― 時間は20時に迫る頃「なかなかやるようになったじゃない、喜志可くんも。でも、もっとこう⋯⋯」 俺とモアがマッサージチェアを使いまくったあの部屋へと、エンナ先輩に呼び出されて諭されている状況。 あんなにすぐ返事せず、もうちょっと男の子は焦らして言った方がいいと、謎の上から目線の説教も始まった。 『彼女にしたくなったでしょ?』に対して焦らせってムズ過ぎだろ⋯⋯。なんだよ『さらにあーんしてくれたら彼女にしたいですね』って言えって。ヤバすぎるだろそいつ。 「っと、この話はこの辺にして、さっきの喜志可くんの返事が冗談なのは分かってるけどね。だってあれでしょ、本当は"スアちゃんの事が好き"なんだもんね?」 急に上目遣いで先輩が聞いてくる。 なんか尋問が始まってないか⋯⋯? 「んー⋯⋯まだ誰とどうとかってあまり考えてないというか⋯⋯」 「プロ生活が忙しい感じだ」 「そ、そうです! それ! 俺なんかが生き残り続けるのは、なかなか難しいっすからね」 「でも、そういう大変な時こそ支えてくれるパートナーがいるのも悪くないよ? (例えば、私とか⋯⋯)」 ⋯⋯ん? 最後こそこそとなんて⋯⋯? 「⋯⋯そうっすね。けど、まず俺なんかとずっといたいと思う人、いないと思うんですよ」 「へぇ~、恋愛の事を意識し始めたら、自信無くなるパターンなんだね。喜志可くんは頭もいいし、運動神経もいいし、プロでも頑張り始めた。ほら、こんなにいいところがいっぱい! もっと自信持ちなよ!」 「それとこれとは違うというか⋯⋯。俺はアマみたいにイケメンじゃないですから」 俯いて言うと、エンナ先輩はマッサージチェアから立ち上がり、突然正面から抱き着いてきた。 「⋯⋯これでも自信ない?」 「い、いや、え!?」 「はーい、おしま~い。続きはしっかり、彼女にしてもらわないとね!」 「え、えっと、はぁ⋯⋯」 「(私を選んでくれたらずっとしてあげるのにさ⋯⋯) さて、おとんちゃんがね、この家の"最上階以外好きに使いなさい"って。ちょっと上から夜景でも見てみる? こんな状況な時こそ、気分転換もしておかないとね」 「いいんですか!?」 「いいわよ。二人でこっそりちょっとだけ行こっか」 二人だけで!? エンナ先輩は俺の手を引っ張り、エレベーターで10階へと連れて
Last Updated : 2025-09-17 Read more