の肌に冷たさを求めているかのようだ。望んでいたような優しさではなかった。でも、目的は果たせる。姿月は喜んでそれに応じ、彼らのベルトに手をかけた。カチャリ、と金属音が響く。その音を合図にしたかのように、深雲は不意に姿月の首を掴み、ベッドに強く押さえつけた。荒い息づかい。彼は、見下ろした女の、熱に上気した顔をじっと見つめる。恥じらいと期待に濡れた瞳が、まっすぐに彼を見つめ返してくる。「深雲さん……」吐息まじりに、彼女が名を呼んだ。深雲は姿月を見つめながら、脳裏に浮かんだのは別の顔だった。――景凪の顔だ。ベルトを解くなんて、とんでもない。たまに、こっそりキスをするだけで、すぐに顔を真っ赤にしていた。
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