جميع فصول : الفصل -الفصل 140

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互いが望む未来に 3

「そ、そんなわけないじゃないですか! ただ、あまりに急で驚いてしまって……」 嫌なわけがない、むしろこんなに真剣に考えてくれて喜ばしいことなのだから。ただ予想してなかったことが起こりすぎて、それを家族に上手く説明出来るかが心配だっただけで。 朝陽《あさひ》さんは今の私の気持ちもちゃんと考えて、それでもこうした方がいいと思って話してくれてるのだろうし。「分かってる、でも結婚式を予定通りに行うためには必要なことだろう? 俺はきちんと鈴凪《すずな》が両親に祝福される、そんな幸せな花嫁にしてやりたいんだ」「……本当に私を世界一の愛され花嫁にしてくれるつもりなんですね、朝陽さんは」 最初は朝陽さんが鵜野宮《うのみや》さんの気を惹くために演じるはずだった、世界一の愛され花嫁。それを彼は現実にしようと努力してくれている、これが嬉しくない女性はいないはず。 嬉しくてちょっと瞳が痛いくらいなのに、彼はいつものように自信に満ちた表情で……「有言実行ってな、それが出来るのは俺だけなんだから。俺の両親のこともあるから、そう簡単ではないだろうけど」「そうですね、私も頑張らなきゃ! 前回はちょっと話をしただけで、足が震えちゃいましたし」 正直なところ、朝陽さんのお父さんは威圧的でかなり怖い。でもこの人との将来を考えるのなら、この事から逃げちゃダメなんだって分かってるもの。「まあ、それについても夜に話し合うつもりだが……後は、梨乃佳《りのか》とお前の元婚約者についてだな。あの男が鈴凪に付き纏っている事は白澤《しらさわ》からも聞いてるし、梨乃佳との繋がりも今も切れていない様だから」「そう、なんですね……流《ながれ》はまだ鵜野宮さんと連絡をとってるんですね」 以前会った時に元カレは鵜野宮さんについて随分な事を言ってたが、それでもどうやらしっかり連絡はしているようだ。あの二人がこのまま大人しくしているとも思えないし。 彼らに対する不安な気持ちは、やはり大きいのだけど。「職場への行き帰りは今まで通り白澤に頼んでいるが、それ以外の時でもなるべく一人での行動には気をつけろ。休みの時は俺が傍につく様にするから」「……はい、ありがとうございます」 朝陽さんは心配するなと言うように、優しく微笑んで私の頬を片手で撫でてくれる。 少しだけ私の所為で朝陽さんに負担をかけてないかと心配
last updateآخر تحديث : 2025-12-09
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互いが望む未来に 4

「どうやら良い方にお二人の関係が進んだみたいですね、何よりです」「あはは、やっぱ気付いちゃいますよね……白澤《しらさわ》さん、ありがとうございます」 会社へと送ってもらう途中で白澤さんから特に驚いた様子もなくそう言われてしまい、苦笑いしながらお礼の言葉を返すしか出来ない。 それもそのはず、今朝の朝陽《あさひ》さんは白澤さんが来てからも恋人モードを隠そうともしなかったし。すぐに察しても、その場では余計な事を言わないところが白澤さんらしいけれど。「まあ、あれだけ朝陽がデレデレしていたら気付かないふりを続けるのも面倒ですし。それに。私としてはこうなる事を望んでましたから」「……白澤さんは最初から鵜野宮《うのみや》さんとはヨリを戻してほしくなかったんですか?」 彼女と遭遇すると、白澤さんはいつも冷たい態度をとっていたし言葉も辛辣だった。鵜野宮さんも彼を気に入らないような言い方をしていたし、かなり喧嘩腰だったと思う。何かそうなった理由があるのかもしれないが、それを聞いていいものか悩む。「彼女は朝陽の持っているもの、これから持つであろうものにしか興味がない。肩書き、財産、ルックス……ですが一度、朝陽がそれを手放そうとした時にあっさりと彼の元を去った。なのに今更惜しくなって、擦り寄ってくるような女性なんですよ」「色々すごい人だとは思ってましたが、想像以上ですね」 私に対する嫌がらせの時も少しの罪悪感も覚えないように、自分にとってメリットがあれば何をしてもいいと思っていそうだ。それは彼女が社長令嬢という立場であることも手伝っているのだろうけど。 だけどそれなら尚更、私は朝陽さんのそばを離れるわけにはいかない。彼に対する想いでは、絶対に鵜野宮さんには負けてないのだから。「私は鈴凪《すずな》さんを応援してますし、お二人の力になりたいとも思ってます。だから……ずっと朝陽の隣にいてやって下さい」「……はい!」 白澤さんの言葉に勇気づけられて、もっと頑張れる気がしてくる。これから先、朝陽さんの横に立って恥ずかしくない自分になりたい。根性や努力だけではどうにもならない事もあるだろうが、出来る事からやっていかなくては。 そんな気合いを入れてオフィスに入ると何故か朝陽さんとのことがバレて、轟《とどろき》さんや女性社員に根掘り葉掘り聞かれる羽目になってしまったのだけど。
last updateآخر تحديث : 2025-12-10
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互いが望む未来に 5

