All Chapters of (仮)花嫁契約 ~元彼に復讐するはずが、ドS御曹司の愛され花嫁にされそうです⁉~: Chapter 201 - Chapter 208

208 Chapters

その結末は当然で 4

 その後やって来た警察に簡単な事情は説明したが、それでこの件がすんなりと終るはずもなく。私は朝陽《あさひ》さんや白澤《しらさわ》さん達と一緒に近くの警察署まで向かうこととなった。  鵜野宮《うのみや》社長は静かに娘が連れて行かれるのを見守ってから私に丁寧な謝罪を済ませると、タクシーに乗り込み運転手に警察署までと指示を出してから車を発進させた。  先程までとは打って変わって静かになった現場に残された私達だったが、すぐに朝陽さんは申し訳なさそうな表情をして……「すぐにマンションに帰って休ませたいが、このまま事情徴収を行いたいらしい。大丈夫か、鈴凪《すずな》」 「はい、私は大丈夫です。この件に関しては自分も早いうちに、お話しできればと思うので」 ここで一度マンションに戻ってしまえば、私も今のように毅然としていられる自信が無くて。この気持ちが緩んでしまわないうちに、今回の事を警察に伝えるべきだと思ったのだ。  流《ながれ》や鵜野宮さんの事を許せないとかいうマイナスな感情ではなく、二人に罪を認めてしっかり償って欲しいという気持ちで。「……そうか。だが思い出すのが辛くなったり、もしも気分がすぐれないような事があればすぐに教えてくれ」 「ええ、ありがとうございます。ですが朝陽さんがこうして傍にいてくれるだけで、私は凄く助かってるので」 朝陽さんは私の事を第一に考えてくれて、優しく寄り添い支えてくれる。こうしているだけで十分過ぎるほどの愛情を感じることが出来るし、あと少しだけ頑張ろうと思えるのだ。  そうして私達が警察署に着くと、担当らしき警察官からそのままある一室へと案内された。「雨宮《あまみや》さん、ではこちらでお話を伺ってもよろしいですか?」 「……はい」******「やはり時間がかかってしまったな、かなり疲れただろう?」 事情徴収とはこんなに大変なものなのかと、疲れた体をソファーで伸ばしてみる。私が被害者だという事もあって色々と質問されたが、ちゃんと答えられただろうかという不安もあって。  でもこうして朝陽さんが優しく労わりの言葉をかけてくれる、それが何よりも嬉しいと思う。「そうですね、身体がしんどくないと言えば嘘になりますけど。ですが今回の事で、鵜野宮さんが考えを改めてくれる可能性って少しくらいはありますかね?」 彼女は最後まで自分が
last updateLast Updated : 2026-02-28
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その結末は当然で 5

「ん、何がだ?」「その……鵜野宮《うのみや》さんがあんなことになってしまった事に、もしかしたら朝陽《あさひ》さんが責任を感じてるのかと思って」 私の知っている限りでは朝陽さんはとにかく責任感が強く、それでいてかなり情に厚い性格の持ち主てある。だからこそ今回の件でも、少なからず自分を責めてはいないかと心配になって。 あの時に私がちゃんと気を付けていれば、この人をそんな気持ちにさせずに済んだかもしれないのに。「ああ、それはどうだろうな? 全く何も感じてないわけじゃないが、それよりも鈴凪《すずな》を危険な目に合わせた事への怒りの方が大きかったから」「……もし私が攫われなければ、と考えてしまうんです。そうすれば流《ながれ》もここまで暴走しなかったかもしれない、鵜野宮さんだってもしかしたらって」 今さらこんな事を言っても、全てたらればの話にしかならない事は分かってる。もしも過去に戻れるのならあの時の自分を叱りたいけれど、そんなこと出来るはずもなく。 後悔するだけでは先に進めない、だからこそ私は前を向かなくてはいけないのに。そんな風に自己嫌悪に陥ってしまう私を、朝陽さんは責める事もなく寄り添い宥めてくれた。「いいや、それは違うと思うぞ? あの場で攫われていなくても、アイツらはきっと何度も同じようにお前を誘拐しようとするだろう。だからきっと、この結果は変わらない」「そう、なんでしょうか。確かにそうなのかもしれませんけど……」 朝陽さんの言う通り、きっと鵜野宮さん達は似たような事を繰り返したに違いない。結局、最後は同じような事になったのだろうけれど。 そう考えれば二人が迎えたこの結末は当然だった、という事なのかもしれない。「とりあえず鈴凪が一番に考えたり優先すべきなのは、自身を休ませることであって欲しい。アイツらの事は警察に任せておけばいいんだ」「……ふふふ、こういう時の朝陽さんは凄く過保護になりますよね」 その優しい声に少しずつ張りつめていた緊張が解れていくような気がして、疲れていた身体が急に怠さを訴えてくる。 彼の肩に寄りかかれば、そっと私の頭を撫でてくれる。まるで『よく頑張った』と言うようなその優しい手つきに、ジンと胸が熱くなり涙が溢れてきそうになった。「過保護の何が悪い。これだけ心配させられたんだ、このまま数日はマンションから一歩も出したく
last updateLast Updated : 2026-02-28
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その結末は当然で 6

