All Chapters of (仮)花嫁契約 ~元彼に復讐するはずが、ドS御曹司の愛され花嫁にされそうです⁉~: Chapter 191 - Chapter 200

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醜悪なその本性に 3

 いきなり部屋の中に響いた悲鳴に驚いて部屋の入り口を見れば、いつの間にか青白い顔をした鵜野宮《うのみや》さんが立っていて。 もしかして朝陽《あさひ》さんを後を追って来たのだろうか? それとも私たちの様子を確認しに戻って来たら、偶然この状況になって吃驚《びっくり》しただけ? どちらにしても彼女の行動が怪しい事に変わりはないけれど。 だけど窮地に立たされていた流《ながれ》からしてみれば救いの女神だったのだろう、彼はすぐに鵜野宮さんへと駆け寄ろうとしたのだが……「鵜野宮さん、ちょうどいいところに! アイツが……神楽《かぐら》 朝陽がいきなり乗り込んできて、これじゃあ話が違うじゃないですか!?」 けれども鵜野宮さんはそんな流からあからさまに距離をとり、先程までとは別人のような態度で彼の行動を責め始めたではないか!「ちょっと流君、貴方こそ何を言ってるの!? 私はあれほど早く雨宮《あまみや》さんを解放するように言ったのに、まだ諦めずにこんな事をしているなんて!」「……え? あの、鵜野宮さん?」 彼女がいったい何を言っているのか、私と流は頭がついていかない。ついさっきまで私が繋がれた姿を楽しそうに見下ろして、その上で蔑み小馬鹿にしていたのは他ならぬ鵜野宮さんだったのに。 それなのに、この人は……この状況を流だけの所為にして、自分は私を助けようとしていたかのように話している。どうしてここまで自分勝手で、事実を捻じ曲げ都合の良いような嘘を簡単につけるの? 流は戸惑ってその場で動けないでいるが、鵜野宮さんはまだ彼に責任を押し付けるかのように話しを続ける。おそらく流が何か言えば彼女にとって都合が悪いから、あえて口を挟む隙を与えないようにしているのだろう。「それに手錠まで、どこで用意して来たのよ? こんなの立派な犯罪なのに、どうすればいいの……私が流君を止めれなかったばっかりに」 そのまま自分が止められなかった所為だと落ち込んだ様子を見せるが、それも全て彼女の芝居なのだと分かる。 鵜野宮さんにとって予定外の事が起こってしまい、彼女は今それを誤魔化そうとしてるのかもしれない。そんな二人の様子を黙って見ていた朝陽さんだったが、少し考える様子を見せて普段より低いトーンで質問したのだけど。 「……つまり? この誘拐は全て守里《もりさと》 流の単独で行われた犯行だと?」
last updateLast Updated : 2026-02-26
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醜悪なその本性に 4

「そうよ! 私は流《ながれ》君の行動に不自然なものを感じて、ずっと気にしていたの。雨宮《あまみや》さんを誘拐したことを知って、何度も止めるように言ったわ。けれど……結果的にはこうなってしまって」 鵜野宮《うのみや》さんの事が私は以前からあまり好きではなかった。美人で仕事も出来る社長令嬢、そんな彼女に嫉妬や妬みもあるからそうなんだと思ってたけど……やっぱりそれ間違いだった。 私はこの人の美しい容姿に反した、こんなにも醜悪な本性がもの凄く嫌いなのよ。 けれども朝陽《あさひ》さんさえ騙せればいい、そんな鵜野宮さんの狡い考えは彼にもあっさりと見破られてしまったようで……「ここに来る前に梨乃佳《りのか》は素敵な場所を用意していると言ったが、まさかそれがこの状況だとでも?」「それは……何ていうか朝陽が混乱しないようにと思ってで、もし私が共犯ならばここまで案内なんてしてないわ。ねえ、そうでしょう?」 もしかして鵜野宮さんは最初からここに朝陽さんを連れてくるつもりだった? でもそんな事をすれば、自分だって疑われるのに。いいえ、鵜野宮さんだったら何か考えがあっての行動に違いない。 でもそれを知っているのは本人と、私を攫った共犯者である流だろうか? 思い返してみると、確か彼は鵜野宮さんに『話が違う』と言っていたような気がする。 ということは……?「ふーん、なるほど? だそうだが……守里《もりさと》 流、お前としてはどうなんだ?」「ち、ちょっとやめてよ朝陽!」 しっかりと流からの情報も聞き出そうとする朝陽さんを、鵜野宮さんが必死の様子で止めようとする。その態度を見れば嘘をついている事がすぐバレるのに、つい焦ってしまい取った行動だったのだろう。 そんな鵜野宮さんを朝陽さんは冷ややかな目で見ていたが、流は逆に冷静ではいられなくなったようで。「う、嘘だろ……そんな、まさか……俺は、ずっと良いように利用されて?」「だから、そんな犯罪を犯すような男に聞く必要はないでしょう!? 知りたい事があるなら、私が全部答えるわ。それよりもさっさとあの男を拘束して、警察に連れて行かないと!」 ブツブツと何かを呟いている流を無視して、鵜野宮さんはまだ苦しい言い訳を止める気は無いようだ。こんな状況になっても自分の非や罪を認められないなんて、怒りを通り越して少し憐れにさえ感じてしまう。
last updateLast Updated : 2026-02-26
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醜悪なその本性に 5

