(仮)花嫁契約 ~元彼に復讐するはずが、ドS御曹司の愛され花嫁にされそうです⁉~의 모든 챕터: 챕터 11 - 챕터 20

66 챕터

提案は思い付きで 6

『……そうだな。アンタにもう一つくらい借りを増やしておいた方が、俺もこの先やりやすいかもしれない。いいだろう、あの男の連絡先を調べて送ってやる』「……え? 良いんですか」 逆にあっさりと引き受けてくれて拍子抜けしてしまう。もしかすると明日は槍が降るのかもしれない、なんて思ってしまうのは失礼だろうか?  意外と神楽《かぐら》 朝陽《あさひ》は、情に訴えればチョロいのかも……? しかし、そんな狡い考えはすぐに見破られたようで。『鈴凪《すずな》の借りが増えるだけのことだし、その分以上にアンタには働いてもらう予定だから。まあ、問題ないだろう』「……ああ、そういう意味なんですね」 今回の「お願い」もちゃんと借金としてカウントされていて、未来の私がしっかりと利子をつけて返す羽目になるらしい。 お坊ちゃんの育ちのわりに、神楽 朝陽はケチな性格してると文句を言いたくなりそうだけどグッと我慢しておく。 彼は神楽グループの御曹司という立場である。いい加減な貸し借りをやってしまえば、きっと都合良く利用されるだけの存在になるだろう。彼の考え方は企業の上に立つ人間としては間違っていないのかもしれない。 ……それが私にとっては、都合の悪い事ばかりなのが問題なだけで。「それで、私がすることは決まったんですか? 今度連絡するって言ってから、まるきり音沙汰無しでしたけど?」『大体は、な。まあ、それはもう少し待ってろ、先に守里《もりさと》 流《ながれ》の連絡先について調べてやるから』「ありがとうございます」 お礼の言葉を聞いているか分からないくらい、あっさりと電話は切られてしまった。それでも神楽 朝陽は絶対に私とした約束は守ってくれる気がして、とりあえずホッと胸を撫で下ろした。ーーーー『ありがとうね、雨宮さん。おかげで守里さんからきちんと支払いして頂けたわ。本当に貴女のおかげよ』「……あ、いえ。それは良かったです。それではもう、私に請求が来るような事はないと思ってていいんですか?」 流の住んでいたアパートの大家さんから感謝の電話をもらって、私も心配事が一つなくなったことにホッとしていた。 元カレの連絡先について調べると言ってくれた神楽 朝陽だったが、彼はその理由を知るとわざわざ流に「別れた相手にいつまでも迷惑をかけるな」と釘を刺してくれたらしく…… 神楽 朝陽
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不安的中な思惑に 1

『明後日の午前十一時、神楽《かぐら》グループの本社ビルに来い。受付にアンタの名前を言えば案内するように話しておくが、何か聞かれても余計な事は一切話すなよ』「余計な事って、迷惑料とかその代わりの契約の話の事ですか? そんなこと聞かれても言える訳ないじゃないですか」 神楽グループの御曹司が、こんな平凡なOLに迷惑料を請求してると話したところで誰が信じるというのか。下手すれば私の方が、彼の気を引こうとして変な演技をしてる痛い女扱いされかねない。 それに、私は心のどこかで神楽 朝陽《あさひ》はそんなに酷い奴じゃないような気がし始めていて。流《ながれ》の件で彼にお願いした以上の事をしてもらったからなんて、自分はやっぱり単純なのかもと思わないわけじゃないけれど。 『それならいい。とりあえず当日はキチンとした身なりで来い、色はそうだな……白が無難だろう』「服の色まで指定するんですか、面倒臭い」 ついつい出てしまった本音、だってそこまで細かく指示されるとは思っていなかったから。彼と交わすであろう、契約とやらの内容をまだ教えられてないから尚更だ。『……俺に意見できる立場だったか、アンタは?』「いいえ、そんなつもりは欠片もありません。白を着てればいいんですよね、分かりました」 神楽 朝陽がドSモードにならないうちにさっさと会話を終わらせなければ。聞き分けよくすればそれはそれで面白くないらしい彼の舌打ちを聞こえないフリをして、そのままさっさと電話を切った。「雨宮《あまみや》 鈴凪《すずな》様ですね、すぐに担当の者が参りますので少々お待ちください」「あ、はい。どうも……」 神楽 朝陽に指示された通り受付の女性に声をかけると、特に怪しまれることもなくすぐに対応してもらえた。しかし担当の者って、自分はあれほど余計な事を喋るなと私に釘を刺しておいて自分は誰かにこの事を話してるのだろうか? とにかく私は彼の指示通りに神楽グループの本社ビルに来て受付に話したのだから、何も問題ない筈だと自分に言い聞かせる。担当がどんな人でも適当に躱せばいい、そう思ってたのに……「時間は守れるようだな、これで遅れてきたら利子でもつけてやろうかと思っていたところだ」「神楽、朝陽さん……どうしてここに? だって、さっき担当の人が来るって」 まさかの最初からのラスボス登場に私も戸惑ってしまっ
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不安的中な思惑に 2

