「め、滅多なこと言わないの!そんなわけないでしょ?きっと、たまたま名前が同じだけの別人よ」凛は必死に弁明しながら、平静を装って教壇へ歩み寄り、景凪のアプリを大急ぎでログアウトさせた。給湯室でコーヒーを手にし、渡に返信を打とうとしていた景凪のもとに、「PC版からログアウトされました」という非情な通知が届く。「……」景凪が覚悟を決めて会議室に戻ると、中に入る前に凛に呼び止められた。「ちょっと、黒瀬社長とどういう関係なわけ?!」凛は目を見開き、これ以上ないほど驚愕の表情を浮かべている。「一体、二人で何してるのよ?」やっぱり、見られた……景凪は平静を装って答えた。「黒瀬社長とは大学の同級生なんです。彼、ちょっと体に問題を抱えていて。病院に行くのも憚られるようだったので、個人的に薬を処方しているだけですよ」「体に問題……?」凛は顎に手を当て、意味深な視線を景凪に向けた。そして彼女の肩をポンと叩くと、深く納得したように頷いた。「まあ、あんな立場の人だものね。他人には相談しにくい悩みもあるわよね。安心して、アプリは消しておいたから。みんなには、社長と同姓同名の別人だって説明しておいたわ」「……ありがとう、凛さん」だが、凛の表情を見る限り、確実に「あらぬ方向」へ誤解しているのが分かった。「凛さん、黒瀬社長は別に、そういう……」いや、身体機能に問題があるわけじゃない、と説明するのも変よね……そもそも、彼にその手の問題があるかどうかなんて、自分が知るはずもない。景凪は、説明するのを諦めて口を閉ざした。どうせ、凛が渡と直接顔を合わせる機会など、そうそうないはずなのだから。午後の業務をひと通り片付けると、景凪は清音を迎えに行くため、早めに会社を後にした。車に乗り込んだところで、タイミングよく渡から電話が入る。午前中、凛に誤解されたばかりの気まずさが胸をかすめ、彼女は少し落ち着かない心地で通話ボタンを押した。「もしもし」「今夜、予定はあるかな?」渡は単刀直入に切り出した。「一緒に食事でもどうだろう」「……昨日、一緒に食べたばかりじゃない」「けれど、今日も君に会いたいんだ」渡の声はあまりに真剣で、冗談めかした響きなど微塵もなかった。景凪はそのあまりにストレートな言葉に詰まり、思わず言葉を失う。駆け引きなどできな
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