 もともとそんなに温厚というわけでもないが、ここまで自分を抑えられなくなった様子の彼を見るのは初めてで。そのまま放っておけば、誰かに危害を加えてもおかしくない状況だと感じた。 何とかしなければと思いそんな流《ながれ》に近付こうとしたが、彼は手に持っていたナイフを振り回して誰も寄せ付けようとしない。「流っ!? ちょっと待って、お願いだから少し落ち着いて! きゃっ……」 興奮して見境がなくなっている、今の流は私が鈴凪《すずな》という事すら分かって無さそうで。でもそんな彼がギラギラとした瞳で見ているのは、朝陽《あさひ》さんの陰に隠れようとする鵜野宮《うのみや》さんただ一人だった。 その事に気付いた朝陽さんは、クシャッと片手で前髪を乱した後で白澤《しらさわ》さんに声をかける。「――ああ、クソ! おい白澤、何があっても鈴凪達のことを頼むぞ!」「ええ、ちゃんと分かっていますよ」 白澤さんらしい冷静な返事が聞こえたかと思うと、すぐに私は彼とシオさんの傍に引き寄せられて。白澤さんは私とシオさんを守る盾のように目の前に立ち、朝陽さん達の動きに神経を尖らせているようだ。 いま一番焦っているのは鵜野宮さんなのだろう、必死に朝陽さんの後ろにその身を隠しているのだけど流の視線はいまだ彼女にだけ向けられている。「うう……赦さない、こんなやつは……絶対に俺はゆるさない、うわああああぁぁっ!!」 どこまでも自分の身可愛さで逃げようとする鵜野宮さんに、とうとう流が手に持ったナイフを振り上げて襲い掛かってしまう。このままでは、彼女の前にいる朝陽さんまで間違いなく巻き込まれてしまう! ここから飛び出してしまいそうな身体を白澤さんとシオさんに止められて、それでも朝陽さんに向かって大きな声で叫ぶ。「――危ない!! 朝陽さん、逃げてくださいっ!」「いや! 助けてぇ、朝陽っ!!」 私と鵜野宮さんの叫びが重なった瞬間、彼らの近くにあったテーブルや棚がその衝撃で次々に大きな音を立てて倒れてしまう。 汚れた室内に家具が倒れた事で煙で視界が真っ白になり目を凝らそうとした時、今度は鵜野宮さんの大きな悲鳴が聞こえてきて。「きゃあああっ! 私の顔から、血が……頬に傷がっ! い、いやあーーっ!」 まさかさっきので、鵜野宮さんは顔に怪我を負ってしまったのだろうか? まだ薄く曇ったままの室内に、
last updateLast Updated : 2026-02-27
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醜悪なその本性に 6