「そこまで怒らなくてもいいだろ? 俺は付ける時にちゃんと鈴凪《すずな》にもOKか確認しただろうが」「そ、そんなの……あんな状態でまともな反応が出来るわけないじゃないですか! それに付けても一つ二つだと思ってましたし」 確かにその時のことを思い出せば、朝陽《あさひ》さんはキスマークをつけてもいいか聞いていたと思う。けれどもその時には私は、もうまともに返事が出来る状態じゃなくて。理性も思考も蕩けてしまっていて、彼の言葉に頷くだけで精一杯だったのだ。 こんな身体のあちこちに花びらを散らしたように、印がつけられてるなんて思いもしなくて。なのに、朝陽さんは……「俺だって浮かれてたんだ。好きな相手と抱き合う時まで理性的でいられるほど、俺は完璧な男じゃないんでね」「……うぅ」 そう返されるとこれ以上文句も言えなくて、頭を抱えて唸るしかないんですけど。朝陽さんは意外にも『好き』とか『愛してる』といった言葉を口にすることに抵抗がないタイプらしく、私の方が恥ずかしくなりこうして悶えさせられるのだ。 本当に最初の頃は見事なドS御曹司だったのに、現在の溺愛っぷりはそれはもう別人じゃないかと思うほどで。「――で、私はいつまでお二人のいちゃつきを眺めていればいいんでしょうか? 大事な話をするから、とここに残されたはずでしたが」「……あ、すまん。白澤《しらさわ》のことをすっかり忘れていた」 そうだった。いつもの様に会社からマンションまで送ってくれた白澤さんを、朝陽さんが一緒に話を聞いてほしいと引き止めていて。キスマークのことで一言文句を言わなければ気が済まなかったため、白澤さんには待ってもらっていたのだけど。 こんなやりとりの一部始終をしっかりと見られていたなんて、もう顔と言わず全身から火が吹き出しそうになる気がした。「すみません、白澤さん。今見たことは全部、白澤さんの記憶から消去してもらえると助かります」「ほのぼのとしたやり取りで微笑ましいと思いますよ、そう気にしないでください」 そう返されて、穴を掘って入りたい衝動に駆られる。いや……もう穴に入ってそこに埋めてほしいくらいなのだが、今の状況から逃げることは出来ないと分かってるので耐えるしかない。 むしろこんな話をされても、余裕の表情で『そうだろ?』なんて言える朝陽さんが恐ろしい。でも変に隠さず堂々としてるその姿
last updateآخر تحديث : 2025-12-11
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互いが望む未来に 6