「……い、おい。お前は俺の話をちゃんと聞いてるのか?」 「あ、何か用でしたか? 今ちょうど、神楽《かぐら》さんの音声だけシャットアウト中だったので」 顔を覗き込まれ何かを話しかけられた驚きで、慌てて本当のことを言ってしまう。みるみるうちに神楽 朝陽《あさひ》の表情が満面の笑みに変わってやっと「やってしまった」事に気付いた。 こういう時に余計な一言を口にしてしまい失敗するのが多い自分、彼にとって私は丁度良い玩具になりそうだと分かっていたはずなのに。「いや、あの〜。ちょっと、私の防音システムが誤作動をですね……」「へえ? 俺の音声《だけ》に誤作動をね?」 こんな苦しい言い訳をするより素直に謝った方が良いと思うのに、自分は悪くないと主張するもう一人の私が状況を悪化させる。 すると神楽 朝陽は何故か眼鏡を外し、周りの女性陣を虜にするような素敵な微笑みを浮かべて……「いいか、鈴凪《すずな》。俺の言葉に反抗してくるのも面白いが、それが後々自分の首を絞めるだけだという事はちゃんとその脳みそに叩き込んでおけよ?」「……そう、ですよねー」 笑顔で凄むのは止めて欲しい。遠巻きに見ている女性陣には内容が聞こえないのか瞳をキラキラさせているが、私はしっかり被害を被ってるんですから。 あと、眼鏡を外すとドSになるの止めません? 貴方は普段から十分意地悪な性格だと思うので。そんなことを考えてしまっていたせいか、いい加減に人の話を聞けというように神楽 朝陽に頭を小突かれてしまった。「返事もキチンとしろ。いいか、この先何があっても言われても全て笑顔で対応して見せるんだ。これは鈴凪がどれだけ上手く振る舞えるのかを確認するのも含まれてるんだからな」「振る舞えるって、いったい何を……って、いきなり何するんですか⁉︎」 話している内容が全く理解出来ずに聞き返そうとすると、いきなり腰のあたりに手を伸ばされ引き寄せられる。 何が起こっているのか脳がついてきてくれてないのに、神楽 朝陽はそのまま歩き出してしまう。 まるで恋人の様な距離感に頭が混乱するが、彼の言われたとおりにやれなければ後で痛い目を見るのは私に決まってる。そう思うと何とか作り笑顔も貼り付けることが出来たのだけど……「やだ、何あれ?」「神楽さんの隣にいる女性は誰なのかしら? 一時期、社内で噂になっていたあの人じ
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不安的中な思惑に 3