 室内に舞った埃がやっと薄くなってきて、最初に目に飛び込んできたのは……頬に手を当て腰を抜かしている鵜野宮《うのみや》さんに、再度ナイフを振り上げている流《ながれ》の姿だった。「なあ鵜野宮さん、これで終わりだと思っていないよな!?」「――い、いやあ! 違う! 私じゃない、悪いのは私じゃないわ!」 鵜野宮さんはそんな流に怯えて、必死に取り繕いその場を凌ごうとする。けれども騙されていた事実を知った流は、彼女の言い訳を聞くつもりはないらしい。 それどころか、さっきよりも今の流の方が落ち着いているようにも見える。「……へえ? さっきまで俺が勝手にやったのだとか、さっさと捕まえて警察に出せといいたいほうだいだっただろ? 良い案があると、協力してやるからと唆したのはそっちの癖に」「私は本当に流君に幸せになって欲しかったのよ、雨宮《あまみや》さんが貴方の想いを理解しないからどうかしたくて。だからこうして二人きりになれる時間を作ったのよ、でも彼女がそれを……」 ああ、やっぱりそうなんだ。彼女は流が計画したと言っていたが、今回の案を先に出したのは鵜野宮さんのようで。彼女は自分にメリットがない事をする人ではないだろうから、他にも目的があったのでしょうね。「元々聞いていた話と違う上に、俺に全部罪をかぶせる気だった。小賢しいアンタを信用して、俺はもう引き返せなくなったのに……自分だけ逃げようなんて」「――違うわ! そうじゃない、悪いのは雨宮さんの方よ。あの子が流君とヨリを戻していればすべて上手くいくはずだったの、だから何もかも雨宮さんの所為なのよ!」 流は鵜野宮さんに向けて笑いながらそう話しているが、その笑顔も酷く苦し気に思える。引き返せない、その言葉から流はもう覚悟を決めているということが読み取れた。 けれども鵜野宮さんは変わらず、自分可愛さの保身ばかりで。とうとう全てを私の所為だと言い出し、黙っていられなくなった朝陽《あさひ》さんが口を挟む。「おい梨乃佳《りのか》、お前いい加減に……」 しかし朝陽さんが鵜野宮さんに注意しようとすると、その場でいきなり高笑いを始めた流。そのまま強い殺意を含ませた視線を、鵜野宮さんにただ一人に向けて――「あははは! アンタの言い訳なんか、聞き飽きたんだよ。こうなったら道連れになってもらうからなあ!」「きゃああああっ! 誰か、
last updateLast Updated : 2026-02-27
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醜悪なその本性に 7

 そんな流《ながれ》の行動を白澤《しらさわ》さんが先読みしていたようで、その場から駆け出しかけた彼を後ろから羽交い絞めにして抑え込む。それを見た朝陽《あさひ》さんもすぐに加わって、二人掛かりで流からナイフを奪いその身体を床へっと押し付けた。 だがホッとしたのもつかの間、すぐに流はその状態でも全力で暴れ出して。「これ以上馬鹿な真似はよせ、守里《もりさと》 流!」「……流、お願いだからもう止めて」 朝陽さんも私も必死に声をかけるが、興奮状態の彼には届かない。ジタバタと手足を動かして逃れようとするが、白澤さんと朝陽さんも力を緩めはしない。 でも、このままじゃ本当に流が取り返しのつかない罪を犯してしまう。「くそ! 離せ、俺はあの女を……っ!!」「——梨乃佳《りのか》、アイツはどこにいった!?」 その場で腰を抜かしていたはずの鵜野宮《うのみや》さんの姿が、いつの間にか消えている。慌てて部屋をくまなく探してみるが見当たらず、部屋の壊れたドアからこっそり逃げ出したのだと思われた。 ……まさか、こんな状況を作っておいて自分一人だけ逃走したというの? けれどもここにいたはずのシオさんも、いつの間にかいなくなっている事に気付いて。「くっ、はぁはぁはぁっ……本当に冗談じゃないわ、どうして私がこんな目に」「……こんな状況を作ったアンタが逃げ出すなんて、そんな事が許されるとでも?」 誰かに見つかったのが予想外というように、鵜野宮はその場からじりじりと逃げるための距離を取ろうとする。「な、何なのよ? それこそ貴女には関係ないでしょう、早くそこを退きなさいよ」「何を言ってるんだか、ここからの主役はアンタなんだからいなくなってもらっては困るんだ」 まさかシオさんが逃げ出す鵜野宮さんを見つけて、しっかりと追いかけてたなんて……この時の私は知りもしなかったのだけど。「……ああ、ははは」 しばらくして脱力し乾いた笑い声をあげる流は、もう完全に抵抗を止めていて。その表情が諦めているのにどこか吹っ切れたように見えるのは、私の気の所為だろうか? そんな流の様子を確認すると朝陽さんと白澤さんの二人は顔を合わせて頷き、それからゆっくりと彼の拘束を緩めていく。 ようやくむくりと上半身を起こした流だったが、彼はそれ以上動こうとしないし何かを話そうともしない。「少しは落ち着いた
last updateLast Updated : 2026-02-27
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醜悪なその本性に 8