「ですが、本当に良かったです。朝陽《あさひ》が真剣に鈴凪《すずな》さんとのお付き合いをしてるのだと、十分過ぎる程に伝わってきますから」 私も同じことを考えていたが、こうして白澤《しらさわ》さんが言葉にしてくれる事により自信を持っていいのだと思えて。朝陽さんと長い付き合いの彼がそう感じるのなら、きっと間違いないのだろう。 白澤さんには本当に色々な面で手助けをしてもらったし、こうして祝福してくれるのがとても嬉しかった。「当たり前だろ、お前は俺をなんだと思ってるんだ。確かに最初は契約上の関係のつもりだったが、今は鈴凪との将来を真面目に考えてるつもりだからな」「はいはい、惚気はもう十分です。そろそろ本題に入ってもらえると助かりますね、このままでは日を跨ぎそうですし?」 とうとう白澤さんにそう言われてしまい、朝陽さんも流石に真面目な表情になり鞄から茶封筒とパンフレットを取り出しテーブルに置いた。 白澤さんはパンフレットを手渡され『なるほど』と呟いたが、どちらかといえば封の開けられてない茶封筒の方を少し気にしている様で。けれども朝陽さんは『こっちは後だ』と言うと、手に持っていたスケジュール帳の印をつけられた日付を指差した。「予定通りこの日に式を挙げるつもりで今後のスケジュールを調整してるが、スムーズにいく可能性は低いだろう。俺たちはまず両親への挨拶を済ますつもりだが、白澤には色々な面でサポートを頼みたい」「そういう話だろうとは思ってましたし、元からそのつもりですので」 特に驚いた様子も見せず、白澤さんはいつもと変わらずそれが当然だという様に答えてくれる。 私の両親はともかく、朝陽さんのお父さんは今度は何と言ってくるだろう? 朝陽さんの以前の恋人とは別れるように手を回したような人だと聞いたし、それを考えるとやはり不安は大きくて。まだ会ったことのない彼のお母さんにも、平凡な家庭で育った私との結婚にどんな反応をされるか心配だし。「今の状況では鈴凪さんはとても不安だと思います、メンタル面では朝陽がしっかりとフォローしてあげてくださいね。私に出来るのは、邪魔者を排除するくらいなので」「……邪魔者?」 白澤さんが気を遣ってくれてそう言ってくれるのだが、後半部分が冗談には聞こえないのは何故なのだろう? 恐る恐る白澤さんにそう尋ねると、美しい微笑みを返されてそれ以上
last updateآخر تحديث : 2025-12-13
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互いが望む未来に 7

「そう、その事についてもきちんと話をしておこうと思ってな。鈴凪《すずな》には少し不安にしてしまう内容かもしれないが、知らない方が危険だろうから」「私が……ですか?」 朝陽《あさひ》さんにしては慎重な言い方だったし、チラッと茶封筒に視線を向けた時の表情が険しかったので少し緊張してしまう。こんな時に思い当たるのは、鵜野宮《うのみや》さんと元彼である流《ながれ》の二人なのだが…… ごくりと唾を飲み込む私の隣で、朝陽さんが茶封筒の中から数枚の書類を取り出しテーブルに広げた。「……これはまた、かなり面倒な事になる可能性がありますね」「そうだろう? これから一体何をやらかすか、正直なところ予想も出来ない状況なんだよ」 二人の会話は聞こえているものの、私の目は一枚目の書類に釘付けになっていて。そこに記されていたのは思っていた通り元彼についてだったが、その内容は自分には信じられないような事だった。 ……だって、あれほどあの会社に勤めていることを自慢していた。それなのに、あの流がまさか?「いきなりの自主退社後、アパートはもぬけの殻だそうだ。スマホも電源が入ってないし、実家の方にも連絡すらないらしい」「……そんな、いったいどうして?」 少し前には私の会社近くまで会いに来て、絶対に諦めないと言っていたはず。会社を辞めたのはその後なのかもしれないが、そうした理由が全く分からない。少なくとも自分の知っている流は、私に関してそこまでするような男ではない。「あの能天気な男がボロも出さずにこんな行動が取れるとは思えない、だからこそ今まで以上の警戒が必要だろう」「流が自分の意思でとった行動ではない可能性があるってことですか?」 私の質問に朝陽さんは『そうだ』とも『違う』とも答えなくて、彼も今の状態では判断がつかないのだろう。本音を言えば元彼に愛情は欠片も残ってないけれど、こうなると心は複雑で。 何も言えなくなった私の肩に、朝陽さんが黙ってその手を添えてくれた。「守里《もりさと》については探偵をつけているし、何か情報が入った場合はすぐに鈴凪にも話すから。だから、俺が傍にいれない時は今まで以上に注意してくれ」「……はい、分かりました」 こんな事になるなんて、本当に思いもしなかった。このまま流が見つからなかったら、朝陽さんと無事に結婚式を迎えることが出来るのだろうか?
last updateآخر تحديث : 2025-12-14
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互いが望む未来に 8

