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Lahat ng Kabanata ng 恋の味ってどんなの?: Kabanata 21 - Kabanata 30

31 Kabanata

第二十一話

 時雨にも清太郎にも少し引っかかったようなことを言われて、一体どういうことなのだろうかと思いながらもバイト先のファミレスの裏口から入っていく。 と同時に藍里の様子を社員の沖田が慌ててやってきた。「すまん、藍里ちゃんって160くらいだよね……」「何が160ですか?」「身長だよ。雪菜くらいだから雪菜の制服を着られるよな?」「はっ???」 と藍里は沖田から制服一式を押し付けられた。きっと雪菜がロッカーに置いてた制服であろう。名札がついていた。「早く、着替えろ。人が足りないんだ。メニューの取り方とか諸々はバイト入る前の本部研修で習ったろ」 そう言われた藍里は確かに名古屋のファミレスの本社で1日だけ通しで研修したということを思い出したがたった1日であとは裏方でキッチンの手伝いだけであった。「着替えろ、早く!」「は、はい……!!」 そして五分後には着慣れないファミレスの制服を纏いファミレスのキッチンに入ると数人の忙しそうにしてるキッチンスタッフの男性たちはびっくりした様子で見ている。「あらぁ似合うじゃない、藍里。さぁ早くもう大変なんだからぁ」 理生がやってきた。藍里は初めてのフロアでの仕事。平日の夕方はいつも混み合っているのだがそれを何人かのアルバイトたちが回していたのだが夏休み明けのテスト週間、雪菜のボイコットによる欠席でてんてこまい。 いつもはキッチンからお客さんは多いなぁと思いながら見ていたのだがまさしくそれ以上を越すものであって藍里はどきどきよりも緊張が上回る。「そこの可愛いオネェさん! 水くださいな」 早速声がかかった。若い大学生の集団。こちらは違う大学の生徒なのか、テスト期間ではないようだ。「すいません、さっきから呼んでるけどこなくて」 と大学生の席に行く前に老人夫婦に呼び止められる。「おーい、全然注文したもの来ないんだけどぉ」 とビールを片手にグダを巻くサラリーマン。 藍里は全てにハイ、と答え対応していくが、目線の先に見覚えのある顔……。「すいませんーってあれ、藍里じゃん」 なんと清太郎がいたのだ。しかも何故かクラスメイトの女子数人に囲まれて。クラスメイトの女子が藍里を見てびっくりしている。ひとりはスマホで藍里のファミレスの制服姿を撮影して藍里はやめてって困り顔。清太郎もバツ悪そうな顔をしている。 きっと藍里が着替
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第二十二話

「いらっしゃいませぇえええ……って、あれ?」 なぜか意識を取り戻したと同時にまだファミレスにいたと思い込んでいた藍里は、今ここはファミレスではないってことに気づく。バイト先の休憩室である。「大丈夫か、藍里」「……宮部くんがなんでここ……うっ」 体をゆっくり起こしたが少し頭に痛みを覚える。清太郎が藍里を再び横にした。「倒れたんだよ。その時にテーブルの角に頭すったみたいだけど……今救急車呼んだらしい」「……保険証、多分家」「お母さん呼ぼうか。電話貸して」 藍里は首を縦に振る前に、さくらは今日まで生理で体調が悪い……滅多にない休みを自分のために使っていいのだろうか。倒れたのはきっと貧血だろうが。それとも……あの男の客の傲慢な態度を見て過去を思い出したのだろうか。 清太郎は藍里の頭をアイスノンで冷やす。「一緒に来てたクラスの子達は……」「心配してた。まだいるけど」「……お店は」「今はそんな心配するな。それよりも早よ電話」 藍里はスマホで『さくら』と着信履歴から出して清太郎に渡した。自分から電話しようとしたがやはり少し頭が痛い。なかなか着信に出ないようだが清太郎は心配そうに藍里を見ている。 よりによって自分の倒れた時に彼が客としているだなんて、しかも他のクラスメイトもいた訳であって……恥ずかしさもある。「……俺の席からあの客見ていたけど酷かったよな。奥さんに対してすごくひどいことを言ってたしな」 藍里は男性客を綾人、女性客をさくらと重ね合わせてみていた。「ひどいよな……あ、もしもし? あれ、橘……じゃなくて百田……さくらだっけ藍里のお母さんの名前」「さくら。ママ出た?」 清太郎はスマホを持ったまま少しキョトンとした顔している。きっとさくらが寝ぼけて電話に出たのだろうか。「百田さくらさんのスマホですか。……そうですよね? あの、さくらさんは」 もしかして、と思い藍里はスマホを取り上げた。「もしもし」『もしもし、藍里ちゃん? 今の男の人誰かな。さくらさんは今寝てるんだけどどうしたかな』 時雨の明るい声だった。しまったーと清太郎を見ながら電話を続けようとするが清太郎がスマホを取り上げた。「すいません、同じクラスメイトの宮部清太郎です。さくらさんに名前おっしゃっていただけたらわかるはずです。さくらさんの娘さんの藍里さんがバイト中
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第二十三話

