圭吾は決断が早く、容赦のない人物で、若くして白石家を完全に掌握していた。そのため、律人も普段から圭吾に対しては、どこか一目置いているところがあった。もっとも、それは恐怖というより、純粋に能力の高さへの敬意だ。学ぶべきところが多く、尊敬に値する存在だと思っていたのだ。それに、圭吾はこれまでずっと律人に対して、決して悪い扱いをしてこなかった。周囲からは「人を殺すのに瞬き一つしない」「拷問も平気でやる狂人だ」と恐れられていたが、白石家の他の人間と違って、律人が圭吾を恐れたり、怯えたりすることはなかった。だが、圭吾が現れたその瞬間に、律人は握っていた手がかすかに震えたのを感じ取った。彼はそっと視線を落とし、その手の持ち主を見た。星乃は顔色を失い、唇をきつく結んだまま、視線を圭吾から逸らさないでいた。まるで、圭吾が現れたその瞬間から、全神経を張り詰めさせているかのようだ。律人には、彼女の荒くなった呼吸音さえ聞こえた。恐怖。緊張。怯え。前に崖下から目を覚ましたとき以来、こんな星乃の姿を見たのは初めてだ。律人の胸に、言葉にできない感情が広がる。以前、まだ星乃がどんな人なのか知らなかった頃、とある噂話を耳にしたことがある。星乃が余計なことをして、圭吾と沙耶を引き裂いた、という話だった。そのときは思った。人の恋愛に、なぜ首を突っ込む必要があるのか、と。けれど今、緊張でこわばった彼女の横顔を見ていると、胸の奥が針で刺されたように痛む。圭吾に逆らってはいけない。そんなことは誰もが知っている。それでも彼女は、面倒なことになると分かっていながら、沙耶を自由にするために手を差し伸べた。――あまりにも、無鉄砲だ。そして、その愚直さが、たまらなく胸を締めつけた。律人は視線を切り替え、圭吾を見つめる。そして、いつものように穏やかに微笑み、一歩前に出て、星乃を自分の背後にかばうように立った。「お兄さん」圭吾は冷え切った声で、短く言った。「来い」たった二文字。それだけで、言いようのない危険がにじんでいた。律人が一瞬ためらい、前に出ようとしたそのとき、星乃が慌てて彼の手を掴んだ。「行かないで」律人は振り返り、青白い彼女の顔を見ると、落ち着かせるように手の甲を軽く叩いた。「大丈夫だよ。星乃、僕を信じて。僕は君
Read More