俺がそう言うとジルは微笑んで言う。「はい、だってこれから王都に戻ったらルーシーのお部屋の準備をして、護衛騎士の制服も整えなくてはいけないわ。テオのように何を着ても格好良いなら、その心配は要らないけれど」俺は笑って聞く。「何を着ても格好良い?」ジルはパッと顔を赤くして言う。「えぇ、テオは何を着ていても、着ていなくても、目眩がする程、素敵だわ」ジルの手を引く。「おいで」ジルを膝の上に乗せる。「俺と一緒に居る時に別の誰かの事を考えて欲しくは無いな」ジルは頬を染めて頷く。「分かりました」ジルは俺の首に手を回すと俺に寄りかかり、言う。「貴方が愛しくて、苦しい」そう言われて微笑む。「俺もだよ」ジルは俺の頬に口付けて聞く。「ルーシーをテントに寄越したのは貴方の仕業ね?」俺は笑う。「そうだよ、ジルなら気に入ると思ったんだ」ジルを見る。ジルはうっとりと俺を見て言う。「最初からルーシーを護衛に付けるおつもりだったのね……」ジルの頬を撫でる。「そうだよ」ジルが甘い吐息と共に言う。「貴方はいつも……」「黙って」そう言って口付ける。◇◇◇ガタガタと揺れていた馬車が急に停まる。咄嗟に膝の上のジルを抱き留める。「何事だ!」慌てて外を見る。外は煙幕が張られていて、何も見えない。敵襲か。騎士たちがゴホゴホと咳き込んでいる。匂いを嗅いだ瞬時に分かる。マズイ、これは…そう思った時、馬車の中に何かが投げ込まれる。馬車の中にも煙が立ち込める。「ジル、俺から離れるな!」煙を吸わないように腕で鼻を抑える。「煙を吸うな……」そう言った時には遅かった。ジルがゴホゴホと咳き込む。「テオ……」そう言った時にはジルは気を失った。「ジル!ジ、ル……」頭がクラクラして倒れかかる。ダメだ、倒れては……ダ、メ、だ……。◇◇◇「首尾よくいったか」聞くと侍従が言う。「はい、陛下」連れて来られた二人を見る。「女の方は城へ、男は地下牢へ」指示すると侍従が聞く。「騎士たちはどうしますか?」俺は鼻で笑って言う。「放っておけ、どうせどこへ行ったかも分からんのだからな」◇◇◇目が覚める。見た事の無い天井。ここはどこ……?体を起こす。「お目覚めですか、姫君」言われて声の方を見ると黒く長い髪の男性が居る。「ここは、どこです?」クラクラと目
Last Updated : 2025-08-24 Read more