封を切るまでもない。手触りだけで、中に写真が入っていると分かった。かなりの分厚さだった。景凪は、すがるような熱を帯びた深雲の視線を浴びながら、中身を取り出す。渡の写真だった。どれもこれも、目を疑うような凄惨な光景ばかり。彼女の知らない渡が、そこにいた。殺風景な真っ白な病室。ベッドに縛り付けられた彼は、血走った目で獣のようにカメラを睨みつけている。ベッドを囲む医師や看護師たちの視線は、まるでモルモットでも観察しているかのようだ。次の写真では、電気ショック用の椅子に拘束されていた。裸の上半身には、大小無数の傷跡が痛々しく這っている……景凪の手が微かに震えた。その震えを、深雲は「恐怖」によるものだと思い込んだらしい。得意げに口角が上がるのを必死に抑え込みながら、早口でまくしたてた。「黒瀬渡は帰国する前、海外の施設で長期的に隔離治療を受けていたんだ。あいつは頭がいかれた、危険な狂人なんだよ!医療スタッフに何度も襲いかかり、病院側も手を焼く最凶の患者だった!」「……この写真、どこで手に入れたの」「そんなことはどうでもいい。俺はお前に、黒瀬渡の裏の顔を知ってほしかったんだ!あいつは異常だ! 景凪!」深雲は声を潜め、さらに身を乗り出してくる。「あいつの頭はどうかしてる。大量の違法薬物に、電気ショック、正体不明の注射、臨死体験……おまけに地下格闘技にまで手を出してたんだ! 金目当てじゃない、ただ刺激を求めてな!」深雲が束の中から、リングに立つ渡の写真を引っ張り出した。全身血まみれだった。飛び散った血が、漆黒の冷ややかな瞳を禍々しく染め上げている。不気味な笑みを浮かべるその姿は、狂気と残酷さそのものだった。深雲は勝利を確信したように声を張った。「見たか景凪!黒瀬渡はまともな人間じゃないんだよ!」景凪はそっと目を閉じ、込み上げてくる感情を必死に押し殺した。だが、写真の血なまぐさい光景が脳裏に焼き付いて離れない。極限の苦痛は、別の極限の苦痛でしか紛らわせない……ボロボロに破壊され、無理やり繋ぎ止められた渡の体。繰り返される採血や血液の入れ替え。黒瀬家の実験台にされた日々。彼は、ただ、あまりにも痛すぎたのだ。「景凪、あともう数枚あるんだ、絶対に見ろ!」深雲は焦燥感に駆られたように、残りの写真を突きつけてきた。
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