「それで私がやらなきゃいけない事って何なんですか? 私の迷惑料の支払いは、もう始まってるってことなんでしょう」「それは会ってからのお楽しみだな、もう説明している時間もない」 時間がない? 嫌な予感しかしない言葉に突っ込む間もなく前に来た最上階でエレベーターから降ろされる。ここまでは予想出来ていたことなのだけれどが、前回と決定的に違ったのは神楽《かぐら》 朝陽《あさひ》が思い切り空けた扉が社長室のそれだったという事。「社長、約束通り彼女を連れてきましたよ」「……朝陽か、まあいい。二人共、そこに座りなさい」 奥に設置された大きな机と高級感のある革張りのチェアー。そこに座っていたのは、何度かテレビでも見た事のある神楽グループの社長だった。 落ち着いた雰囲気の男性だが、どこか威圧感も感じさせるのはやり手と噂の経営者だからだろうか? なんにせよ、平凡な私の人生で関わることなどない筈の人なのだけど。「えっと、あの……?」 意味が分からず、どういう状況ですかと聞きたくなる。でもさっき神楽 朝陽から「何があっても笑っていろ」と言われたばかりでそんなこと出来るはずもなく。 戸惑いながらも精一杯の笑顔を浮かべていると……「おいで、一緒に座ろう鈴凪《すずな》」「⁉︎」 爽やかな笑顔と差し伸べた手が私に向けられたせいで、つい構えてしまう。だけどその口から出てきた衝撃の言葉に、心臓がショックで止まってしまうんじゃないかと思った。 「いきなり何を言い出すんですか?」と言いたいのをグッと堪えて、ここも笑顔で乗り切るしか自分には許されてない。引き攣りそうになるのを何とか誤魔化して、手を差し伸べたままの神楽 朝陽に笑顔で応える。 繋いで気付く、思っていたのよりも大きな掌だ。どちらかと言えば華奢だった流《ながれ》とは違って、男らしくてゴツゴツしてるから不思議な気分になる。「ありがとう、朝陽さん」「恋人として当然の事だろ? いきなりこんな場所に連れて来られて緊張してるよな、ごめん」 あー、やっぱりそういった設定なんですね。 嫌な予感は当たるもので、どうやら私は神楽 朝陽の恋人役をやらされることになっていたらしい。 それにしても、この別人のような変わりようは何なのか? 社長とはいっても彼にとっては実の父親でもあるはずなのに、なんだか二人の間に距離を感じてしまう。「
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不安的中な思惑に 4

 んん? 前に婚約者として紹介した女性がいるならば、今回もその人に頼めばよかったのでは? そう思って隣に座る神楽 朝陽の顔を見ると、一瞬だけだが彼から目を逸らされた気がした。 ……もしかして私になのか他の誰かに対してなのか分からないけれど、後ろめたい気持ちでもあるのだろうか? そう考えてしまうぐらい彼の視線の逸らし方は不自然だった。 でもそんなことをいつまでも気にしている余裕は私にはなくて。 「そうですね。確かに鈴凪《すずな》は以前紹介した女性とは違いますが、今の俺にとって一番大事な人なんです」 父親に向かってそう話している神楽《かぐら》 朝陽《あさひ》に同意するように黙って頷いていたが、心の中は結構複雑だった。 今こうして私がここにいるのは、彼にとって都合の良い時に大きな借りを作ってしまったから。そうでなければ、ここで恋人役をしているのは自分ではなかったはずなのに。それが妙に引っかかる気がして。 それもこれも全部、神楽 朝陽が変や契約を持ち出してこんな事をやらせる所為だと思い込むことにしたのだけど。「そんな簡単に心変わりをするようならば、結婚は私が選んだ相手とするべきでは? そうした方がそのお嬢さんにも余計な気苦労をさせずに済むと思わないか」「……反対ならそのまま言えばいいのに、相変わらず自分を悪者にしないための遠回しな言い方をするんですね」 椅子に座ったままの彼の言葉に、社長の眉間に僅かな皺が刻まれたことに気付く。自分の意見を回りくどく伝える父親と、わざと煽るような言い方をしている神楽 朝陽。 私が知っている親子の関係とは全く違う、その様子にとても口を挟めるような状況ではなくて小さくなっているしかない。 「このお嬢さんの目の前でハッキリと言った方が良いのか、ただ傷付けるだけだろうに。まあいいだろう、伝えたい事は簡単だ。お前の恋人は神楽の嫁としては相応しくない」「ええ、そうおっしゃると思ってました」 ビリビリとした緊迫感に、息を吸うのも忘れてしまいそうになる。どうしよう、この状況では笑ってなんていられないし焦りで手のひらには汗をかいていた。 出来る事なら「そうですか、それでは失礼させて頂きます」と言ってこの場から逃げ出したい気持ちなのだけれど。 ……もし私がそうすれば、きっと神楽 朝陽は相当困るに違いなくて。 それでも彼の父は私
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不安的中な思惑に 5

