朝陽《あさひ》さんの言葉に彼のお母さんはとても驚いた表情をしていたが、言われた父親の方の反応は違っていて。彼の問いかけに眉一つ動かさずに、さも当然のように信じられない言葉を放った。「どうせ破談になるのだから、この程度の事をわざわざ話す必要は無いだろう?」 驚いたのは私だけじゃない、もちろん朝陽さんのお母さんもサチさんもその言葉に絶句してしまって。けれどそれすらも予測していたかのように、朝陽さんはこのお父さんを相手に鋭く切り返す。「逆に聞きたいですね、どうして貴方は俺達が別れると確信を持っているんです? ……ああ、今まで自分がそうなるように裏で手を回してきたから?」「――えっ!?」 過去に何があったのか私でも分かってしまう。朝陽さんの以前の恋人、つまり鵜野宮《うのみや》さんとの関係が駄目になった理由にこの人が関わってるのだと。 そう考えれば朝陽さんが彼女への想いを引きずっていたのも納得がいく。「良い条件を前にした時、簡単に変化する程度の気持ちしか持ってないような相手だったんだ。それに神楽《かぐら》の家に入る可能性のある人間を、ふるいにかけるのは当然の事だと思わないか?」 だからといって、この人が何をしても良いっていう理由になるの? 鵜野宮さんと朝陽さんが上手くいっていたら今の自分がここにいないと分かっていても、それでもどうしようもない怒りが湧いてくる。「言いたい事は分かりますが、自分の伴侶を選ぶ権利は俺にだってあるはずだ。鈴凪《すずな》をそんな風に貴方達の物差しで測ろうとするのも、俺は絶対に許さない」「朝陽さん……」 あえて過去の事には触れず、それでも私を大事に守ろうとしてくれる言葉に胸が熱くなる。守られてばかりじゃ駄目だって思うけど、余計な口出しをする時じゃないと考えてまだ黙っていた。「そういう考え方だから、お前は神楽グループの後継者としての自覚がないと言うんだ。お前の結婚相手によってどれだけ企業への利益が変わると思う、それをこんな平凡な家庭の娘となんて……馬鹿げている」 確かに私の家はどこにでもある普通の家庭に違いはない、神楽グループに何かしらの利益をもたらすことは出来ないって分かってはいるけど。この人はそんな風にしか人を見れないんだって、何とも言えない気持ちになっていると朝陽さんが……「神楽家の利益のため、そうやって貴方は母を妻に
Last Updated : 2026-01-24 Read more