急に行く先を変えるように方向転換した白澤《しらさわ》さんに驚いたが、理由を聞く前に歩き出した彼に焦って話しかける。 普段の白澤さんなら絶対にしなさそうなのに、こんな寄り道なんて。「ええっ!? 回り道って、ちょっと待って。いったいどこに行くつもりなんですか、白澤さん」「鈴凪《すずな》さんが来てくれるのを待っているそうですよ、今から彼女に会いに行きましょう」 私を待っているって、それは誰のことなのだろうか? 戸惑う私の手を取って、強引に歩き出したのにもビックリしたけれど。いったいどうして、こんな急に?「その彼女って……ええっと、白澤さんのお知り合いですか? って、ちょっと待ってくださいよ~」 心当たりが無くて訊ねても、白澤さんは答えをくれる気はないらしく。そのままグイグイと手を引いて大通りまで行くと、そこから強引にタクシーに乗せられたのだった。「着きましたよ。相変わらず、屋敷の方はあまり手入れがされてないようですね」 繁華街から離れた古い街並みの並ぶ通りでタクシーを降り、少し歩いた場所にある年季の入った純和風の屋敷。確かに少し荒れた部分も見えるが、ここに人が住んでいる事は分かる。 どこか懐かしさを感じるこの家には、どんな人が暮らしているんだろう?「白澤さん、ここってもしかして……?」 多分、白澤さんが私をここに連れてきた理由は分かった気がする。彼の言っていた『彼女』が誰なのかも。 だけどこんないきなり来たりして、本当に大丈夫なのだろうか?「はい、そうです。私の古くからの知人で、人形の扱いだけは完璧な変人の住処ですよ」「おい、誰が完璧な変人だって? 白澤、お前にだけはそう言われたくないんだが」 後ろから急に人の声が聞こえて、驚いて変な声が出そうになる。しかも何となく白澤さんの話した言葉のニュアンスと、この人の受け取り方が違っているような? いや、いま気にするところはそこじゃないって分かってはいるんだけど。「ああ、そんな所にいたんですか。てっきり奥の作業場で、いつものように人形と話していると思っていたのですが」 本当にこの方がいないと思って話したのか怪しい気もするけれど、たまに白澤さんって分かっててやってる感じがするんですよね。 これって私の気の所為なのかな、と一人で考えていると。「ここは私の店だぞ、どこに居ても不思議じゃないだ
Terakhir Diperbarui : 2025-10-30 Baca selengkapnya