「なあ、鈴凪。父はああ言っているが君はどう思っている?」「あら? 私は朝陽さんにさえ選んでもらえれば、他の誰に相応しくないと言われても気にしません。私がなりたいのは神楽グループの嫁ではなく、貴方の妻ですから」 まさかこの状況で私に丸投げされるとは思ってなくて焦ったが、自分にしては良い答えが出せたと思う。もちろん神楽 朝陽のスペックに目が眩みそうになるのは仕方がないと思うけれど、それでも彼の中身を愛せなければ私は結婚なんてしたくはない。「鈴凪はこう言っていますし、俺も彼女の考え方が好ましいと思ってます。生涯を共にする相手は、俺には彼女以外には考えられないので」 これってお芝居なのよね? 神楽 朝陽の真剣な表情に、本気で言われてるような気がしてなんだか落ち着かない。こんな風に真っ直ぐに自分を必要とされた事って、流の時には一度もなかったから。 嬉しい気持ちと同時に、これがすべて作り話だというどうしようもない虚しさも味わってしまう。それこそバカバカしい事だと、自分でもちゃんと分かっているのに。 お互いに笑顔で見つめ合っていても、決してその心が通じ合ってるわけじゃない。私たちを繋げるものは愛情などではなく契約となるはずだから。 それでもやると決めたからには、きちんと神楽 朝陽の恋人役を演じるしかない。「今はそう言うことが出来ても、そのお嬢さんもすぐにお前から離れていくだろう。まあ、それまでは二人の好きにすると良い」「……その言い方、やはり彼女の時も貴方が何かを?」 何かを言いかけて、私に視線を移して神楽 朝陽はその言葉の続きを飲み込んだようだった。彼女、というのは以前紹介した女性という事だろうか? 彼の父親は私がその人と同じように、神楽 朝陽から距離を取るみたいに話しているけれどどういう事だろう?「あの女性には、所詮その程度の覚悟と気持ちしかなかったという事だ。そのお嬢さんは……どうだろうな? さあ、もう部屋から出ていきなさい。私は次の予定が入っている」「……もう行くぞ、鈴凪」 悔しさを滲ませるような表情、そして言葉遣いもいつも通りに戻っている。そんな神楽 朝陽に手を掴まれて、そのまま私は社長室を後にした。 そのままこの前連れて来られた隣の部屋に入るのかと思えば、彼はドアを開け中にいる誰かに話しかけている。すると中の人物からカードキーのようなも
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その契約は強制で 1

「ちょ、ちょっと待って! どこまで行くんです、もうとっくに会社も出ちゃったんですけど⁉︎」「うるさい、さっきまでビビッて小さくなっていたくせに。親父が見えなくなった途端、ぎゃあぎゃあ騒ぎだすな」 自分だって人のこと言えないじゃない!  社長室を後にしてから、すぐに素に戻った神楽《かぐら》 朝陽《あさひ》の言い方にイラッとしたが我慢する。あの時の彼は笑顔で冷静に見えたが、内心ではそうでもなかったのかもしれない。 神楽社長が昔の女性の話をした時は特に、神楽 朝陽の様子が変だった気もするし。いきなり恋人役を任された私には分からないことが多すぎて。 そんな事を考えていたら、神楽 朝陽は有名なデザイナーホテルのドアをくぐってそのまま奥のエレベーターに向かって歩いていく。 ……何故、ホテル? それもこんな真昼間から。寝るにはどう考えても早すぎるし、私が連れて来られる理由も分からないのだけど。「あの、ここには何の用で?」「は? 用があるから来たんだろ、いちいち聞かなくても分かるだろうが」 いいえ、全然分かりません。 そう言いたいけれど、言ったら今度こそ酷い目にあわされそうなので黙っておくしかない。 彼に続いてエレベーターに乗り込むと、押されたのは最上階のボタン。本当に何がどうなってるのか分からないまま、エレベーターから降ろされ強引に目の前の部屋の中へと押し込まれてしまった。「もう少し丁寧に扱ってもらえませんか? これでも一応は貴方の恋人役なんですよね?」「分かってるのなら最後まで気を抜いたりするな、何があっても笑っていろと言ったはずだろう!」 そう言われて、この部屋に着くまでがお芝居だったのだという事に気付く。社長室を出た後から演技を忘れ素に戻ってしまったので、そんな私に慌てて彼はここまで連れて来たのかもしれない。 父親との会話で機嫌が悪いのもあるのだろう、神楽 朝陽はいつもよりピリピリとした様子だった。だからといってここで黙って立っている訳にもいかない。さっきの事についてきちんと説明してもらわなくては。「……それで、私の演技は合格でしたか? 確かそれを確かめるためでもあるって言ってましたよね」「あんなハッキリと紹介しておいて、別の相手なんか連れて行けるわけないだろう? 多少、いや……かなり不満はあるがギリ合格にしておいてやる」 ずいぶん上
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その契約は強制で 2