「なんなのよ、気安く触らないで! だから、この手を離せって言ってるのよ!」「フン、いいから黙ってついて来るんだね」 おそらく部屋の外からだろう、聞き覚えのある二人の女性の声が耳に入ってきた。少しずつこちらに向かってく来ているのか、その話し声がだんだん大きくなってくる。「あれ……この声って、もしかしてシオさんと鵜野宮《うのみや》さん?」「そうみたいですね、どうやら紫苑《しおん》が上手く彼女を捕獲してくれたようです」 大して驚いてなさそうな白澤《しらさわ》さんのその様子に、彼はこうなる事を予測していたのだと気付く。白澤さんらしいと言えばそうなのだが、この人の観察眼って本当に凄いと思わずにはいられない。 そんな中で流《ながれ》がポツリと呟いたのは、そんな白澤さんにとっても意外な言葉だったようで。「……なぁ、神楽《かぐら》 朝陽《あさひ》。俺の左足首辺りのズボンの裾裏に鍵があるから、それで鈴凪《すずな》の手錠を外してもらえないか?」「ああ、それは助かる。白澤、しばらくコイツの事を頼むぞ」 すぐに朝陽さんは流の足首から手錠の鍵を取り出すと、私に向かい合ってその手枷を外してくれた。手首の一部分は擦れて赤くなっていたが、数日もすれば元に戻りそうである。 自由になったことにホッと一安心したが、朝陽さんはまだ心配そうな顔をしていて……「鈴凪、手首はもう大丈夫か? それ以外でもどこか痛むところがあったら教えてくれ」「ええ、私は平気です! それよりも朝陽さんはどこも怪我したりしませんでしたか?」 朝陽さんがそうであるように、もちろん私だって彼の事が心配でしょうがなかったのだ。さっきだって流はナイフを振り回していたし、巻き込まれて怪我をしていてもおかしくないのだから。 でもそんな私を安心させるように、朝陽さんはその全身を見せて傷がないことを確かめさせてくれる。「心配はいらない、俺は何ともないから。だが狙われた梨乃佳《りのか》は頬を切ったようだったが。今は逃げ出しかけていたのを、白澤の連れの女性がこっちに連れてきているようだけど」 ……そうだった、あの時に鵜野宮さんは確かに頬を押さえていて手には血がついていた気がする。でもどさくさに紛れて彼女は逃げてしまい、傷の状態もよく分からないままだったのだ。 そうこうしているうちに外から聞こえていた女性二人の声がすぐ
last updateLast Updated : 2026-02-28
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醜悪なその本性に 9

「さあて、全てを説明してもらおうか? この期に及んでくだらない嘘をついたりするなよ、梨乃佳《りのか》」 その場にいた人に完全に囲まれて、どうやっても逃げ出せない状況になった鵜野宮《うのみや》さん。 朝陽《あさひ》さんにそう迫られて最初こそ戸惑った様子を見せていた彼女だったが、すぐに開き直りまた自分勝手な言い分をまるで正論かのように話し出した。「私はちゃんと話しているのにそれを聞かないのは貴方達でしょう! 流《ながれ》君や雨宮《あまみや》さんが言ってる事の全てが私を貶《おとし》めるための作り話なのに、それなのにどうして!」 鵜野宮さんの中で私が加害者であることは変わらない、それどころか自分自身が騙した流まで彼女を貶めていると言い出す始末だ。 この人は本気でそう思っているのか、自分が罪から逃れるためになりふり構っていないのか? どちらにしても美しい容姿に反したその言動は、とんでもなく見苦しいと感じずにはいられない。「鈴凪《すずな》がお前を貶めるだと? それはいったい何のために?」「そんなの、朝陽が私とヨリを戻しそうで怖いからに決まってるじゃない! 彼女はこんな風に貴方の気を惹きながら、私を悪者に仕立てようとしているのよ」 冷静な朝陽さんの問いかけに答える内容も、鵜野宮さんの偏見と思い込みでしかない。確かに朝陽さんが鵜野宮さんとヨリを戻すのかも、と不安に感じたことがないわけじゃない。 けれどそんな卑怯な手を使って彼を引き止めるつもりはないし、何より私を好きだと言ってくれた朝陽さんの気持ちを信じているから。「……馬鹿馬鹿しい。そもそも俺と梨乃佳が復縁するなんて有り得ないんだから、鈴凪にはそんな事をする必要はない」「朝陽はそう思っているかもしれないけれど、本当の彼女はとても狡賢くて卑怯な女性なんだから!」 一方的な決めつけと暴言、ここまで私が鵜野宮さんに言われなければいけない理由があるのだろうか? すぐ傍で私を支えるように立っていたシオさんが、少し心配そうに声をかけてくれて。「鈴凪、大丈夫かい?」 シオさんに『平気です』とだけ答えて、私はゆっくりと二人に近づいていく。このままではいつまで経っても埒が開かないと思ったためだ。「梨乃佳、お前はそろそろいい加減に……!」「……あの朝陽さん、少しだけ私にも話をさせてもらっていいですか?」 まともな話
last updateLast Updated : 2026-02-28
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その結末は当然で 1