 その時、ファミレスでは外に救急車が来て少し騒々しかった。奥から担架で運ばれる藍里。それを追う清太郎と理生。 さっきまで清太郎といたクラスメイトたちも心配そうにみていた。が、そのうちの一人|帷子《かたびら》アキがスマホを見ている。「あ、それさっきの藍里じゃん。可愛く撮れてる」 と、姫路《ひめじ》優香が覗き込む。アキのスマホに藍里をこっそり撮った写真を何がメッセージフォームにつけてページの送信ボタンを押した。「まさかアキ、あれに送ったの?」 潮なつみも覗き込む。アキはニヤッと笑った。「てか大丈夫かなぁ……百田さん」「すごい勢いで頭ぶつけてたし……血は出てなかったけどさ。にしても宮部くんが藍里! 藍里! って叫んでたのびっくりだわ~」「宮部くんと百田さん、幼馴染運命の再会恋愛……見守りたいよねー」「うんうん!」 あき、優香、なつみは何事もなかったかのように清太郎と食べるはずだったビックパフェを食べる。「そうそう、あと……」 藍里の写真を送った先から返信がアキのメールに届いた。『この度は推薦でのご応募ありがとうございます。結果につきましてはまたこちらからメールを送らせていただきます 名古屋発映画、橘綾人の娘役オーディションチーム』
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第二十四話

 藍里は担架に乗って救急車に運ばれた。清太郎も一緒である。後で一緒に理生が藍里のカバンを持って追いかけてきた。「……理生さん、お店は?」「大丈夫よ。昔のバイトの子達招集してなんとかきてもらった。前から頼んでいたけど一気に今日は入れますって。偶然にも程があるわ。あなたはラッキーよ」 と清太郎に荷物を渡して藍里の右手を握った。「気にしないで、少しでも早く呼べていたらあなたに不慣れなことをさせなかったのに、ごめんなさいね。でも制服似合ってたから。回復したら少しずつ私のもとでフロアで働こうね」 とたたみかけるように理生は話しかけた。藍里は苦笑いして握り返す。「そろそろよろしいでしょうか。ご家族の方ですか」「職場の先輩です、でこの男の子は……」 救急隊員に対して理生はなんと言っていいかわからず声が出ない。すると清太郎が「えっと、藍里の彼……」 と言いかけたところであった。「藍里ちゃーん!!!!!」 とやってきたのは時雨であった。「おたくは……」「藍里ちゃんの……えっと、その、なんというか……あ、さくらさん……藍里さんのお母様の代わりにやってきました。今まだ寝てるんです……」「寝てる……? 母親が」 救急隊員はあっけに取られているようだがもう行くとのことで時雨は理生の目の前で救急車に乗り込んだ。清太郎もあっけに取られている。救急車は発車した中で藍里はさくらがまだ寝ているのかと彼女もなんとも言えないのだが、今清太郎と時雨というこの組み合わせの中一緒にいるのがさらに……。「さくらさん、少し前にまた寝ちゃって。明日からまた仕事でしょ。寝ちゃうと起きないし、何度も叩き起こしたけども起きなかったから枕元にメモを置いておいた……」「マジかよ、娘倒れたのに寝るような人だっけ」「……藍里ちゃん、彼は誰? 制服からすると一緒の高校の」 藍里は答えようとしたが「彼氏です」 と思ってもいない回答に声が出なくなった。藍里は首を横に振ろうとしたが隊員が押さえていたため振れなかった。「それは驚きだなぁ……藍里ちゃんここにきてからすぐ彼氏出来るなんて、さくらさんに似て美人さんだからそうだよね」 時雨もそんなことを言い、こないだの藍里ちゃんも、の「も」の意味深さに拍車をかける。「……彼氏ってのは冗談ですけどあなたこそ誰ですか」 清太郎がさらっというと時雨は
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第二十五話

