空が青い。 我ながら呑気だ。こんな状態で。 痛い。 地面に捨て置かれた体は、散々な暴力を浴びてもう動く気力はない。 組織の中で異議を唱えたら、仲間だった人間が一瞬で敵に変わった。同じ晩飯を食っていたとは思えない豹変っぷりで蹴られ殴られ蹂躙された。 処刑だと向けられた剣は胸元に大きな傷を創り、今も脈打つたびに血が流れている。 ここまでやってきた罪の報いはここで受けると、一身に暴力と殺意をこの身に浴びた。 それから気を失って、目が覚めたらもう誰もいなかった。背中に濡れた感触がするから血溜まりの中なのだろう。死んだと思って捨て置かれたのか。 内臓が軽くなっていくような不快感と浮遊感に死を覚悟した。 今まで汚いことばかりやって来た。ろくな死に方はしないと思っていたのに、青い空の下で死ねるとは。 眠りに落ちたら、きっともう二度と目覚めない。 なのに瞼を閉じても目の奥の光は消えない。太陽の光がなかなか俺を眠りには落としてくれない。「……生きてる?」 地面に寝っ転がって目を閉じて、死を待つだけの俺の上に、影が落ちたのが分かった。女の声だった。 目は開けない。落とされた影のおかげで、閉じた瞼が心地よくなったから。 口は開かない。……喋りかけてくるな。死体かどうかなんて、とりあえず剣を突き立ててから確認すりゃいい。そうすればもれなく返事は来ないはずだ。「生きたい?」「あ?」 二度目の声掛けに、さすがに不満が声に出た。 なんで話しかける。こんな道に転がる分かりやすい災厄みたいな俺に。 ──そんなの。「いきた、く」「わかったわ」 喉は乾いた血の味がして、うまく喋ることができなかった。なのに女は俺の言葉をどう取ったのだろうか。 その影がしゃがんで近づいた気配に、さすがの俺も目を開けた。「あ、目が開いた」 俺に降りかかっていた日光を代わりに浴びて、その金髪が輝いていた。緑がかった瞳は若葉と同じ色だった。「やっぱり」 なにがやっぱりなのかは分からないが、さながら天使で今際の際に見る顔としては悪くない。「ねえ貴方、助けてあげる」 目を開けた俺に、女は薄く笑ってそう言った。「その代わり、助かったら……私の言うことを聞いてね」 瀕死の俺が言い返せないことも蹴り倒せないのもいいことに、女はそう言うと俺の体に手を伸ばした。悪魔か。 そ
Last Updated : 2025-07-20 Read more