「まあ、察しは付いていると思うがこっちは梨乃佳《りのか》についての調査書だ。とはいえ社長令嬢でもあるアイツについて調べられるのは、どうしても限られた内容になるんだが」「……そうでしょうね。彼女の立場上、鵜野宮《うのみや》家にとって都合の悪いことを広げるわけにはいかないでしょうし」 朝陽《あさひ》さんの言葉に白澤《しらさわ》さんが納得したように相槌を打つ、確かに鵜野宮さんは実家に力があるからそういうことが出来るんだ。私のことは全部が彼女に筒抜けでも、こちらが相手の情報を得るのは難しいのが現実で。 それでも朝陽さんが神楽《かぐら》の御曹司であるからこそ得られる情報もあるのだろう、その書類にはびっしりと文字が書かれているから。「梨乃佳は鈴凪《すずな》を陥れるため東雲《しののめ》家に取引を迫ったことが社長である父親に伝わって、今は本人のマンンションで謹慎させられているそうだ。職場ではアイツの体調不良という事になっているらしいがな」「……そう、なんですね」 あの件以降、鵜野宮さんに直接何かされる事がなくなったのはそのためだったのね。それでも流《ながれ》からの接触はあったし、これで安心出来るとは言えないだろう。 東雲君もあれからどうなったかは分からないし、これ以上は何も起こらないといいのだけど。「梨乃佳がうちの会社との取引を主に担当していたのもあって、こっちの社員も大慌てしているが……どうやら父親はアイツを海外赴任させるつもりのようだ、本人を遠くに行かせて今回のことを曖昧にしようとしてるんだろうな」「娘が娘なら、親も親……ですか。自分さえ良ければ、というところがよく似ていますね」 呆れた表情で朝陽さんと白澤さんはそう話しているが、その内容が本当ならばもう鵜野宮さんからの嫌がらせは無くなるのかと少しホッとする。彼女はきっと反省なんかしてないだろうけれど、海外赴任になればそう簡単にこちらに手出しは出来ない筈だ。 それなら良かったのではないかと思ったけど、二人の考えは違っていて……「素直に海外に行くでしょうかね、あんな我儘な女性が」「よく分かったな。アイツは父親からの指示に従わず、頑なに海外赴任を拒んでいるらしい。その上、ここ数日はマンションに怪しい男たちが出入りしているとの情報もあるくらいだ。こちらも十分気をつけるに越したことはないだろう」 海外赴任に
last updateآخر تحديث : 2025-12-15
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互いが望む未来に 9

「そうなると、今後何をしでかすか分かりませんね。こちらも警戒は怠りませんが、些細なことでも情報の共有をお願いしますよ」「……ああ、分かってる」 こんな時に私は何も二人の力になれる事がない、自分で己の身を守ることとさえ十分に出来ないことが悔しくもあって。ある程度のことは自力でやってきたつもりだったのに、あまりにも非力な自分自身がもどかしく感じずにはいられない。 このまま守られているだけじゃ、きっと朝陽《あさひ》さんに相応しい花嫁にはなれない。今の自分でも出来ること、二人の陰に隠れてそれを必死に考えていたのだけど……「こいつらの事は俺と白澤《しらさわ》が何とかするから、鈴凪《すずな》はまずそっちのご両親に挨拶をさせてもらう日取りを決めておいてほしい。出来るだけ早めで頼む、俺が親御さんに合わせて時間を作るから」「え? でも、朝陽さんだって今はすごく忙しいのに」 もちろんきちんとした形で籍を入れ結婚式を挙げる予定なのだから、お互いの両親への挨拶はするつもりだったのだけど。こうなる事を考えていなかったので、いきなり結婚するので挨拶に来ると伝えれば両親も相当驚いてしまうはずだ。 しかも多忙な朝陽さんが時間を合わせるので早めが良いなんて言うから、これはもう覚悟して親に電話をかけるしかないだろう。「そういった内容の話なら私はいない方が良さそうですね、そろそろ失礼します」「……ああ、遅くまで悪かったな。明日もよろしく」「ありがとうございました、白澤さん」 話の内容が私たちの家族のことになったためか、白澤さんは一言声をかけてマンションを出ていった。この状態で二人きりになると、余計に両親へ報告することへのプレッシャーが凄い。「どんなご両親なんだ、鈴凪のお父さんとお母さんは? それに少し歳の離れたお兄さんもいるんだろう、好きそうな話題とかがあれば先に教えておいてくれ」「えっと、父は普通の会社員で老若男女関係なく人に好かれる心の優しい人です。好きなのは野球とお酒で、試合の時は別人かってくらい熱くなりますね。そしてお母さんは……」 朝陽さんは私の両親や兄についての話を真面目に聞いてくれて、挨拶に行った時に話題に困らないように考えてくれているようだった。特にシスコン気味の兄については……こんなに可愛い妹がいればシスコンになるのは仕方ない、などと意味不明なことまで言い
last updateآخر تحديث : 2025-12-16
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互いが望む未来に 10