 藍里は何とか受けごたえもできて会話もできるが頭を強く打ったという清太郎の証言もあったため、念の為に検査を受けることになり、少し時間がかかるようだ。 時雨と清太郎はベンチで待つ。互いに知らない同志。男と男。病院ということもあり静かな時間。「あのさ……また明日学校もあるから君は先に帰っててもいいよ、親御さんも心配するだろう」 と言い出したのは時雨だった。清太郎は首を横に振った。「僕は親戚の家に居候していまして……連絡もしてます。正直居候の家にいるよりかは外にいた方がいいから待ちます」「いや、もう夜8時だよ。だったらタクシー呼ぶから」「いいえ、藍里のそばにいてあげたいです」 清太郎の強い眼差しに時雨はびっくりした。「ごめんね、なんか……追い出してるわけではないけど、なんというか」 時雨は少しひるんでるようだ。「さくらさんの娘さんで……ほら付き合ってるんだけど、一緒にいる時間が長くて。なんというか、そのね……」 と口を濁らせてるようにしどろもどろに時雨が目線を合わせずに答えてると、さくらがあわててやってきた。 着の身着のまま来たらしく、ルームウェアだがなんとか外でもセーフな格好であった。「藍里はっ、時雨くん……ってあなたは」 さくらは目の前でスッと立ち上がった青年の清太郎を見てハッとする。 数年前に見た時よりも大人になったが面影はあるようだ。「……宮部、清太郎くんよね? お久しぶりね」「お久しぶりです。懐かしいですね」「うん、あらまーあんなに小さかっ……いや、それがもうこんなにっ。藍里に時雨くんよりも大きい」 比べられた時雨は苦笑い。「180はあるので。父さんに似ました」「そうだったわね……まさかこんなところで会うなんて。制服、藍里の学校だから……岐阜からここまで通ってる?」「親戚の家が近くなんで下宿してます」「藍里、まったく言ってなかったわよ。クラスメイトだなんて」 すると時雨が首を横に振る。「なんか藍里ちゃんの彼氏だって」 さくらはびっくりする。清太郎は慌てる。「いや、あれは冗談です」 するとそこに看護師がやってきて静かに! のジェスチャーをされ、3人は一緒にベンチに座る。看護師が藍里の家族の一人として書類や説明などを聞かされ、記入していく。「でも藍里が倒れたなんて……あっ」「なんか心当たりでも」 さくら
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第二十六話