 それから数日も過ぎてしまえば、何事も無かったかのように落ち着いたいつもの生活に戻ったのだけれど。あの出来事が私の記憶から消える訳でもないし、夜中に何度か夢で見る事もあった。 朝陽《あさひ》さんはそんな私を心配してか、マンションにいる間はずっと傍にいてくれて。私はそれで十分だったけれど、彼はまだ気になっているようで私に訊ねてくるのだ。「本当にあの事件の事を公に公表しなくても良かったのか? アイツらが警察に捕まったとはいえ、今もまだ鈴凪《すずな》が攫われたことは隠されたままなんだぞ」「それはいいんです。私はこうして元気ですし、これ以上大事になれば朝陽さん達に迷惑がかかる可能性だってあるんですから。本当にそんな事は望んでないんですよ」 私としてはあの事件に関して、必要以上に表沙汰にするつもりはない。朝陽さんはそれが不満だったようだけれど、色々な事を考えた上でちゃんと決めた事だから。 私がそう答えると、渋々といった感じではあるが最終的にはこちらの意見尊重してくれるのだ。「鈴凪がそういうのなら、俺はこれ以上は口出ししないが……」「ふふふ。ありがとう、朝陽さん」 こんな私達の会話を聞きながら黙ってティーカップを傾けている白澤《しらさわ》さんは、いつも通りマイペースなようで。それでも彼やシオさんには凄く助けてもらって、今でも感謝の気持ちしかない。「そういえば、白澤さん達の事情徴収は全て終わったそうですね? 本当にお二人にも迷惑をかけてしまって」「鈴凪さんは被害者なのですから、私達に謝る必要なんてありませんよ。それに紫苑《しおん》も貴女のためならと、全く苦ではなかったようですし」 あの事件があった後、心配するシオさんからは何度もスマホにメッセージをもらった。励ましや労わりの言葉、そして前向きになれるような面白い画像まで。本当に嬉しくて、荒んだ心も全部満たされるようだった。「……それなら良かったです、シオさんにもまた会いに行きたいな。以前交わした、お茶の約束もまだですし」「そうですね、鈴凪さんと会えれば紫苑もきっと喜ぶでしょう」 そういえば私が攫われる前に、シオさんが白澤さんと二人きりで話した内容はいったい何だったのだろう? ふと思い出しそのまま黙ってしまうと、その様子を見ていた白澤さんが不思議そうな顔をしてしまって。「……鈴凪さん、どうしましたか?
last updateLast Updated : 2026-02-28
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その結末は当然で 7

