「……そんな所だけ、とは? まるで俺がそれ以外では気が短いと言いたげだな、否定はしないが」 つい口から出た言葉で怒らせてしまったかと思ったが、そんな事はなく。朝陽《あさひ》さんはあっさりとそれを認めてしまう。 いつもだったら絶対に嫌味の一つも言うのに、今はとんでもなく機嫌が良いようで。 あらかた予想はしていたが、やっぱりすでに私の方が振り回されてしまっている。「本当はどっちなんですか、もう……」 そう言って溜息をつく私の髪に、何故か朝陽さんが勝手に触れてくる。先程までと一変した甘い雰囲気に、こっちの方がついていけそうにない。 それなのに、朝陽さんは…… 「さあな。そんな事より今は、こっちの方が俺にとって重要だし?」「……こっちって?」 彼から含みのある言い方をされて、つい身構えてしまう。朝陽さんがこんな話し方をする時は、絶対に私に何かをするつもりだったから。 さすがに恋人同士となった今でも、そんな意地悪はしないと信じたいのだけど。「晴れて両想いという事が分かった事だしな、もっと相手の事を知りたいと思うのは当然の事だろう?」「その知りたいって、それはどういう意味ででしょうか……まさか?」 それは私だって同じだし、もっと朝陽さんの事を知れたらなって思いはするけれど。そうして身近に感じれたら、幸せなんだろうって。 だけど、展開がいきなりすぎて……まだ自身の頭と心の整理が出来ていない。 だからこそ、どうにかこの話を誤魔化したかったのだけど。「くくっ、鈴凪《すずな》の期待に応えられるよう俺も努力しなきゃいけないだろうな」 そう言うと朝陽さんは、私の脇と膝裏にスッと手を差し込んでそのまま抱き上げてしまう。そんな事をされるとは思っておらず、つい悲鳴を上げそうになったが何とか耐えたけど。 でも、これってお姫様抱っこですよね!?「――え? ちょ、ちょっと待って朝陽さん!?」「嫌だ、待たない。俺は前回からずっと、鈴凪をおあずけされたままなんだぞ」 それを今のこの状況で言うのは狡くないですか? 朝陽さんは私に断れないようにして、そのまま彼の寝室に向かってズンズンと歩き出してしまう。 さっきお風呂に入ったばかりで良かった、なんて思えるわけもなく。必死で朝陽さんの説得を試みたが、彼は全く聞く気は無いようで。「そ、それはっ……ねえ、私の話も聞い
آخر تحديث : 2025-11-11 اقرأ المزيد