「あの、今度は朝陽《あさひ》さんのご家族について教えてもらえませんか? 私も貴方の事を色々と知っていた方が、次に会う時のためになると思いますし」「……なるほど? それは父親や母親に会う時のためだけってわけじゃないよな、ちょっとくらい鈴凪《すずな》も俺自身に興味を持ってはくれてるんだろう?」 その聞き方は狡いですよ、違うとか言えるわけないじゃないですか! そりゃあ朝陽さんについて色々知りたいに決まってるのに、わざわざそれを私の口から言わせようとするんだから。 二人の関係が変わって朝陽さんは自分の感情をそのままぶつけるようになったのに、今度は私が恥ずかしくて素直に言葉に出来なくなってるの。「……そうですけど、悪いですか?」「そんなわけない、嬉しいに決まってるだろ。そうだな……ちょっとここで待っててくれ」 朝陽さんはそういうとリビングに私を残して、自室へと向かっていった。数分後に戻ってきた彼の手には、少し大きめの写真立てが持たれていて。もしかしてわざわざ取ってきてくれたのだろうか?「まあ、これはまだ俺が学生の頃の写真なんだが。さすがにここ数年は家族全員で写真を撮ることもなかったから、って何をニヤついてるんだ?」「いいえ、学生時代の朝陽さんが見れるのが嬉しくて。意外と可愛かったんですね、もともと顔は整ってるから当然といえば当然なんでしょうけど」 正直、今の朝陽さんの面影はあるものの写っているのはどう見ても美少年。つい写真と朝陽さんを交互に見比べてしまったほどには、雰囲気が違っていたから。「……俺は母親似なんでな、この頃は結構この顔がコンプレックスだったんだぞ?」「そうなんですか、確かに朝陽さんのお母さんはとても綺麗な方ですね。お父さんの方は、今とあまり変わらない気がしますが」 朝陽さんの隣で椅子に腰掛けているのが彼のお母さんなのだろう。美人なのだがどこか儚げな雰囲気があって、後ろに立って厳しい表情をしている彼のお父さんとは真逆な感じがした。「ああ、見た目も中身も今と大差ないと思う。子供の頃の俺は母親にべったりだったから、この人が病気で入退院を繰り返すようになってから父親との付き合い方に随分悩んだ記憶があるし」「朝陽さんが、ですか? じゃあ……」 そうして夜遅くまで朝陽さん自身のこと、ご両親についての話をたくさん聞いて。知らなかった彼のことを色
last updateآخر تحديث : 2025-12-17
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祝福される幸せに 1

