「本日から入社することになった、新人の東雲《しののめ》君だ。彼には轟《とどろき》さんの元で営業について学んでもらおうと思ってる。みんなよろしく頼むよ」「はじめまして、東雲 亮太《りょうた》です! みなさん、どうぞよろしくお願いします」 朝礼で部長から、その隣に立つ若い男性の紹介があって。 ずいぶん元気そうな新人さんが、この部署に入って来たのだと感心する。それも轟さんの元で、営業について学ぶことになるみたいだし。 事前に話を聞いていたのか、彼女は特に驚いてはいない様だったのだけど。「なんだか珍しいですね、こんな時期に新人さんが中途入社するなんて」 今までも中途採用が無かったわけではないが、特に忙しい時期でもないので不思議に思って轟さんにそう話しかけた。 すると彼女は……「東雲君は、大手の取引会社の社長子息なんだって。まあそう言っても彼は三男らしいし、これも社会経験のためらしいわ」「……へえ、そうなんですね」 やはり社長子息ともなると、勤められる会社もこういった紹介が多いのかもしれない。 そう言えば鵜野宮《うのみや》さんも社長令嬢だと聞いたが、朝陽《あさひ》さんの会社で見た時は仕事中だったような? 彼女は普段、どんな仕事をしているんだろう。 少し気になって、朝陽さんが帰ってきたら聞いてみようかと思ったりもして。そんな事を頭の中で考えていると。「貴女が轟さんですよね? これから色々な事を教えてください、頑張りますので!」 いつの間にか東雲君がすぐ傍にいて、ニコニコしながら私達に話しかけてくる。彼は結構、人懐っこいタイプなのかもしれない。「そう、こちらこそよろしく。そしてこの人は、私の補佐をしてくれている雨宮《あまみや》さん。彼女と関わる事も多いと思うから、二人共仲良くしてね」 轟さんはこういう時、必ず私の事も紹介してくれる。それもちょっと嬉しかったりするのだけど。 すぐに東雲君の視線がこちらに向けられて、満面の笑顔で私の手を握ってくるから驚いた。「はい、もちろんです。雨宮さんも、どうぞよろしくお願いします!」「はい、こちらこそよろしくおねがいします」 そう返すと、東雲君は部長に呼ばれてミーティングルームへと入っていった。まだ説明の途中だったようで、もしかしすると彼はかなりマイペースだったりもするのかな?「意外と良い子そうですね
最終更新日 : 2025-10-08 続きを読む