待ち合わせの時間より遅れてしまったため、先に着いていた朝陽《あさひ》さんは駅近くのコーヒーショップで時間を潰していたそうで。私達が彼にメッセージを送ると、そのまま店を出てこちらに向かって歩いて来た。「ずいぶん遅かったな。てっきり俺の方が後になると思ってたんだが、何かあったのか?」「ちょっとだけ人助けをしてまして……ねえ、そうですよね白澤《しらさわ》さん?」 やましい事はないが待たせた事に申し訳なさを感じて、つい白澤さんに助けを求めるような言い方をしてしまう。それが朝陽さんを拗ねさせる原因になるなんて思いもしなくて。「そうですね、朝陽が嫉妬するようなことは何も起こってないので安心してください」 何故そんな意地悪な言い方をするんですか、普段は淡々と話すくせによりによってこんな時だけ。揶揄われていると分かっているのに、朝陽さんがあからさまに不機嫌そうな顔をするから白澤さんが喜ぶんですよ?「俺に対する嫌味なのか、それは? ……ったく、俺は待たされるのは好きじゃねえってのに」「へえ、それは意外でした。過去の経験上、朝陽さんは待つ事には慣れてるんだと思っていたので」 しまった、と思ったが口に出してしまった言葉は無かった事には出来ない。朝陽さんの鵜野宮《うのみや》さんに対する想いを知っていたからこそ、こんな言い方をしてはいけないと分かってるつもりだったのに。 けれども私の失言を朝陽さんはもう過去の事だと、はっきりと言葉にしてくれる。「それは全く別の話だろう? 昔だって好きで待ってたわけでもない、それにいま隣にいて欲しいのは鈴凪《すずな》なんだから」「そんな事まで言わなくていいです、ちゃんと……分かってますから」 今そんなことを言われたらキャパシティーオーバーなんです。自分の失言で焦っていたところなのに、そうやってトドメ刺さないで欲しい。顔面だけでなく身体中が熱くなって、思考回路がショートしそうになっていると……「私はもう帰ってもいいですよね、そろそろお二人のために空気でいるのも疲れましたし?」「白澤さんまで、そういうことを……っ!」 ああもう、やっぱり白澤さんて本性はドSな気がする。朝陽さんと彼が学生時代から交友が続いているのも、二人が似た物同士だと思えば納得出来た。 どうにか揶揄われないようにしなければ、なんて一人で真剣に考えていたのだが。
Last Updated : 2026-01-11 Read more