美沙子がゆっくりと藤並の腰に跨がった。湿度を帯びた室内の空気が、微かに揺れる。ベッドのシーツがきしむ音が、耳の奥で遠く反響していた。藤並は、何も考えずに身体を差し出した。心はもう、そこにはなかった。反射的に呼吸を整え、筋肉を緩める。美沙子の手が、自分の太腿を撫でるのがわかった。けれど、感覚は鈍い。皮膚だけが反応している。美沙子の指先が、藤並のものを包み込んだ。身体は素直に反応した。熱が集まり、硬さが形を成す。けれど、それは自分の意思ではなかった。まるで、誰か別の男の身体を遠くから見ているような感覚だった。「可愛いわね」美沙子の声が聞こえた。耳元で囁くような声。けれど、その言葉も、どこか遠い場所で鳴っているようだった。藤並は目を閉じなかった。天井を見つめていた。白い天井。何の模様もない、のっぺりとした天井を、ただ目で追い続けた。美沙子がゆっくりと腰を沈める。藤並のものが、彼女の奥に吸い込まれていく。それを感じながらも、心は何も動かなかった。「これは、作業だ」内心で、そう呟いた。快楽も、興奮も、もうなかった。ただ、身体が役割を果たしているだけ。誰かに指示されたわけでもない。でも、もう止められなかった。この5年間、繰り返してきた動作だった。美沙子の中は、熱く湿っていた。けれど、それも遠い感覚だった。自分の身体が反応しているだけで、心はそこにいなかった。「気持ちいい?」美沙子がそう囁いた。藤並は微笑みを浮かべた。営業スマイルと同じ。唇だけが動き、目は天井のままだった。「はい」甘い声で答えた。それが求められていると分かっているから。それだけだった。美沙子の腰が動くたび、ベッドが小さく揺れた。
Terakhir Diperbarui : 2025-07-28 Baca selengkapnya