「それと、ここからは梨乃佳《りのか》についての話になるんだが……」 当初は全ての容疑を否認していた鵜野宮《うのみや》さんだったが、少しずつ自分のしたことを認めて時折反省の言葉も口にしているそうで。 一番意外だと思ったのは、彼女が本当に計画していた内容についても素直に話すようになった事だった。 事件の日に鵜野宮さんが朝陽《あさひ》さんをあの場所に案内したのは、私が流《ながれ》とヨリを戻して親密な関係になった様子を朝陽さんに見せつけるためだったらしい。 強引にでも流が私との既成事実さえ作ってしまえばどうとでもなる、そう考えての事だったと。想像すると恐ろしい話だが、それも失敗に終わったからあんなに焦ってたのかもしれない。「やっと一歩前進したって感じですね、まだこれからの事も多いとは思いますけど」「彼女がそこまで認めたのは大きな進歩だと思いますよ、正直あんな性格ですからずっと否認し続けてもおかしくはなかったですし」 白澤《しらさわ》さんは当初から鵜野宮さんに対してやや冷たい感じがするが、彼女の態度を考えればそれも仕方ない。好き嫌いは見せないタイプかと思っていたが、意外とハッキリしてるのが逆に面白くもある。「……確かに、そうだったかもな。でも最後の鈴凪《すずな》との直接的な関りが、梨乃佳の心の何かを変化させたのかもしれないとは思ってる」 そう言われても私は鵜野宮さんに何かをしたわけではない、彼女に対し言いたい事をハッキリと言葉にしただけ。それもあの時の鵜野宮さんには、あまり響いてるとは感じなかったのだけど。 それでも私の言葉は彼女の心境を変化させるような、何かしらの効果があったのだろうか?「え? ……私が、ですか?」「本人は無自覚でしょう、それも鈴凪さんの良いところではありますが」「ははは、それはそうだな~」 無自覚って、何だか私だけ除け者にして二人だけで通じ合ってないですか? こういう時だけ妙に気の合う様子を見せる朝陽さんと白澤さんに、少しだけ嫉妬してしまう。「……え? これってもしかして、私は今お二人に揶揄われてたりするんでしょうか?」「さあ、それはどうだろう」「さあ、それはどうでしょうね」 この男共は、こんな時に限って二人で揃ってドSな本性を見せてくる。ああ、本当にタチが悪い! 楽しそうな二人に、ムキになった私の不満をぶつけても笑われ
last updateLast Updated : 2026-02-28
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その結末は当然で 8

 ひとしきり二人で大笑いした後で、また元の真面目な話に戻ったのだけど。笑われただけの私は、まだちょっと不満が残っている。 でもその内容が気になっていたことでもあったため、朝陽《あさひ》さんの話の続きを大人しく聞くことにした。「それから守里《もりさと》 流《ながれ》の方は、今回の事もそれ以前の件についても素直に答えているらしい。彼が事件の実行犯ということに変わりはないが、それもきちんと受け止めているようだ」 あの時には既に反省の色を見せていた流だったが、警察の取り調べにも協力的でこれからはきちんと罪を償うつもりのようだ。 彼からは決して許せないような事もされたけど、それでもやっぱり……「それなら良かったです。今の流に対して以前のような感情はありませんが、それでも彼には前を向いていて欲しいと思うので」「そうだな。鈴凪《すずな》のそういう思いも、今ならきっとアイツにだって伝わっているだろう」 朝陽さんが理解のある彼氏でとても嬉しいです。なんて思っていたら、何故か急に横から白澤《しらさわ》さんが口を挟んできて。「朝陽、そうカッコつけても口の端が引き攣ってますよ? そのうち嫉妬深い男だと鈴凪さんに呆れられないと良いですね」「……そういう余計な事まで気付くから、お前は嫌なんだ」 どうやら朝陽さんは理解のあるフリをしながらもしっかり嫉妬していたらしく、それに気付いた白澤さんにばっちり指摘されてしまったようだ。 付き合いが長いから分かる、そんな彼らがちょっと羨ましくもあるけれど。「ふふふ、何だかんだと仲が良いんですね」 和やかな空気が流れるが、話題が彼の嫉妬深さについてだったのを誤魔化したかったのだろう。朝陽さんは次に、鵜野宮《うのみや》社長のことについて話しをしだした。「そう、後は鵜野宮社長についてなんだが」「そういえば社長はあれからどうしてるんでしょうか? あの事件後に謝罪を頂いてから、連絡もないので少し気になっていて」 事件後に鵜野宮社長からは、もう一度謝りたいときちんとした場所で誠意ある謝罪をされた。しかしその後はお互いに何の連絡もしていない、特に理由が無いと言えばそれまでなのだけど。「鵜野宮社長は自身の経営する会社を、後継者へと引き継ぐ準備をしているらしい。それもあって今は鵜野宮カンパニー内も、かなり慌ただしいようだ」「……そうだった
last updateLast Updated : 2026-02-28
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愛され花嫁は誓う 1

