崇志は遥生が去っていく背中を見つめ、先ほど彼が口にした言葉を思い返して、唇の端が徐々に上がった。そばにいた執事は一部始終を聞いていた。彼はじっと崇志の様子を見守り、崇志の選択もおおよそ理解したようだった。これまで冬川家を支えてきたのは、その勢力に対処せざるを得なかったからだ。だが、今や冬川家に大きな災いが迫ろうとしている。もはや自分たちが辱めを受ける必要はないと判断したのだ。それを見て、執事はその黒い瞳を少し動かし、低い声で尋ねた。「崇志様、冬川家の方へは、まだ行きますか?」崇志は彼を一瞥して答えた。「君は水野家を代表して行って、『最近、水野家は仕事が立て込んでいて、遥生も捜索には手が回らない』と言ってくれ」「捜索」の中には悠真を探すことも含まれており、これには何も異論は出せない。「かしこまりました」執事は応え、そのまま背を向けて去ろうとした。「ちょっと待て」崇志は思いついたことを口にした。執事は首をかしげる。「もう一つ、資金を用意して遥生に渡し、同時に邸内のボディーガードを全員集めて、彼に預けるんだ。彼と一緒に捜索に行かせろ」執事は少し考えた。「崇志様? それはなぜです? 遥生の手に委ねる権限はもう十分ではありませんか。しかもボディーガードを全員出せば、崇志様ご自身の安全は……」崇志は笑った。「今、彼は手が足りないところだ。俺のやっていることは、まさに渡りに舟だ」その笑みには深い意味が込められていた。今回、遥生は極端な行動で冬川家を怒らせた。その罰として、まずは見せしめの意味もあるし、同時に遥生を試したい意図もあった。今や崇志は、この息子が水野家を十分支えられることを確認した。だからこそ、少し甘い餌を与えて引き留め、心からここに留まらせようと考えたのだ。自分の安全を犠牲にして遥生のために星乃を探す行動を取れば、最終的に星乃が生きているかどうかに関わらず、遥生はその恩を忘れないだろう。とはいえ、崇志はやはり星乃には生き延びてほしいと思っていた。生きていればこそ、遥生の弱みをより効果的に握ることができるからだ。だが、瑞原市の別の場所では、ある者の考えは崇志とはまったく異なっていた。律人が死亡したという噂が白石家に広まると、家の空気は一気に重苦しくなった。元々重かった雰囲気が、まるで
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