 藍里は部屋に入ってきたさくらを見ると少しホッとした。なんだかんだでやはり母親が一番なのだ。 さくらは藍里の右手を握る。反対の腕は点滴を打っているようだ。「貧血と過労とのことよ。脳波も異常なし。ごめんね、すぐ行けなくて」「ううん、ママも体調悪かったし……明日から仕事で大丈夫? 生理終わってないのに」「そうだけど私が休んだらあんたと時雨君養っていけないでしょ。頑張んなきゃ」「……無理しないで。私みたいに倒れちゃう」「大丈夫、やすみやすみにやれるから。あ、二人にも入ってきてもらおうか」 さくらは手を離して外で待っていた清太郎と時雨を呼んだ。「藍里ちゃん……特に何もなくてよかったよ」「時雨君もありがとう。宮部くんもこんな夜遅くまで待っててくれたなんて」 清太郎は首を横に振った。「しばらくは授業のノート書いてもっていくよ。無理すんな」「ありがとう……」 さくらは少し難しそうな顔をしている。「途中から編入してきてしかも夏休み明け……数日休んだら遅れがさらに増えてしまうわ」 藍里も確かに、と言いつつもどうにもできないものである。さくら自身も藍里を連れて逃げた際にしばらくはまともに学校に生かすことができずに避難先の施設で勉強を教えてもらったくらいであった。「勉強に遅れがあるけどさらに遅れちゃう……」 さくらは頭を抱える。「ごめんね、藍里……私がいけない」「なんで? ママがなんで今そんなこと言うの。私がちゃんんと自分の体調を管理しなかっただけだし」「私が逃げなきゃ、逃げなかったらあんたがこんな苦労することなんてなかったの」 さくらはまた自責の念に陥る。 時雨がさくらを抱えて宥めながら病室を出ていく。 病室の中は清太郎と二人きりになった。「……お前の母ちゃん、雰囲気変わったな」「うん、宮部くんもそう思うよね。自分の母親のこと言うのもあれだけど」「あの彼氏さんがいい人なんだろうな。優しそうじゃん」 藍里は頷いた。どちらかといえばさくらよりもそばにいる時間が長い彼女は彼の優しさはわかっている。「でも表情があんなに柔らかくなってた。あの頃の怯えたような目とは違う」 清太郎も子供ながらにそう思っていたようだった。藍里はそのようにさくらがそう思われていたとは……。「じゃあ俺帰るわ。……じゃあ」 清太郎は藍里を見ている。じっと、瞳を
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第二十七話

 それから次の日の昼前には退院をした藍里。迎えにきた時雨と共に帰る。さくらは仕事に行って次の朝まで帰ってこないとのことだ。「ママ、働くよねー……て私のバイト代足しにならないし、ママが働くしかないもんね」「僕もある意味無職だし、仕事しながらでも家事をしてさくらさんと藍里ちゃんを支えていきたいよ」 時雨の運転する車の助手席。藍里はそれを聴くと時雨はもうさくらと結婚し、戸籍上自分の父親が時雨になるのか、と思ってしまった。「でもさ、いい職場見つかりそうなんだよ」「は、はやっ……どこなの?」「昨晩タクシーで宮部くん送ってく時にさ、彼って親戚の弁当屋に下宿してるんでしょ。あそこの弁当屋さん。夫婦二人でご飯作ってレジと配達員をバイトにやらせてるらしいけど、作る人もう一人くらい欲しいらしいんだ」 藍里はそういえば昨日は清太郎と時雨は一緒だったということを思い出す。 藍里が時雨のことを好きと見透かされていたわけであって、そのあと二人で何を話したのか気にもなっていた。「結構気さくで礼儀正しい子だね。今度お店に行こうかなって。メアドも交換しちゃったー。高校生とメアド交換ってなんかテンション上がる……って同姓同士、嬉しい。友達そんなに多い方じゃないから」 変にテンションが高い時雨にすこし引き気味の藍里だが、そんな無邪気な時雨の笑顔と一緒にいられるのが嬉しいのだ。 昨晩はずっとさくらが泣いていた。居た堪れなくなり藍里は寝たふりをして目を瞑っていた。 時雨も知っている。荷物を持ってきてさくらにまた声をかけて空いているベッドの上にさくらを横に寝させた時雨だが、さくらは時雨をそのまま押し倒してキスをした。長く長く。 音を立てて、時雨のベルトを外すガチャガチャっと言う音。藍里はドキドキと鼓動が高まった。 我に帰った時雨はダメだよ、と言ってさくらを引き離し、さくらは何でって叫んだ。 時雨は明日藍里を迎えに行く、と言って再び病室を後にした。藍里は眠りにつくまでさくらの啜り泣く声を聞いていた。 全部このやりとりは聞いていた。二人とも藍里が起きてたなんて思わないだろう。 そんなことがあっても時雨は藍里を迎えにきた。さくらとの昨日のやりとりで時雨はどう思っているのか。 娘ながらに心配しつつも、複雑な気持ちの藍里であった。「今日はお家でゆっくり、ね。ご飯は食べれたかな」
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第二十八話