 ――そして迎えた、結婚式当日。 華やかなホテルでの挙式が始まるまであと少し、その新婦用の控室でやっと全ての準備が整ったはずなのだけど。まさかこんなにも、全身をアレコレされることになるとは……  それでも目の前の鏡に映る自分の姿はまるで別人、もしかして知らないモデルが鏡の向こうにいるのではないかと疑う程だった。  そんな私に年配の女性スタッフが、それはもう大袈裟に褒めてくるから余計に戸惑ってしまって。「まああ、本当にお美しいです! 新郎様が新婦様に一番似合うデザインを選んだとおっしゃってましたが、まさかここまでとは……」 「ええと、その……ありがとうございます」 確かに最終的にこのドレスを選んだのは朝陽《あさひ》さんだった。最初は私の好きなのにすればいいと言っていた彼だが、いざドレスの試着が始まると意外なほど細かな注文をしていたくらいで。  結局はほとんど朝陽さんの意見を採用した、オーダードレスが出来上がったわけだけど……確かにこのドレスは、彼の言った通り私にとても似合っている。「うふふふ。では準備も整いましたので、こちらに新郎様をお呼びいたしますね」 「あ、はい……」 ああ、この姿を見られるのはやっぱり緊張するかも。今の私を見て朝陽さんはどんな反応をするのだろう、それを考えると胸のドキドキが止まりそうにない。  ゆっくりと後ろの扉が開かれると、朝陽さんがこちらに向かってくる足音が聞こえて。私の隣まで来た彼はその場で片膝付くと、見上げるような形で私と視線を合わせた。「……ああ、凄く綺麗だな。聞いてはいたが実際にこうして見ると、世界一の花嫁って感じがする」 「それは言い過ぎです、これはプロによるメイクとオーダーメイドのウエディングドレスによる魔法ですよ?」 照れ隠しもあるが普段褒められなれてない事もあり、朝陽さんの言葉に対して素直に嬉しいと言えなくて。でもそんな私の言葉も、朝陽さんは余裕の笑顔を返してくる。「魔法ねえ、シンデレラみたいに一夜で解けるとでも? その気になれば俺が何度でもその魔法をかけることが出来る事を、もちろん鈴凪《すずな》は忘れてないよな」 「……ああ、そうでしたね」 このオーダーメイドのウェディングドレスやプロのメイクも、朝陽さんからすれば用意することは容易いのかもしらない。  半分くらいは冗談で言ってるのかもし
last updateLast Updated : 2026-02-28
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愛され花嫁は誓う 2

