ヴィラの庭は今、かつて景凪が植えた黄色の薔薇で埋め尽くされている。定期的に庭師が入っているため、手入れは行き届いていたが、ここ最近の深雲は多忙にかまけて、ろくに目を向けることさえなかった。夕暮れの光の中、無数の薔薇が風に揺れている。「ねえ深雲。あなたがチューリップを好きなら、私たちの新居の庭にはチューリップをたくさん植えましょうか?」かつて、そう無邪気に笑いかけてくれた彼女は、もういない。彼女の眼差しから愛おしさは消え失せ、底知れぬ無関心だけが残された。「深雲。私が一番好きな花、知ってる?黄色い薔薇よ」知らなかった。彼女が俺の人生に現れ、俺を愛し続けた十五年もの間、俺は彼女が何を好むのか、気にも留めていなかったのだ。そんな些細なことなどどうでもいいと思っていた。結婚という結果さえ与えてやれば、それで十分だと。「深雲様」背後から桃子の声がした。彼女は両手を揉み合わせながら、不安そうに、しかしいら立ちを隠せない様子で問いかけてきた。「あの女……小林姿月が、また何かあることないこと吹き込んだんですか?」桃子はこれまで何度も姿月に濡れ衣を着せられてきた。そのたびに煮え湯を飲まされてきた彼女は、うんざりしたように天を仰ぎ、今度はどんな汚名を着せられるのかと身構えていた。深雲は抑揚のない低い声で問う。「今日、奥様に会ったそうだな」桃子は一瞬びくりとしたが、ここでいう「奥様」が景凪のことであるのは分かっていた。それに、元奥様に会うことは犯罪ではないはずだ。彼女は意を決して認めることにした。「ええ、その通りです。奥様と昼食をご一緒しました。辰希坊ちゃんの身の回りの品や本、それから……清音お嬢様が枕元に置いている香り袋を届けました」桃子は言葉に熱を込めた。「お嬢様が最近あまりに眠たそうになさっているので、私もあのお守りが怪しいと思ったんです。奥様も詳しく調べてみるとおっしゃって……それだけです!他にやましいことなんてありません!」彼女は必死に訴えかける。「深雲様、あの人たちが何を言ったか知りませんが、奥様とは十五年のお付き合いでしょう?奥様がどんなお人柄か、深雲様が一番よくご存じのはずじゃないですか!」「……」深雲は無言のまま煙草に火を点けた。吐き出した紫煙が、夕闇に溶けていく。煙の向こうにある彼の表情は読み
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