「……それで、私と話したいってなんなの? 言っとくけど私は被害者で貴女が加害者なの、それを変えるつもりはないわ」  不貞腐れたような表情で鵜野宮《うのみや》さんは自分の言いたいことだけを先に話すが、それで終わりになる訳ではない事くらい分かっているはず。  でもそれを自分で『変えるつもりはない』と言っているあたり、その発言が自分主観でしかないこともちゃんと気付いているのだろう。ならば、なおさら自分からその罪を認めて欲しいと思ってしまって。 「そうですか、本気で鵜野宮さんがそう思っていらっしゃるのならそれで良いんじゃないでしょうか。ただ貴女と私のどっちが加害者で被害者かを決めるのは、自分達ではなく第三者になると思いますが」  強い言い方になってしまったことは自分でも気付いているが、これくらいはきつく言わないと彼女はきっと諦めないでしょうから。しかし、それでもまだ鵜野宮さんに対する私の考えは甘かったようで…… 「何なのよ、いつもそうやって自分は正しいって顔をして偉そうに。私は離れている間に朝陽《あさひ》を誑《たぶら》かしたのも、本当は計画的だったはずよ。彼の気を惹く為に、流《ながれ》君との婚約破棄を都合良く使ったに違いないわ」 「よくそこまで憶測で物が言えますね、流が私と婚約破棄した理由が貴女だという事も知ってるはずなのに」  よくここまで話を飛躍させられるものだ、彼女のこの妄想力に私も感心してしまいそうになる。だがこのまま放っておけばどんな作り話を始めるか分からないので、彼女も知っている事実へとその話の内容を変えた。  すると鵜野宮さんは『ふふん』と自分の容姿を見せつけるかのような態度をとり、自身のことを自慢げに話だしてしまった。 「それは私の方が貴女よりもずっと魅力的だから仕方ない事でしょう? 自分に相手を引き留める人並み以上の容姿や財力が無いのを、そんな風に私の所為にしないでくれないかしら」 「そうやって自分はああだからこうだからと、周りが全部悪い事にして生きてきたんですか? 逆によくそんな我儘をずっと通してこれたなと、感心しているところです」  ここまで言われ放題なら私も嫌味くらい返して良いのではないかと放った言葉も、彼女にとっては妬みや僻みからくるものだと思ったらしく。ますますその態度を大きくさせると、今度は彼女の父親の存在まで出して私を
last updateLast Updated : 2026-02-28
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その結末は当然で 2