 ふと何かを思い出したような仕草をした朝陽《あさひ》さんだったが、もう一度私の花嫁姿を見て複雑な表情をする。いったいどうしたというのか?  何かおかしなところがあるのかと、今の自分の姿を鏡で確認しようとする。すると今度は彼の腕が私の肩へと伸びてきて、そのままふんわりと抱き寄せられて。「それにしても最初は元カレに見せつけるはずだった花嫁姿なのに、その守里《もりさと》 流《ながれ》が今の鈴凪《すずな》を目にすることは無いんだよな」 「……まあ、そうなりますね」 これはもしかすると嫉妬しているのだろうか? 意外にも嫉妬深い性格をしている朝陽さんは、今もまだ元カレの流の存在が気になっているようで。  私の中では綺麗サッパリ終わった恋でしかないので、そんなに気にする必要があるのかと思っていると。「幸せな愛され花嫁になる姿を見せれなくて、少しガッカリしてるのか?」 ……ああ、そういうこと? 確かに朝陽さんとの契約を交わした時は、それが一番の目的だった。一方的な婚約破棄と浮気に傷付いて、何とか見返したかったから。  でもそれも全て私の中では過去の事でしかない。流が今の自分の姿を見なくてもそれを悔しいとか残念だと思う必要なんて、これぽっちも無いのだから。「いいえ、今の私はこの姿を朝陽さんに見てもらう事が一番なので。正直なところ流の事は言われるまですっかり忘れていましたし」 これも本当の事で、事件後は確かに流の事を考える時間も少なくはなかった。でも式が近付くにつれてそんな余裕は無くなったし、何より今の私はこんなにも朝陽さんに夢中なんだもの。「確かにそうだな、俺もそうであってくれると嬉しい。鈴凪はこれからずっと、俺だけの愛され花嫁でいてくれ」 「一生涯、私を朝陽さんの愛され花嫁でいさせてくれるのなら……喜んで」 お互いの顔がゆっくりと近付いて、優しくその唇が重ねられた。すぐに挙式で誓いのキスをすることになるのに、私達は今の気持ちに素直に従ってしまって。  ふふふ……と笑って正面から抱き合えば、これ以上ない程の幸福感で心が満たされていく。「こんなに幸せで良いんでしょうか?」 「良いんじゃないか? こんな特別な日に幸せを感じるのは、主役である俺たちの特権だからな」 特権かあ、それは良いかもしれない。朝陽さんと一緒に一度だけ使えるそんな権利も、今日くらいは
last updateLast Updated : 2026-02-28
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愛され花嫁は誓う 3

 ****** 白いタキシード姿の新郎が待つ祭壇へと続くバージンロードを、純白のドレスを着た新婦が父親のエスコートを受けてゆっくりと進んでいく。 厳かな雰囲気の中でも美しいその鈴凪《すずな》の花嫁姿に、誰もが見惚れそして感嘆の声を上げた。「雨宮《あまみや》さんの花嫁姿、凄く綺麗だわ。新郎もかなりのイケメンだし、二人共とてもお似合いよね~」 「もう……轟《とどろき》さんってば、まるで娘を嫁に出したみたいに感動しちゃって。でも分からなくはないです、本当に素敵な結婚式なんだもの」 鈴凪が務める会社の先輩である轟は意外にも涙脆いらしく、ハンカチを持った手でその目元を押さえているようだ。そんな彼女に苦笑いを浮かべつつも、同僚の女性スタッフも式の素晴らしさに感動している。  その向かい側には鈴凪の母と兄が並んで座っており、母は娘の美しい花嫁姿に嬉し涙を浮かべかけていた。それでも彼女の兄である響《ひびき》は朝陽を睨んでブツブツと何かを呟いているが、それもたった一人の妹が可愛いからなのだろう。「悔しいけれど……今日の鈴凪は、今までで一番綺麗で幸せそうに見えるな」 「そうね、あの子の花嫁姿が見れて私も本当に嬉しいわ」 「はあ、アイツめ……鈴凪を誰よりも幸せにしないと、絶対に許さないからな」 そうしてその奥の席には離婚の危機を何とか回避したらしい、朝陽《あさひ》の父である幹臣《みきおみ》と妻の月子《つきこ》も二人で並んで座っている。彼らの息子が浮かべる柔らかな笑みを見たことで、やっと心から二人の結婚を喜ぶことが出来たようだった。「本当に朝陽のあんな幸せそうな笑顔を見るのは久しぶりですね」 「……ああ、そうだな」 今まで目を背けてしまっていた家族の関係をもう一度しっかりと築く、そう約束した幹臣の言葉を信じる事に決めた月子。彼女は長年連れ添ったその夫に、静かに寄り添うように座っていた。  そして少し離れた席に並んで座っているのは、スーツ姿の白澤《しらさわ》と淡いブルーのドレス姿を着た紫苑《しおん》で。美しい花嫁となった鈴凪を見て、紫苑はやや興奮気味に白澤へと話しかけている。「……なあ、白澤。この美しい鈴凪の花嫁姿を見て、どうにか記念に残してみたいとは思ったりはしないか?」 「そうですね、一生の思い出として残るようにプレゼントしても良いかもしれません」 紫
last updateLast Updated : 2026-02-28
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