「体調はどうだ、藍里」 と机の上に何か入った袋を置く清太郎。ノートのコピーも一緒に。何だか1日、というか半日の量にしては多い。時雨に昼ごはんもどうかと言われたが、学食のパンを買ったからいいと言っていた。藍里はスパゲティを半分くらいまで食べ終わった。「ありがとう、昨日は夜遅くまで。それにこれ……」「おばちゃんが弁当屋のデザート持ってけ、て言うから。お前の母ちゃんと、なんだっけ……おにぎりみたいな具の名前の」「時雨くん……ね」 時雨はその時は台所でお茶を入れていた。多分聞こえて入るだろうが。 藍里はノートのコピーを手にして中を見ると文字が一枚一枚違う。「クラスメイトの奴らが心配して何も言ってないのにコピーして渡してきた」「そうだったんだ、今度お礼しなきゃね」「だな」 そこに時雨がお茶を持ってきた。「どうも、おにぎりの具の時雨です。はい、お茶」 やはり聞こえてたんだと藍里は笑った。清太郎も。時雨も別に慣れているのであろう、ニコニコ。「時雨くん、デザートもらった」「それはそれはご親切に。じゃあ僕のコーヒーゼリーはいらないかなぁ」「あ、どうしよ」 清太郎はじゃあほしい、と藍里に伝えると時雨が台所に戻っていった。「……まさか手作りのデザート?」「うん、常に何かデザートを作ってストックしてくれてるの。すっごい美味しいんだから」「ちょうどよかった、昨日パフェ食べれなかった……ビッグパフェ」「ごめん」 清太郎はクラスメイトたちがあとで送ってきた写真を藍里に見せた。3人でこのパフェを食べられたのだろうか、清太郎も一緒に食べてでさえも食べきれないサイズである。「ここで働いてる藍里にいうのも悪いけど俺は甘いのよりもコーヒーゼリーの方が断然いい。こんなあまったるい塊をあいつらは完食したらしい」 ともう一枚完食した写真も。「これはこれは……なかなかだね。盛り付けも大変だから店側からしたら大感激だよ」「だよな」 と時雨が二人の話を聞いてたのか立ち尽くしてた。 彼の手には生クリームホイップたっぷりかけたコーヒーゼリー。「ごめん、甘ったるいのダメだったかな。苦いから生クリームホイップしてみたんだけどさ」 少ししょんぼり顔の時雨。だが清太郎は首を横に振って受け取る。「いや、これなら大丈夫ですコーヒーの苦味とホイップの塩梅がいいと思います」
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第二十九話