 朝陽《あさひ》さんが声をかけるとすぐに壊れた部屋の入口から、中年の男性が中へと入ってくる。その身なりを見ればすぐに立場のある男性だと分かったので、彼が誰かというこいとを理解するのに時間はかからなかった。 呼ぶように言った本人である鵜野宮《うのみや》さん自身も、その人物が現れた事に驚き戸惑っているようで。「……え? どうしてパパがここに?」「梨乃佳《りのか》。お前は前回あれほど言ったのに、いったいどうして……」 彼女を名前で呼ぶその男性は、間違いなく鵜野宮さんの実のお父さんだった。しかし彼は現状を受け入れがたいのか苦悶の表情を浮かべており、実の娘のしたことにかなりの責任を感じているのかもしれない。 朝陽さんに聞いた話だと鵜野宮さんは、以前に東雲《しののめ》君達の件でも父親に尻拭いをしてもらったはず。それなら尚更、この惨状を見た事で娘に対しての怒りや悲しみを感じているのだろう。 なのに、その鵜野宮さんは……「違うわ! 以前の事だって、あれは東雲親子の勘違いによる勝手な行動だったって説明したじゃない。今回だって本当は私の方が被害者なの、信じてよパパ!」 ここまできても自分の事を正当化し、この件の責任逃れをするつもりらしい。それがどれだけ己の首を絞め、実の父親を悲しませる行為か分かってないのだろうか? それを見ていた朝陽さんが二人の間に入り、鵜野宮社長が全てを知ってここにいると彼女に告げる。「梨乃佳、鵜野宮社長は白澤《しらさわ》たちと一緒に来てずっと隠れて見ていたんだ。その場しのぎの誤魔化しなんて、今さら何の意味も無い」「……どういうこと? だって朝陽にこの場所を教えたのは私じゃない、どうやってパパがこのタイミングで来ることが出来るのよ」 その言葉に鵜野宮さんはかなり驚いていたが、そんなはずはないと反論する。確かここに来たのは鵜野宮さんがこの場所を教えたからでは? と考えた後、朝陽さんより先に白澤さん達が私を助けてくれたことを思い出して。「鈴凪《すずな》が連れて来られた場所は最初から分かっていたさ。だがそのまま俺がここに来れば、すぐさまお前は逃げていただろう? これはお前を逃がさないためになんだよ、梨乃佳」「な、なんですって!?」 逃がさないため、とは? もしかして朝陽さんは鵜野宮さんが何をしようとしてるのか分かっていて、彼女を泳がせていた
last updateLast Updated : 2026-02-28
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その結末は当然で 3

 何かに気付いて驚く鵜野宮《うのみや》さんに、フッと笑みを浮かべてシオさんは人形の背中を見せる。パッと見たところそこに違和感はない、簡単には気付けないくらい綺麗に隠されているのだろう。「……そう正解、念のためにね発信機を隠させてもらっていたよ。白澤《しらさわ》からアンタの性格の悪さと卑怯さは、それは何度も聞かされていたからね」 「こんな余計な事を、よくも」 白澤さんが鵜野宮さんの事をシオさんに話していたことは意外だった、仕事とプライベートはきっちり使い分けていそうなのに。でもそれほど白澤さんにとってシオさんは、信頼のおける人だということなのだろう。  ギリギリと歯噛みする鵜野宮さんを黙って見ていた社長は、静かに落ち着いた声でもう一度しっかりと彼女に言い聞かせる。「もう諦めなさい、梨乃佳《りのか》。お前がどんな言い訳をしようと、私はすぐ近くで全て聞いていたんだ。これ以上うちの恥の上塗りは止めて、大人しく罪を償うべきだろう」 「どうして、パパは私の味方じゃないの!? 梨乃佳は一番大事な娘だって、ずっと守ってやるからってパパは言ってたじゃない」 今までそうやって色々な事で父親を頼ってきたのだろう、それが当然という顔をして。鵜野宮カンパニーの社長の娘という立場であれば、相当我儘放題も出来たはず。  その過保護に守られた結果が、今の鵜野宮さんの姿なわけなんだけど。「甘やかすだけではなく子供の間違いを正すのも親の仕事ですよね、鵜野宮社長」 「……ああ、そうだね。神楽《かぐら》君の言う通りだ、私がここで心を鬼にしておかなければ梨乃佳はまた同じ過ちを繰り返すだろうから」 朝陽《あさひ》さんの言葉に鵜野宮社長も頷いて、素直に自身の子育てについての間違いを認める。可愛い大事だと思うから守ったはずの娘が、こんな過ちを犯すなんて想像しなかったはず。  でも彼はしっかりと現状を把握し、その娘にもきちんと罪を認めるように促しているのだ。「そんな……私が悪いんじゃないわ、その女が全部悪いのに。どうして……?」 頼りにしていた最後の砦、その父親にはっきりと告げられたことで嫌でも現実と向き合うことになった鵜野宮さん。彼女は茫然自失な様子で、何度も『どうして、どうして……?』と繰り返している。「神楽君、すまないがここに警察を呼んでもらってもいいだろうか?」 「はい、分
last updateLast Updated : 2026-02-28
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