そもそも鵜野宮《うのみや》さんのように容姿も立場にも恵まれてる人が、私のような平凡な女を気にする事の方がおかしいと思うのに。それでもあの時の流と彼女に、何とも言えない怖さを感じたのは事実で。 そんな私に、白澤《しらさわ》さんは心配そうな表情を浮かべながら質問してきた。「この件について、今夜にでも朝陽《あさひ》と話をしますか? その場合は私も一緒に、今日の事を説明しますけど……」「確かに今後の事を考えると、そうした方が良いのかもしれません。でも……まだ犯人が彼女だという確信も持てないし、これが一時的な事で済むのなら出来るだけ大事にはしたくないので」 これは私の楽観的な希望でしかない、きっとこの程度では終わらないと分かっている。鵜野宮さんがこんな事をしている理由も不明だし、きちんと朝陽さんに伝えるべきだという事も。 それでも、迷ってしまうのは……多分、私の狡い考えがそこにあるから。決して人に見せたりできない、ドロドロとした自分の心の黒い部分。 そんな感情を抱えて、それ以上何も言えずにいると……「一度で済む可能性は低いと思いますが、それでも私は鈴凪《すずな》さんの希望を尊重しますよ」「……いいんですか? そんなことをしたら、白澤さんが朝陽さんに怒られたりしません?」 少し考えた素振りを見せた後、白澤さんはそう言ってくれた。もちろん依頼主である朝陽さんにそれを伝えないという事は、何かしらのペナルティーを受ける可能性だってあるわけで。 でもそれを聞いても、彼はいつもと変わらない表情で……「まあ朝陽に怒られない、とは言い切れませんね。ですが、それで鈴凪さんに『護衛をやめて欲しい』と言われるよりはマシかと。これも私的には、の話ですけど」 そんな風に答えてくれるから、少しだけ罪悪感で胸が苦しくなった。こんなの私の我儘に過ぎないのに、白澤さんは決して怒ったりしないのだと。「白澤さんにとっての護衛とは、そういうものなんですか?」「……ええ、そうなんですよ」 だから貴女は何も気にしなくていい。と言うように白澤さんは頷いて、それからゆっくりと歩き出す。 こんな誠実で優しい人を困らせてしまう自分が、少しだけ嫌いになりそうだった。 私自身がちゃんと、鵜野宮さんの嫌がらせにも負けないくらい強くならなければいけないんだって。そう心を奮い立たせて、真っ直ぐな気持
Last Updated : 2025-09-26 Read more