神崎遼一(かんざき りょういち)が地震現場に駆けつけたとき、私は神崎優菜(かんざき ゆうな)とともに巨大な岩の下敷きになっていた。私は身動きが取れず、下腹部には重い痛みが走る。お腹の赤ちゃんの様子も、どう考えてもよくないと分かった。優菜の声がずっと聞こえず、不安になった私は、自分も決して無事ではないのに、必死で彼女を励ました。「優菜、怖がらないで。お兄ちゃんが必ず助けに来てくれるから」今朝、優菜のことで遼一と喧嘩して以来、私たちはほとんど口をきいていなかったけれど、彼ならきっと来てくれると信じていた。お腹には彼の子供もいるのだから。彼が私を愛していなかったとしても、お腹の赤ちゃんにはきっと期待しているはず。――そう思っていた。でも、それは私の思い上がりだった。私と優菜、どちらか一人しか助けられないと分かった瞬間、遼一は冷たい声で言い放った。「先に助けるのは優菜だ」「……え?」私は聞き間違いかと思い、困惑しながら遼一を見つめた。けれども、彼の声は相変わらず冷たく、感情の色は微塵もなかった。「藤原 希美(ふじわら のぞみ)、お前には分かってほしい。優菜は子供の頃から体が弱い。お前を先に助けたら、優菜は死ぬかもしれない。そんなの、俺には見ていられない」「大人しくしていろ。優菜を助けたら、すぐにお前を助ける」私はなんとか涙を堪えようとしたものの、声がどうしても震えてしまう。「お願い、あなた……私は我慢できても、お腹の赤ちゃんは待てないの」「駄目だ」「遼一、お願い……赤ちゃんが死んじゃう!」絶望と苦痛の中、私は彼を見つめた。「希美、お前が本当に優菜の子を殺したのなら、今度は自分の子で償う番だ」「それに、お前のお腹の子が本当に俺の子かどうかなんて、お前自身が一番分かってるだろう?最初から、そんな子どもはいなかったことにするよ」その言葉の冷たさに、私は全身が凍りついた。言い訳しようと口を開いた。「どうして……そんなこと言うの?私が……」だが、最後まで言い切る前に、救助隊の作業が始まり、巨大な岩が私の方へと倒れてきた。私は完全に暗闇の中へ――私の心は氷のように冷えきっていく。七年間も彼を愛してきて、お腹の子どもまでいるのに――それでも、私たちの存在は優菜には到底かなわなかった
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