「……もしもしお母さん、鈴凪《すずな》だけど。今からちょっと大事な話をするんだけど、驚かないで聞いてね?」 きっと実家の母も朝ごはんを済ませて少し落ち着いた頃のはず、土日はパートの休みだと聞いているのでゆっくり話せるだろうと思って電話を掛けたのだけど。 もう子供が二人とも巣立ったのもあってか、電話口の母の声はまだ寝ぼけているようだった。いつも早起きして朝食を作っている人だったが、今はわりとマイペースな生活をしてるのかもしれない。『もう、何を驚けっていうの? 流《ながれ》君との婚約破棄を聞いたばかりなのよ、それ以上のことなんてそうそう無いでしょうに』「そう、なんだけど……ちょっと、色々あってね」 朝陽《あさひ》さんから『結婚の挨拶をしたいので連絡して欲しい』とは言われたものの、今回のことを母にどう話せば良いのかが分からなくて。婚約破棄をしたばかりなのに、今度は結婚式の日取りまで決まっているのだから。 急にこんな話をしてしまったら、いくら私の母でも吃驚《びっくり》しないわけないだろうから。どうしようかと迷っているうちに母が、大事な話があるらしいわよ? と父まで近くに呼んでしまったから、もう覚悟を決めるしかなくなって。「……そのね、もうすぐ結婚式を挙げる予定なんだけど」『へえ、誰が?』 やっぱりそうなるよね、婚約破棄された私の結婚式だと思う訳ない。もともと契約で結婚式を行なう予定だったので、それまでの日数もギリギリだから。 それでも今日こそ両親に話しておかなければ、それこそ色々間に合わなくなる可能性が……朝陽さんからの催促も凄いし、必死で電話口の母を相手にその話を続ける。「うん……だから、私が」『流君と?』 ああ、元カレの流とヨリを戻したのかと勘違いされてしまったようで。私は母に流からどんな事をされて別れたかまでは話していなかったので、そう考えたのだろうけれど。両親と会う時に流は必ず【良い恋人】を演じていたから、きっとあんな男だったなんて思いもしないだろう。 もしかしたら母は彼とヨリを戻して欲しかったのかもしれないと考えたが、それはもう不可能なので素直に本当のことを話した。これから私が一緒に未来を歩んでいく人を、ちゃんと家族に紹介したいと思ったから。「ううん、彼じゃなくて別の男性と」『…………』 しばらくの間、父も母も無言になってしまっ
last updateآخر تحديث : 2025-12-18
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祝福される幸せに 2

『その相手は、そっちで出会った人なのか? 流《ながれ》君ではないのなら、私たちとは面識のない男性なんだろう?』 驚いて言葉の出なくなった母の代わりに、今度は父が電話越しに質問をしてきて。きっと今のお母さんよりは冷静なのだろうけれど、いつもより父の声が上擦っているのが分かる。 こんな急な話を直ぐに信じろと言っても無理があるし、二人が戸惑ったり疑ってしまうのも仕方のないことで。でもお互いの家族にちゃんと話して結婚を認められたい、朝陽《あさひ》さんはそう言ってくれたし私も同じ気持ちだから。「うん、その人には流から一方的に婚約破棄された時からお世話になっていて。想い合えたのも、つい最近の事なんだけれど……」『なぜそんなに結婚を急ぐ必要がある? 鈴凪《すずな》はまだ若いんだから、もっとお互いの事を理解し合うため時間をかけるべきだと私たちは思うんだが』 お父さんはこの結婚に反対するつもりでそう言ってるのではないと分かってる、ただ私の事を心配してくれているだけで。婚約破棄されて間も無い私が焦って、誰でも良いから結婚しようとしてるのでは無いかと考えたのかもしれない。 もちろん私はそんなつもりはないし、朝陽さんが相手だからこそプロポーズに応える気になったのだけど。それがこの電話越しの私の言葉では、ちゃんと両親に伝わらないのがもどかしい。『そうよ、お母さんもお父さんに賛成だわ。付き合ったばかりで鈴凪もその男性も、お互いの悪い部分が見えてないだけかも知れないでしょう? だから、もう少し……』 母も父と同じ様な考えらしく、私の結婚について先延ばしにしたいようで。でも結婚式の日付も決まっていて式場も手配済みなのだから、はい分かりましたと引き下がれない。 それに私自身が朝陽さんの言っていた彼の【愛され花嫁】に、早くなりたい気持ちでいっぱいなんだもの。だから、つい……「我儘を言ってるのは分かってるわ、でも私は彼との未来しか考えられないの! 出会ってからの時間なんて関係ない、そう思えるくらい朝陽さんしか見えないんだから」 こんな風に強く自分の意見を言う事は珍しかった。私はわりとはっきりとした性格ではあるけれど、何だかんだで周りに合わせる方がおおかったし。両親から言われたことも、素直に聞く方だったので驚かせてしまったかも知れない。 そう考えて申しわかない気持ちになっ
last updateآخر تحديث : 2025-12-19
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