星乃は立ち上がった。悠真は反射的に彼女の方へ二歩ほど歩み寄り、さっきの出来事を説明しようとしたが、星乃はその機会を与えなかった。彼女は手を伸ばし、ためらいもなく彼をドアの外へ押し出した。ドアを閉める瞬間に見せた星乃の冷たい視線を見て、悠真は、自分が律人を傷つけた張本人だと思われているのだとすぐに悟った。悠真は苛立ちのあまり、頭をかきむしりたくなった。それ以上に腹立たしかったのは、星乃が説明の余地すら与えてくれなかったことだ。自分が律人に手を出していないと証明する方法はある。だが彼女は、犯人が自分かどうか疑う段階ですらなく、あの瞬間にもう自分がやったと決めつけていた。悠真はどうしようもない無力感に襲われた。病室では、星乃がナースコールを押すとすぐに医者が駆けつけた。診察の結果、大きな問題はないと言われ、看護師が改めて薬を用意し、点滴が続けられることになった。星乃は慌ただしく動き回り、律人に水を差し出して口をすすがせ、血で汚れたシーツも取り替えた。やがて律人の顔色が少し落ち着いてきたのを確認して、ようやく彼のそばに腰を下ろした。律人は彼女のぎゅっと寄った眉を見て微笑み、手を伸ばしてそっと撫でてほぐした。「大丈夫、何ともないよ。そんなに弱い体じゃないから、心配しなくていい」心配しないわけがない。どう見ても、無事とは言えない状態だ。星乃は少し考えてから言った。「さっき、悠真がここに来たのはどうして?」悠真の名前を出した途端、彼女の声は少し冷たくなる。律人は質問には答えず、軽く笑った。「五年も一緒にいた元夫なんだろ。あんな態度を取って、本当に嫌われてもいいの?」星乃は言った。「それならちょうどいいでしょ。面倒が一つ減るだけ」「でも、昔はすごく好きだったって聞いたよ」律人は一拍置いてから続けた。「もし彼がやり直したいって言って、できる限りの償いをして、ちゃんと君を大事にするって言ったら……復縁するの?」リンゴの皮をむいていた星乃の手が、ぴたりと止まった。彼女は顔を上げ、律人を見る。胸がわずかに締めつけられる。今の言い方には、明らかに少し嫉妬が混じっていた。さっき悠真が、自分に復縁の条件として出した話を伝えたのだろうか。あのときは、悠真がそんな条件を受け入れるはずがないと思っていた
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