 そんな大事な事は最初に言っておいて欲しい、これじゃあ後出しじゃんけんみたいで狡いような気がする。今になって言い出す所がドSな神楽《かぐら》 朝陽《あさひ》らしいとは思うけれど、さすがに私だって不満を感じて。 納得出来ないといういう顔で彼を睨めば、相手を喜ばせるだけで。どう考えても神楽 朝陽は自分の発言で、私が焦ったり戸惑ったり怒っていたりするの見てを楽しんでいるように思える。 ドSなうえに相当な性悪なのではないだろうか? こんな人に借りを作ってしまったことを今更後悔してもどうにもならないのだけど。「不満か? 心配しなくてもいい、鈴凪《すずな》が完璧な婚約者と最高の花嫁を演じればなんの問題ないんだから」「婚約者……は分かりますが、その花嫁っていうのはなんです? 私の役目って、神楽さんの恋人のフリをするだけじゃないんですか?」 確かにさっきの神楽社長との話では婚約するつもりだという話だった気もするが、それにしても花嫁とはいったい?  婚約者なら契約が終わった後すぐに有耶無耶にするのも難しくないだろうが、結婚式をするとなれば話は全く変わってくる。それも神楽グループの御曹司ともなれば、そのスケールも普通とは桁違いなものになる可能性があるというのに。「まさか、私と貴方で結婚式を挙げる……なんて言いだしませんよね?」「もちろんそれも含めて契約内容に入れているが、まさか何か問題でもあるのか?」 ……ええと、問題しかないと思いますが? 主に私にとっては、なのかもしれないですけれど。そう言ってしまいたいのに言えなくて、がっくりと肩を落としてしまう。 契約の内容を全て聞かないうちから『出来ません』というつもりはない。自分が彼にしたことを考えれば、やれるだけのことはやるべきだという気持ちもある。 けれども誰にとっても結婚式というのは、特別なのものであるはずだ。簡単にそう話してみせる神楽 朝陽に、私はかなり戸惑ってしまう。「結婚式を挙げれば、色々後が面倒になると思います。どうにか式を行わずに済ませることは出来ないんですか?」 私なりに考えて提案をしているつもりだった、その方が絶対にお互いの為になると思えたから。神楽 朝陽もそれを十分に分かっているはずなのに、それでも首を縦には振ることはなかった。「……鈴凪《すずな》の言いたい事は分かる。だがそれじゃあ駄目なん
last update최신 업데이트 : 2025-08-21
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その契約は強制で 3