「おれさ、藍里が学校にこなくなって家に行ったら血相変えて探し回ってるお前のお父さんがいたんだ……お前は知らないか? っていつも優しかった人だったのにすごく目の敵にされたかのように……怖かった。俺だってどこに行ったかわからなかった、知りたかった」「ごめんね……」「あのあと何度も知らないって言っても嘘だ、藍里と一番仲よかっただろって。なんとかして逃げて家帰ったら家にも来て、母ちゃんにたいしてもどっかに匿ったろって。姉ちゃんはびっくりして泣いてた。二人だって藍里たちがいなくなったこと知らなかったし」「宮部くんの家まで行ったの、パパ」藍里はふと綾人がさくらに対して攻めている時の言動を思い出す。普段はよその人の前では見せない姿を他の家庭でも見せたのかと。「母ちゃんは知らないの一点ばりで家に上がらせないようにしたけどちょうど父ちゃんが早くに帰ってきて……説得して帰ってもらったよ」藍里は自分達が逃げた後の地元の様子は一切知らない。「そのあとお前の父ちゃんもだけど学校に連絡したんだろうな。俺らも街の中探した。でも母ちゃんは何か知ってそうだったけど……」「ママに宮部くんのお母さんの話したらなんでかわからないけど黙っちゃった」清太郎の胸元で香る匂い、時雨とは違った石鹸と有名メーカー度シャンプーの匂い。こんなに近くにいたのは初めてだ。この間の時雨との距離以上に近すぎてドキドキが増す。「来週くらいに母ちゃんと姉ちゃんがこっち来る。会わせてやってもいいか。俺もいるから」「わからない。多分だけど過去のことから完全に断絶したいんだよ、ママは」「でも断絶してほしくない、母ちゃんのことは。俺らはこうして出会えたんだ。だから……」藍里は首を横に振った。清太郎はそうか、と少し悲しげだった。「宮部くんに会えたのは本当に嬉しかった。知らない人ばかりで不安だったの。岐阜から離れて神奈川行ってもうまく人間関係も築けなくて……」「俺たちだけはずっと繋がっていたい。俺は藍里の味方。それに俺の母ちゃんも藍里と藍里の母ちゃんの味方。それだけは忘れるな」清太郎はじっと見つめる。藍里は涙を拭いて頷いた。二人の顔が近くにある。じっと見つめ合う……だが清太郎はハッと我に帰って二人は体を離した。互いに真っ赤な顔になっている。「……まぁそれより、っていうか身体休ませて学校に戻ってこい。これから
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第三十話

 休んでるとほんとダラダラしてしまう藍里。バイトも一週間休みなさいと本部からも通達が来てしまったらしい。お見舞い金は来た。 授業のノートを見てても頭に入らない。やはり自分の目標がないからなのかと落ち込む。 大学に入るとなるとお金かかる。奨学金だけはやめなさい、と理生さんから言われていた。かと言って高卒で新社会人として社会に解き放たれるのも、とぐるぐると頭の中で回るだけである。「藍里ちゃん、今は何も考えないことが大事だよ」 と、隣ではハーブティーを飲む時雨。彼は家事の合間のリラックスタイムになるとソファーでテレビを見ながらこうリラックスするのが好きだという。特に派手に出歩くこともなく、今は百田家に雇われてる身として自覚しているようだが、もし清太郎の親戚の家で働くとなるとどうなるのであろうか。 家事や料理もしっかりしてくれるのだろうか。彼がいるからこそ自分はこうごろんとなれるんだろうなと藍里は思った。 テレビにはまた綾人が映った。先日クラスメイトが言ってた人気俳優の尊タケルとの共演しているドラマ予告であった。「ねぇこのドラマってどう思う?」「んー、クラスの子たちはキャーキャー言ってた」「……同じ同性からすると自分よりも年上の男同士で恋仲になる、というのは少しありえないなーって思うからどんな世界なんだろうってワクワクしちゃうんだ」「BL……なんで人気なんだろう。わたし、恋愛ものとかあまり好きじゃない」「わかるわかる、僕もね。恋愛ものよりも謎解きとか刑事もの」「だよね、いつもそれ見てるもん時雨くんと」「うん。……だからなんというかさくらさんと一緒にいることが今リアルな恋愛ドラマみたいな感じで」「……」「ごめん、こんなのぼせたなような話聞きたくないよね」「ラブラブなんだから」「なんだかんだでね」 藍里には複雑だ。自分の好きな人がさくらとの交際を楽しんでいる。 でもさくらが幸せなら、だがこの間はさくらの悲しんでいる姿に悩みに悩んでいた時雨を見たばかりだった。 そしてこの間の意味深な時雨の言葉も。 すると予告が終わると綾人が映った。ゲストだとのこと。時雨が察して消そうか? と言うが藍里は首を横に振る。『今度ドラマ初主演なんですね』『そうなんですよ。ありがたいことに先輩の尊さんとダブル主演で。彼も社会人演劇出身なのですごく嬉しい限りで
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