All Chapters of 恋の味ってどんなの?: Chapter 31

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第三十一話

 時雨は急ぎでもないのに時間もあるのに小走りでエレベーターを使わずに階段でアパートを降りていく。息を切らしてさらに先にあるコンビニまで走っていく。「……はぁ、やばい、やばい。もうすぐでやばいところやったわ」 走って気持ちを紛らわしていたのだ。別にコンビニじゃなくてもよかったのだがそう口走ってしまった。店内に入ってなにを買うわけでもなく。 成人向け雑誌はさっと目を背け、ちらっと見ると綾人が表紙になっている雑誌を見るとすこしムッとする。他の雑誌で隠した。 振り返って日用品を見る。切れていた食器用洗剤の詰め替え、キッチンタオルを入れる。ふと避妊具に目がいく。一度目を逸らすがコンビニで買ったことがなく見たことのないデザインだとつい手にとって見た。「あのぉ」「わぁああ」 時雨は慌てて避妊具をカゴに入れて声かけてきた人を見る。「やっぱ時雨やったか。久しぶりやな」「沖田くん。……久しぶりだね」「久しぶりやなぁ。藍里ちゃんと知り合いやったん?」 その沖田という男は時雨の高校の同級生でもある。藍里のバイト先のファミレスの社員でもある。「知り合いっていうか……なんというか」「藍里ちゃん運ばれていく時に遠目にお前の姿見つけてな。いや、ここ半年お前に似たようなやつこの辺でうろうろしてるの見えてな……こんなところで会うとは思わんかったわ」「沖田君は結婚しとったんやないの」「……離婚した、嫁さん子供連れて逃げたわ。ってお前結婚式呼ばんかったのに知っとったか」 確かに、と時雨は思い出すが離婚した時いた時に結婚式行って御祝儀払わなくてよかったと。沖田は同級生同志で結婚したのだがクラスメイトのほぼ全員呼ばれていたのになぜか時雨だけ呼ばれなかったのだ。「あの頃はめっちゃ存在感なしだったけど今じゃ垢抜けたなぁ、名古屋出るとやっぱりい変わるねぇ。って今はなにしてるの。藍里ちゃんとなんか関係あるの」「あ、その……」 時雨は忘れてはいない。沖田を中心にした時雨へのいじめを。いじめと言っても無視や仲間はずれがメインだった。 昔から勉強熱心で趣味が料理や読書などインドア派だった時雨を女々しいと沖田に揶揄われていた。 時雨は流石に今は自分が無職で年上のシングルマザーに養われ家事料理をしているというのがバレたら……と笑って誤魔化す。「ごまかすなよ、まかさ藍里ちゃんの彼氏か
last updateLast Updated : 2025-07-31
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