「いいか、俺たちの結婚式は絶対だ。それが出来ないというのなら、最初に話した通り迷惑料を請求させてもらう。さあ、鈴凪《すずな》はどちらを選ぶ?」「……ここから第三の選択肢が出てきたり、なんてことはやっぱりないですよね?」 無駄な抵抗だという事は分かっていても、そう聞かずにはいられない。そもそもどちらを選ぶかなんて絶対に口だけで、実際には私に選択肢なんてないのと同じようなものだから。 結婚式が絶対なのなら、もう一つ気になる点が出てくる。まさかとは思うが、それでも念のために確認しないわけにはいかないのだけれど……「第三の選択肢ねえ? どうしても欲しければ考えてやるが、それが鈴凪の喜ぶ内容である保証はないな」「ですよね、そうだろうなとは思ってたのでもういいです。それより、その結婚式と同時に入籍をするつもりだなんてことはないですよね?」 そう。結婚式も私にとっては大事だけど、それ以上に入籍するかしないかの方が気になって。もちろん契約と言われても好きでもない神楽《かぐら》 朝陽《あさひ》と籍を入れるつもりなんてない。 いくら大きな迷惑をかけたとはいえ、それとこれとは別問題だから。そう思って彼を睨んでいると、逆に呆れたような溜息をつかれて……「どうして俺がお前と結婚をしなきゃならないんだ、そんなの冗談じゃない」「へえ〜、私に【結婚式】を強制しようとしている人の言葉とはとても思えませんね? ついでに言わせて貰えば冗談じゃないはこちらのセリフですけど」 すっごい腹が立って、嫌味な返しをしてしまうがこれくらいは許されるはず! 私だって神楽 朝陽と結婚したいなんてこれぽっちも思ってないですし。 結局は自分中心なこの人の俺様発言の連続に、私の頭もズキズキしてくるような気がして。「俺は鈴凪に強制した覚えはない、選ぶのはアンタだといったはずだ。それにこの話には鈴凪にとっても、メリットのあるものになるはずだから」「……メリット、私にとってですか? じゃあ、どういうつもりなのかきちんと説明してもらっていいですか? 選ぼうにも契約内容がはっきりしてない状態では、私には判断出来ないので」  強制してないなんてよく言えるなと思いながら、それでも冷静に話を進める私を誰か褒めて欲しい。神楽 朝陽にいくら借りがあったとしても、こうも自分本位で話をされると腹も立ってくる。そのうち我
last update최신 업데이트 : 2025-08-22
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その契約は強制で 4

「……それで結局のところ、神楽《かぐら》さんは私に何をして欲しいんです? 結婚式を形だけすればいい、というわけではなさそうですけど」「そうだな――もしも、鈴凪《すずな》が元カレに復讐するつもりなら……いっそ、世界一の愛され花嫁になってみる気はないか?」 復讐……元恋人である流《ながれ》に、それを考えなかったわけじゃない。ただ慌ただしすぎて、そこまでゆっくり悩む時間も取れていなかった。 酷い扱いを受けた自覚はあるが、好きだった相手にそこまでしていいのかという思いもあって。だけどこうして言葉にされると、心の中に渦巻く憎悪がチラリと顔を出してくる。 ただの金づるのように思われていた悔しさも、本命の相手の前でそ知らぬふりされた惨めさも。ここにいる神楽 朝陽《あさひ》のお陰で、耐えられたに過ぎない。 今になって心から溢れてきた怒りと悲しみの感情。強く拳を握って誤魔化そうとすると、その手首を神楽さんに捕まれグイッと引き寄せられた。「……いいか、鈴凪。来月行われる俺たちの結婚式で、アンタは世界一の愛され花嫁のフリをするんだ。それが今回、俺たちの間で交わされる契約の内容だ」 世界一の愛され花嫁のフリ? それってどういう事なのか。首を傾げ神楽 朝陽の言葉を反芻すると、もっと大きな問題に気付かされる。先ほどまで腹の中で渦巻いていた怒りも吹き飛ぶほどの。 結婚式を挙げるとは確かに今さっき聞いた、それでも……「いま【来月の挙式】って言いました? その、私の聞き間違いですよね」「耳の聞こえが悪いのなら俺が通う腕のいい耳鼻科を紹介してやろうか? 挙式は来月で、もう会場も決まっている。準備で忙しくはなるだろうが、それでも鈴凪は完璧な花嫁を演じて見せてくれるんだろう?」 私を挑発するようなその言い方に、無駄に負けん気の強さが発揮されて思わず『やってやろうじゃないの!』と答えてしまった。 将来は人の上に立つことを約束されている人間だけあって、彼は周りの人を思いのままに動かす事がとてもお上手らしい。「その……完璧な花嫁を演じたら、迷惑料はチャラになるんですよね?」「ああ、鈴凪が完璧な愛され花嫁として振舞ってくれればな。万が一失敗した時のペナルティーも、あった方が方がやる気も増すだろうし」 それはやる気を出させるためのものではなく、何が何でも失敗するなという神楽 朝陽の脅
last update최신 업데이트 : 2025-08-23
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