星乃が悠真からの電話を受けたとき、彼女はジジにキャットフードをあげているところだった。まだ人の前腕ほどの長さもない子猫なのに、食欲は驚くほど旺盛で、ほんの数分のうちに小さな器のフードはきれいになくなった。ジジは前足をぺろりと舐め、くりっとした大きな目で星乃を見上げる。星乃はもう一杯フードを足しながら、スマホを肩と耳で挟み、くすっと鼻で笑った。「結衣に、公の場で私に謝れって?悠真、頭は打ってないはずだけど……どうしてそんなおかしなこと言えるの?」結衣の性格を思えば、自分に向かって公に謝罪するなんて、刑務所に入るよりもずっと苦しいはずだ。その反応は、悠真の想定内だった。悠真は腹を立てる様子もなく、淡々と答える。「本気だよ。必要なら、俺が直接君に謝ってもいい」その声には、今まで彼女が気づいたことのない、妙な優しさが混じっていた。星乃は小さく笑った。「でも、私が欲しいのは謝罪だけじゃない」言い終えた瞬間、星乃は自分が無駄なことを言っていると悟った。――悠真が結衣を警察署に突き出すはずがない。これまでと同じように、きっとまた諦めるよう説得されるのだろう。そう思ったが、今回は違った。悠真はきっぱりと言う。「君が何を望んでいるのかは分かってる。必ず納得のいく形で答えは出す。ただし、今じゃない」星乃は皮肉を込めて、その言葉をなぞる。「そうね……今じゃ無理よね。結衣のお腹には、あなたの子どもがいる。少なくとも、生まれるまでは何もできない。じゃあ、子どもが生まれたらどうするの?今度は『子どもに母親が必要だ』って理由で、また先延ばしにするんじゃない?」悠真は問い返した。「君の中の俺って、そんな人間なのか?」「違うとでも?」星乃は即座に返す。「昔は結衣のためなら命だって投げ出した人でしょ。今はその結衣があなたの子を身ごもってる。それで、私があなたに正しい決断を期待できると思う?」「どうしてできない?」悠真はそう言い、続けた。「二日前だって、俺は君のためにも命を投げ出しただろ」星乃は言葉を失った。喉元まで出かかった言葉が、そのまま詰まってしまう。――確かに、悠真は自分を助けた。彼女が黙り込むと、悠真はさらに言葉を重ねる。「信じてもらえなくてもいい。あの頃、俺が結衣に対して抱いていたのは罪悪
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